Acerの新作ゲーミングノートPC「The Predator Triton 14 AI」は、軽くて見た目も美しく、けっこうパワフル。スタイラスペンに対応し、お絵描きパッドとしても機能するハプティックトラックパッドにも注目です。
そして、無駄と言う人もいるかもしれませんが、キーボードにはゲーマー心くすぐる超高輝度のRGBライトも備えています。
The Predator Triton 14 AI
これは何?:ゲームに最適とは言えないものの、コンパクトなボディにたくさんの機能を備えたクールなノートPC。
気に入った:美しいディスプレイ、キーボードとトラックパッドの感触、トラックパッドがペンスタイラスになるギミック、十分なゲームパフォーマンス、平均以上のバッテリー。
気になった:スタイラスを固定できる場所がない、スピーカーはいまいち、ゲーム性能がよりよいライバルがいる、高価。
高いし欠点もあるけど、とにかくクール

2025年の秋より順次発売開始となった「The Predator Triton 14 AI」。箱から取り出して最初に実感したのはボディの堅牢さです。フタもキーボードもほとんどたわまず、ボディの中央を押したときに少し動く程度。指紋防止コーティングが施され、汚れにも強いのが特徴です。
本体の重量はわずか1.6kg、手に持ったときもコンパクトさゆえに重さを感じにくいです。もちろん、Asus Zenbook S14などの最高級の薄型軽量ノートPCよりは重いですが。
価格は2,500ドル(日本では41万9,800円)と、このスペックの14インチゲーミングノートPCとしてはかなり高額です。次世代CPUの次期モデルが登場すれば、数ヶ月でその価値は薄れてしまうかもしれません。
またバッテリー駆動時間はAppleのMシリーズMacBookや、 AMD、Intel、Qualcommといった独立型GPUを搭載していない最近の薄型デバイスなどと比べてもやや劣る印象です。
しかし、これらの競合ノートパソコンには、タッチスクリーンやスタイラスペン対応のトラックパッドは搭載されていません。Predatorは基本ゲーム端末ですが、こうした機能はクリエイター向けPCとしても大いに機能することでしょう。

ポートも充実していて、HDMI、USB-A 3.2スロットが 2 つ、Thunderbolt 4スロット、DC電源用のUSB-4ポート、ヘッドフォンジャック、microSDカードスロットが搭載されています。14インチMacBook Proには搭載されている、フルサイズのSDカードスロットがないのは惜しい点です。
画面は、傷や衝撃に強いコーディングゴリラガラスでカバーされていて、滑らかに操作できます。1.7mmのキーストロークを持つフラットキーもスムーズな操作感です。押すたびにクリック感があり、キー間の間隔も十分にあるのでタイピングミスの不安もありません。
キーごとのRGBライトはオフにすることも可能です。ただし、トラックパッドやパームレストとラップトップの天板にステンシルされたAcer Predatorのロゴはオフにできません。
スタイラスペンが便利

そしてPredator Tritonを際立たせるのが、スタイラスペン対応のハプティックトラックパッドの存在です。
このパッドは大型で、ノートパソコンの下端からキーボードまで伸びています。パームレストとの区切りはLEDで光るラインで示されるだけ。触ってもどこからどこまでがタッチパッドなのか分からないほど滑らかです。
物理的なクリックはなく、代わりに中央部分が圧力を感知してフィードバックを返します。悪名高き「Dell Pro Premium(旧称XPS 13)」のように、スワイプし損ねるようなことはありませんでした。
ハプティックトラックパッドの真価は、MPP2.5プロトコル対応のスタイラスペンを使うことで発揮されます。スタイラスペンは傾き検知と4,096段階の筆圧に対応し、トラックパッドをお絵描きパッドのように使うことができます。
操作にはややコツが必要ですが、ペンとして使いこなせるようになると、感触は驚くほどよくなります。画面ではなくトラックパッドに描けるので、ディスプレイを傷つける心配がないのは嬉しいポイント。

