CData、Zapier、HubSpotのMCPサーバーを比較したら、アプローチがずいぶん違っていた

Stanley Liu 翻訳●古川えりか

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 本記事はCDataが提供する「CData Software Blog」に掲載された「3つの異なるMCP Server アプローチの比較:HubSpot MCP Server」を再編集したものです。

 エンタープライズデータとAI の統合は、現代の企業にとって重要な課題です。Model Context Protocol(MCP)は、Claude のようなAI ツールが外部システムと直接対話できる強力なソリューションを提供します。現在、利用可能なMCP Server の種類が増えてきており、AI をビジネスで効果的に活用したい企業にとって、さまざまなオプションの比較理解がますます重要になっています。

 わずか数週間の間に、人気のCRM プラットフォームであるHubSpot 用の3つの異なるMCP Server がリリースされました。これにより、次のような疑問が生まれるかもしれません。これらのアプローチをどう比較すべきでしょうか、そして自社データをAI ワークフローに統合する際に、どれを選べばよいのでしょうか?

 本記事では、3つの異なるHubSpot MCP サーバーアプローチの詳細比較を行います。HubSpot 独自のネイティブMCP Server、Zapier のHubSpot MCP Server、そしてCData MCP Server for HubSpot です。私たちの目標は、これらの構成、利用可能なツールセット、およびClaude がそれぞれを使って戦略的なクエリに答える際のパフォーマンス特性を理解することです。

テスト環境

 この比較のために、標準化されたテスト環境を構築しました。

・HubSpot アカウント: 3つのMCP Server すべてを、一貫したアクセス権限を持つ同一の専用デモアカウントに接続しました。

・データセット:約200件のコンタクト、200社の会社、25件の取引からなる小規模なデモデータセットを使用しました。注:この比較で使用されたデータはすべて完全に架空のものです。

・モデル: すべてのテストは、Claude Sonnet 4 モデルを使用して実施しました。

 Claude で動作するように各MCP Server を構成するための要件を見てみましょう。

構成

 3つのアプローチの設定プロセスは大きく異なりました。

HubSpot MCP Server

 HubSpot MCP Server はローカルで実行され、構成の前提としてNode.js とnpm のインストールが必要です。そして、ユーザーはHubSpot 内でプライベートアプリを手動で作成し、さらに、HubSpot でプライベートアプリのアクセストークンを含めるようにClaude デスクトップ設定ファイルを編集する必要があります。この方法は、コマンドラインインターフェースと構成ファイルに精通していることを前提としており、非技術系ユーザーには利用しにくいものです。

Zapier HubSpot MCP Server

 Zapier は、mcp.zapier.com でMCP Server 向けにWeb ベースのガイド付き設定機能を提供します。ユーザーは手順に従ってサーバー作成を進め、接続するHubSpot ツールを選択します(この比較では利用可能なすべてのツールを有効化しました)。認証はOAuth で処理されます。Zapier のソリューションはリモートMCP Server として実行され、本記事の執筆時点では、Claude はMax、Team、またはEnterprise ユーザーに対してのみリモートMCP Server 統合をサポートしているため、アップグレードプランが必要です。最終的な統合は、Claude の設定でZapier が提供するIntegration URL を使用して、Claude の組織オーナーが完了する必要があります。

CData MCP Server for HubSpot

 CData MCP Server for HubSpot は、インストールウィザードによる合理化されたローカルインストールを提供します。CData MCP Servers の設定には外部開発ツールは不要で、コマンドライン操作も必要ありません。MCP Server の設定とHubSpot への接続は、別のサーバー設定ウィザードを介して行われ、ユーザーのClaude の設定ファイルへの書き込みを処理します。認証方法は柔軟で、OAuth とプライベートトークンの両方をサポートし、制御性やセキュリティを犠牲にすることなく、幅広いユーザーが利用できます。

CData MCP Server for HubSpot インストールウィザード

CData MCP Server for HubSpot 設定ウィザード

ツールセットとパフォーマンス分析

 Claude がMCP Server を利用する際、レスポンスを生成するまでの手順をユーザーに表示します。この透明性により、Claude が利用可能なMCP Server のツールセットをどのように活用するかを詳細に比較することができます。

 サーバーの機能を比較するため、実際にCRM データを分析して答えを求めるための現実的な質問例として、当社のセールスディレクターから提供された次のプロンプトを使用しました。

プロンプト:What industries are gaining traction for our most popular product in terms of sales in the midmarket?
(訳:ミッドマーケットでの売上という点で、当社で最も人気の製品が勢いを増しているのはどの業界ですか?)

 各MCP Server を評価するため、一度に1つずつ有効にし、Claude にまったく同じプロンプトを提示して直接比較を行いました。これにより、それぞれのMCP アプローチ固有の特性を直接観察し、比較することができました。

HubSpot MCP Server

ツール群:HubSpot のネイティブMCP Server が基本的な読み書きを可能にする21のツールがあります。バッチ操作用の一連のツールにより、大規模処理をより効率的に実行できます。

パフォーマンス指標:

・レスポンス生成に必要なリクエスト数:9

・実行時間:約1分4秒

主な特徴:ネイティブHubSpot MCP Server は、直接的なAPI アクセスと効率的なトークン使用を提供し、最少のリクエスト数で最も迅速なレスポンスを生成します。しかし、単純なJSON リクエストに依存しているため、根本的な制約があります。Claude はデータのJOIN、複雑なフィルタリング、集計(SUM、AVG、COUNT)などを実行できず、返されるデータにも任意の制限が設けられることがよくあります。

