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大麻がやめられない「大麻使用障害」がどのようなものか解説、30代以降の人生に重大な悪影響が及ぶ危険も


近年は娯楽目的での大麻使用が合法化される国や地域が増えており、「大麻は酒やタバコより安全」という主張もみられます。しかし、大麻の使用を自分でコントロールできなくなってしまう大麻依存症(大麻使用障害)のリスクが存在し、特に30代以降の人生に大きな悪影響を及ぼす可能性があると、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しました。

You Need To Quit Weed. - YouTube


「大麻は人生に壊滅的な影響をもたらす可能性がある」という言説は、大麻推進派の人々にとって受け入れがたいものです。


しかし、一度でも大麻を試したことがある人の約20%が大麻使用障害を発症し、そのうち何人かは重度の依存症になっているとのこと。


アメリカでは合法化以前から大麻を日常的に使う人が増えており、記事作成時点では毎日大麻を摂取する人の数がアルコールを上回っています。


2023年の時点で、アメリカの成人の15人に1人が何らかの大麻使用障害に苦しんでいます。またイギリスでは、10代の若者が助けを求める薬物の内訳は大麻が圧倒的に多いそうです。


一般的に、大麻の問題を語る場合は脳が脆弱(ぜいじゃく)な10代の若者に焦点が当てられますが、今回の動画では20代や30代の成人に与える影響について解説します。


なお、この動画を作成したスタッフは、かつて15年間にわたり毎日大麻を吸っていた経験があるとのことです。


人々が大麻を使用する理由は「試しに吸ってみた」「ストレスに対処するため」「楽しいし簡単に手に入るから」などさまざまです。


大麻を吸うと生き生きとした気分になり、物事がよりエキサイティングに感じられます。音楽や映画をより楽しく感じられるほか、友達と一緒に吸うと心の慰めにもなります。


しかし、大麻を使用する頻度については注意が必要です。毎日またはほぼ毎日大麻を使用している場合は、問題が発生している可能性があります。毎日大麻を吸う人では大麻使用障害のリスクが最大30%に達するとのこと。


大麻の使用が状態化すると高揚感もそれほど感じなくなり、少しずつ大麻中心の生活を送るようになります。その結果、大麻以外の趣味やするべきことの優先順位が下がってしまいます。


時間が経過するにつれて、大麻の喜びや高揚感をもたらす効果は消え、心地よいまひのような感覚が主になります。


大麻はストレスへの対処になるかもしれませんが、自分自身をより強く、より良く、より回復力のある人間にしてくれるわけではありません。その代わりに、逃げ込める殻のようなものを作り、否定的な感情を隠すだけです。


大麻使用障害になっている、あるいはなりかけているかどうかを知るには、「たった今この瞬間から4週間大麻をやめることができるかどうか」をテストするのが簡単です。もし、4週間大麻をやめることが不可能だと感じたり、やってみて失敗したりした場合、大麻使用障害に陥っている可能性があります。


大麻が習慣になってしまうと、人生に及ぶ累積的なダメージは甚大なものになります。大麻の影響のひとつに、「人生が停滞してしまう」という点が挙げられます。


大麻依存症の人は生活が大麻中心になってしまい、現状維持の状態が続きます。しかし、その間も自分の体は老化しており、友人たちは人生のステップを上がっていきます。


それでも10代~20代のうちは、人生は勝手に変化していきます。周囲からのサポートも手厚いため、大麻に依存しながらも学校に通い、会社に就職することができ、仲間や友人にも困らないかもしれません。


ところが、体が最も活発な10代~20代のうちに大麻に溺れることは、後々の人生に悪影響を及ぼす可能性があります。本来この時期は、スポーツやデート、友人との夜更かし、旅行などさまざまな経験を積むことができる期間です。


健全な社会生活を築くのも簡単であり、この時期にどういう関係を築けるのかが、今後数十年間の幸せを左右するといえます。


まだ責任も少ないため、興味の向くままにさまざまな分野を探索したり、リスクを冒したりすることもできます。


この時期を大麻の使用やSNSでのスクロールといった受動的な活動に費やすと、後々後悔するかもしれません。


30代に入るとほとんどの人は人生の転換期を迎え、自然に大麻の消費を減らすか完全にやめます。しかし、この時点で大麻使用障害に陥っていると大麻をやめることができず、取り残されてしまう危険があるとのこと。


30歳を過ぎると、社会生活はこれまでと異なったものになります。友情を維持するには気遣いや注意、積極的な時間の投資が必要です。


しかし、大麻の使用が多い人は社会不安が悪化する場合があり、これによってイベントや新しい経験を避けるようになりがちです。加えて、大麻のヘビーユーザーでは感情がまひするため、取り残されることへの恐れ(FOMO)や直前のキャンセルへの罪悪感が薄くなります。