ディスプレイはタッチスクリーンに対応していますが、スタイラスペンが使えるのはトラックパッドのみ。タブレットのようには使えません。Photoshopなどのアプリでペンを試してみましたが、トラックパッドは基本的に小さなキャンバスのように機能しました。ペン先をトラックパッドの上に置くと、キャンバス上の位置が示されます。時々、画像の間違った部分を突いてしまうことがありました。マウスのクリックの方が特定部分の選択は簡単かもしれません。
スタイラスペンは単4電池1本で動作し、電池交換までの寿命は約12ヶ月です。Apple Pencil Proのように、ツール切り替えのためのペン側操作があるわけでもないのでスムーズに作業できそうです。
ベストのゲーム体験は期待できない

Predator Tritonをゲームパフォーマンスだけで評価すると、ライバルと比べてやや見劣りするかもしれません。しかし、他の機種を買うべきだと言うほどではなく、どのアプリを使うか次第とも言えるでしょう。
もしあなたがゲーム内パフォーマンスだけを重要視していて、Nvidia GeForce RTX 5070を最大限に活かしたいなら、より優れたパフォーマンスを発揮するデバイスは他にもあります。
筆者が直近最後にレビューした14インチのゲーミングノートPCは「Razer Blade 14」でした。こちらの価格は2,700ドルですが、大抵は割引されています。スペックを比べると、どちらも同じRTX 5070 GPUと32GBのRAMを使用していますが、CPUはAMDではなく、Predator TritonはIntelの「Core Ultra 9 288V」を搭載しています。クロック速度が5.1GHz、消費電力は30Wと高めです。
Intel Core Ultra 9 288Vを搭載したノートPCの数は少なく、筆者も待望のご対面でしたが、印象は控えめでした。
Geekbench 6とCinebench 2024のベンチマークテストを行ったところ、Blade 14のAMD Ryzen AI 9 365にマルチコアで劣りました。Predator Tritonは8コアなので、10コアCPUのRyzenに比べれば当然ですけど。
Turbo電力プロファイルでオーバークロックしたところ、Predator Tritonのスコアは10,704 点でしたが、Bladeの場合は14,949 点。CPUのグラフィックス処理性能を測るCinebenchでは636にとどまります(Ryzenは1074)。
そもそもCore Ultra 9 288Vは軽量ノート向けCPUのため、ゲーミング向けCPUには届きません。IntelのArrow Lake-Hシリーズは今年使った16〜18インチノートPCでは非常にパワフルでしたが、14 インチのボディでは性能が制限されるアプリもあります。Blenderのテストでは、Predator Tritonは3分50秒と、16インチのLenovo Legion Pro 7i(Core Ultra 275HX 搭載)の1分強には及びませんでした。
また3DMarkの複数ベンチマークでも、Predator TritonはBlade 14より数百ポイント低くなりました。ゲームベンチではタイトル次第で3〜5fpsほどの差がありました。『サイバーパンク2077』では、最大2,880 x 1,800解像度、レイトレーシングなしの設定で約41fpsのフレームレートを実現。レイトレをすべて有効にし、DLSSアップスケーリングを自動に設定した場合でも、35fpsに達しました。『Horizon Zero Dawn: Remastered』や『黒神話:悟空』などのゲームでも同様で 、最大解像度でフレーム生成を使用しない場合、最高設定で30fpsを少し超える程度。『Marvel’s Spider-Man 2』は特にGPU負荷が高く、レイトレ有効・中設定・DLSSありでもなんとかプレイできる状況でした。とはいえ、低電力プロファイルでもfps差はわずかなので、大半のゲームは問題なく遊べます。
なお、Predator TritonはCore Ultra 9 288VはCopilot+ PCの資格を満たしており、「リコール」をはじめとするWindowsのAI機能を利用できます。
うるさいけど優れた冷却機能
これらの高スペックを可能にしたのが、冷却機能の向上です。CPUと冷却ユニットの間に入る熱伝導材(TIM、サーマルインターフェイス)には、従来のサーマルグリスではなく放熱性に優れたグラフェンを採用し、デバイスの熱放性を高めました。これにより従来のTIMと比べて、熱容量は14.5%大きくなったとのこと。実際に使っているとトラックパッドの両脇あたりが熱くなりますが、この自動冷却機能により不快感を感じることはありませんでした。
しかし、冷却時のファンの騒音は気になるかもしれません。ゲームの音がほとんど聞こえないほど大きく、まるでノートPCが机から垂直離陸して天井に飛んでいくのではないかと思うほどでした。
バッテリー、1日中は持たない