チャットセッションの全文はこちらからご覧ください:HubSpot MCP Server Chat (claude.ai)

リクエストとレスポンスの例(スクリーンショット):

得られた完全な回答:

Zapier HubSpot MCP Server

ツール群:取引やコンタクトなどの一般的なHubSpot オブジェクトの読み取りと作成から、フォーム送信やソーシャルメディアメッセージの作成などのきめ細かなアクションまで対応する53のツールがあります。その幅広さと専門性で他のツールセットと差別化を図っています。

パフォーマンス指標:

・レスポンス生成に必要なリクエスト数:10

・実行時間:約3分46秒

主な特徴:Zapier の実装では、Claude 上に追加のエージェント層が含まれているようで、システムがリクエストに自然言語の指示を埋め込み、リクエストを自己調整するための確認質問を行えるようになっています。ただし、これによりリクエストがHubSpot API に到達する前に追加処理が必要になり、Zapier のMCP Server のリモート環境を考慮すると、わずか10リクエストしか送信されなかったにもかかわらずレスポンス生成に約4分かかったという結果からもわかるように、大きな遅延が発生する可能性があります。一方、Zapier の専用ツールは単一のAPI 呼び出しでアクションを完了でき、効率的なトークン使用につながります。

チャットセッションの全文はこちらからご覧ください: Zapier HubSpot MCP Server chat session (claude.ai)

リクエストとレスポンスの例(スクリーンショット):

得られた完全な回答:

CData MCP Server for HubSpot

ツール群:CData MCP Server は11のツールを装備し、オブジェクトとカラムの読み取り、レコードの挿入などの基本機能を提供します。しかし、真の差別化要因は、Claude に完全なSQL クエリ機能を提供するrun_query ツールです。

パフォーマンス指標:

・レスポンス生成に必要なリクエスト数:18

・実行時間:約2分14秒

主な特徴:CData のHubSpot MCP Server はツール数は少ないものの、run_query 機能により、Claude はJOIN、高度なフィルタリング、インテリジェントな集計を含む複雑なSQL クエリを構築できます。Claude が2分強で18リクエストを処理した結果が示すように、リクエストは迅速に生成・実行されます。このアプローチの根本的な差により、より詳細なデータ分析が可能になりますが、一方で、その汎用性のため、Claude が解決方法を推論する際のトークン消費量は増加します。

チャットセッションの全文はこちらからご覧ください:CData MCP Server for HubSpot chat session (claude.ai)

リクエストとレスポンスの例(スクリーンショット):

得られた完全な回答:

結論

 今回の比較により、テストしたCRM データ分析のユースケースにおける3つのHubSpot MCP Server の機能と効率に大きな違いがあることが明らかになりました。

 HubSpot のネイティブMCP Server は、遅延を最小限に抑えた直接的なAPI 操作に優れ、シンプルなクエリ、ラピッドプロトタイピング、トークン効率に最適です。設定には技術的な作業(Node.js/npm と手動設定)が必要ですが、Claude とHubSpot データの効果的な直接ローカル統合を実現します。

 Zapier のHubSpot MCP Server は、mcp.zapier.com を通じて合理化された設定方法を提供しますが、Claude のアップグレードプランが必要です。リモートMCP サーバーとして動作するため、ユーザーには遅延が発生し、データ取得のパフォーマンスが低下します。しかし真に優れているのは、フォーム送信、COS ブログ投稿、ソーシャルメディアメッセージの作成など、他の手段では専用ツールが用意されていない特定のアクションを、トークン効率良く実行できる包括的なツールセットです。

 CData MCP Server for HubSpot は、合理化されたインストールプロセスと、ソースシステムからのデータをClaude がクエリできる表形式モデルとして表現することで、他とは一線を画しています。CData のアプローチに固有のこのモデルは、HubSpot のライブデータをSQL でアクセス可能な構造化形式でAI ツールに提供します。このコア機能は、run_query ツールと組み合わせることで、SQL の可能性を最大限に引き出し、Claude がHubSpot のライブデータに対して複雑な分析を直接実行できるようにします。CData MCP Server はツール数こそ少ないものの、表形式モデル、run_query ツール、堅牢なSQL エンジンの組み合わせにより、Claude はJOIN、ストアドプロシージャの呼び出し、高度なフィルタや集計の適用が可能になり、データ集約型のクエリ処理で大きな優位性を発揮します。ただし、CData の外部データへのインテリジェントなデータベースライクアクセスが提供する柔軟性は、LLM が操作を実行する前にデータモデルを理解するために複数のクエリを実行する必要があるため、トークン効率が低下する場合があります。

 結論として、最適なMCP Server の選択は、ユーザーの具体的なニーズと技術的専門知識によって決まります。シンプルなデータアクセスと基本的な対話を必要とするユーザーには、HubSpot のネイティブMCP Server で十分かもしれません。Zapier のソリューションは、より抽象化されたエージェント的なアプローチに馴染みのある、幅広い直接アクションを求めるユーザーにとって魅力的です。最後に、強力で柔軟なデータ分析機能を求める企業には、SQL を利用したrun_query ツールを備えたCData MCP Server for HubSpot が最適なソリューションとなるでしょう。

 CData MCP Servers がAI ワークフローを強化し、LLM を必要なデータに安全に接続する方法をご覧ください。

※本記事はCData US ブログ A Comparison of 3 Distinct MCP Approaches の翻訳です。

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