『[映]アムリタ』読了
『[映]アムリタ』(野﨑まど/メディアワークス文庫)読了。
戯言を使わない初期西尾維新を思わせる(ってこの表現、別の本の感想でも書いたような気がするな。そんだけ西尾維新フォロワーが作家デビューする時代になったと言うことか)、ユーモア溢れる青春恋愛サスペンスホラー。いや、マジで。正直、もうこれは傑作と言ってもいいんじゃねえか?前半の天才美少女監督に振り回される部活コメディから始まり、少しずつ”天才”呼ばれる少女の異常性が明らかになっていく中盤、そして主人公が決断して心が通じ合うクライマックス、最後にすべての構図が引っくり返るエピローグ。とにかく物語をとりまくピースがその時によって万華鏡のように意味合いが変転し続ける展開には開いた口が塞がらなくなってしまった。凄まじい変転を続ける物語なんだけど、文章はきわめて平易で読みやすく、ユーモア満点の語り口で残酷を語るあたりにセンスを感じる。いろいろ良いところはあるけど、これは一人の”天才”を真正面から描きぬいたと言う意味で実に野心的であると思う。正直、当初はいわゆるなんちゃって天才(天才と言う記号を用いている)かと思っていたのだけど、実はマジで天才を描いている作品だったんだよな。”天才”の描いたと言う意味では森博嗣の『すべてがFになる』にも似たところはあるように思うのだった。この作品についてはネタバレは致命的なので多くは語れない。とりあえず興味のある方は一読をおススメしたい。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。




コメント
アムリタは正直怖かった。私はどちらかと言うとハッピーエンドが好きなので、あのままただのデートとして終わらせて欲しかった。
投稿: | 2010.01.15 16:48
気持ちはわからないこともないですが、この作品は一人の”天才”を描くものなわけで、あの結末は避けられないものではないか、と思います。
投稿: 吉兆 | 2010.01.16 23:43
「超監督」現る!
//
投稿: ルート134 | 2010.01.18 18:18
と言ってもハルヒとはなんの関係もありませんが…。
投稿: 吉兆 | 2010.01.19 22:06
アニメから見る時代の欲望
「オジサンが泣いている」と評判の「マイマイ新子」、涙の理由は?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100119/212310/
>。「マイマイ新子~」で登場する一面に広がる麦畑の片隅に咲く花とかを見て、急に涙が出てくると。みなさん、「なぜ泣いているのか自分でもよく分からない」<
・・・「泣いているのは、私?」
ほら、やってる、やってる。
//
投稿: ルート134 | 2010.03.18 11:14
どうやら片渕監督も魔法使いのようですね。
投稿: 吉兆 | 2010.03.18 20:42