Acer Predator Triton 14 AIは、ゲーミングノートPCとしては非常に持ち運びやすいサイズ感です。どんなバックパックにもすっぽり収まりました。
残念ながら多くの従来のゲーミングノートPCと同様に、Predator Triton 14も夜明けから夕暮れまで持ちこたえるほどのバッテリー駆動時間ではありません。バランス電源モードでは、一般的な使用状況で最大3時間しか充電が持ちませんでした。静音電源モードかつRGBライティングをすべてオフにした場合は、30分ほど長く駆動できました。
このデバイスを外出先で使用する場合は、充電器を携帯する必要がありますが、付属の140W電源アダプターもコンパクトなので、持ち運びの重さを気にすることなく収納できます。
素晴らしい画面とたまに良いサウンド
Predator Tritonの有機ELディスプレイは、解像度2880×1800ドット、最大120Hzのリフレッシュレートと340nitのピーク輝度を誇ります。
OLEDディスプレイは他のディスプレイに比べて暗いことで有名ですが、このディスプレイは屋内であれば十分な明るさです。日中の窓際で使用していても、画面が邪魔になることはありませんでした。外に出ると、映像が暗くなり始めるのが分かります。画面の反射も筆者が最近使っていたLenovoデバイスほど光沢感もなく、文字を読むのに角度をつけなければならないほど画面が反射することもありませんでした。
完璧なオーディオ機器とまでは言えないものの、Predator Tritonの音質はその小ささからは想像できないほど優れています。スピーカーは全部で6基、下向きに4基、側面に2基搭載されています。残念なのは下向きのスピーカーです。テーブルや机の上で作業する場合、ノートパソコンを高く持ち上げている時よりも音がこもってしまいます。膝の上で作業している時には発生しない、不快なエコー効果が発生しました。
狭い空間では、音量を上げるとかなり大きな音になります。全体的には概ねバランスが取れているように感じます。時折、高音域で鋭く聞こえ始める部分があります。このデバイスにはDTS:X Ultraソフトウェアが搭載されており、様々なゲーム向けの設定が可能です。これに対応するゲームでわずかに空間オーディオの臨場感を味わえますが、高品質なヘッドホンで得られるほどの効果はありません。
ディスプレイは素晴らしいのですが、忘れてならないのはこれはAcer製品であるということ。煩わしく邪魔なブロートウェアが大量にプリインストールされています。さらにWindows 11の最新アップデートで、Copilot AIアプリの数が増えたこともより事態を悪化させています。鬱陶しい!
これぞ「万能ノートPC」かもしれない

仕事からクリエイティブな作業、ゲームまで、あらゆることを完璧にこなせる「万能ノートPC」は存在するのでしょうか。筆者が想像する万能ノートPCの姿は、Predator Triton AI 14と近いかもしれません。
同価格帯の他のデバイスと比較すると欠点もあるかもしれませんが、それでも筆者にとってはAcerの最新モデルがもたらす独自のメリットの方が大きいです。そして、Acerがこの製品にPanther Lakeチップを搭載し、一日中使えるバッテリー駆動時間を実現する方法を見つける日を心待ちにしています。そうなれば、真の金字塔を打ち立てるかもしれません。