何度も予定をキャンセルしたり、誘いを断ったりすると、周囲の友人たちから「誘っても来ない」「信頼できない」といった評価を受けてしまいます。こうした悪影響は、人生が進めば進むほど大きくなります。


大麻に限らず何らかの使用障害を持つ人の多くは、かつて楽しんでいた活動や趣味を徐々に減らし、代わりに薬物を摂取するようになります。すると、こうした活動を通じてつながっていた周囲の友人も遠ざかってしまうとのこと。


30代になると多くの人々はキャリアやパートナー、旅行、子ども、親しい友人とのイベントで忙しく、自由時間はますます貴重になります。


そうなると、「大麻を吸って過ごす」という時間の優先順位はかなり低いものとなります。


一方で大麻使用障害の人は大麻を吸うことをやめられないため、周囲の友人との価値観が合わず、次第に疎遠になってしまいがちです。


大麻使用障害を持つ人の多くは「大麻を吸う仲間」とのつながりを持っていますが、仲間たちが大麻を吸うのをやめてしまった途端に孤立してしまいます。


30代で新たな友人を作るのは20代と比べて困難で、エネルギーやモチベーションが必要です。しかし、大麻使用障害になるとこうした気力を持つのが難しくなってしまうとのこと。


さらに悪いことに、孤独を感じる人は大麻を使って孤独から逃れようとします。これにより、大麻の使用をやめられなくなる負のスパイラルが生じます。


また、大麻使用障害は恋愛関係にも支障をもたらします。大麻がもたらす社会不安や自己満足は、20代がデートや性体験を先延ばしにする原因となるそうです。


さらに、大麻を毎日吸う人のパートナーは自分が無視されていると感じる傾向にあり、カップル間のコミュニケーションが崩れ、信頼関係がなくなってしまうこともあります。


一般に大麻依存症の人は、恋愛関係の対処に自分が失敗していることに気付いておらず、破局を迎えて初めて自分の失敗に気付く場合があります。


結局のところ、30代の人間は大人としての責任を分かち合う覚悟があり、一緒に人生を築いていけるパートナーを求めているのです。しかし、大麻使用障害の人はこうした魅力に欠けています。


大麻がもたらす問題には、「物事を達成するモチベーションが低くなる」というものもあります。


長期的な研究では、大麻の重度使用は学業成績の低下、教育の質の低下、収入の低下、貯蓄の減少、雇用の安定性の低下につながりやすいことが示されています。同じような家庭環境や社会階級の人々と比べても、大麻の使用によって差が生じるとのこと。


大麻使用障害の人の多くは仕事に向かうことに困難を感じ、生産性が低く、タスクを先延ばしにし、責任を果たせなくなりがちです。逃した機会や誤った決断の結果は、ゆっくりですが着実に蓄積されていきます。


また、大麻使用障害になると年間数千ドル(数十万円)もの費用がかかるため、貯蓄をすることも難しくなってしまいます。


一般に20代の間に、人は「あまり役に立たない人」から「何かの得意分野を持つ人」へと変化します。そして30代になると、他人や自分自身に対する期待も変化します。


若いうちは多めに見られていたことが30代になると許されなくなり、同世代との格差も大きく開きます。10年~20年も大麻を使い続けた人とそうでない人では、成長に違いがあるのは当然です。


大麻のせいであらゆる経験が少なかった人は、ある意味で「人生が短かった」といえるかもしれません。


いくつかの研究から、長期にわたって大麻を常用している人は、モチベーションや個人的な目標の追求、社会生活や恋愛、キャリアなど人生のさまざまな側面において、満足度が著しく低いことがわかっています。


大麻の使用により、本来あったはずの楽しさや充実度を得られない人生になってしまうかもしれないというわけです。


また、大麻使用障害は精神にも悪影響を及ぼす可能性があります。厄介なのは、大麻を使用し始めた当初は、精神状態が改善されるように見えるという点です。


不安や憂うつな気持ちが和らぎ、リラックスして孤独感も軽減されます。


しかし、大麻は確実に脳の報酬系に作用し、その作用が気付かないうちに逆転する可能性があります。大麻は感情をコントロールする能力を損ない、不安や抑うつ的な感情を悪化させ、深刻な精神障害に発展する可能性があるとのこと。


こうした問題に対処しようとしてさらに大麻の使用が増えると、本人の対処能力が損なわれ、脆弱で圧倒されやすくなります。結果としてストレスに対処できなくなり、不安や抑うつ症状が増加してしまうというわけです。


一方、大麻使用障害の人が大麻をやめることで、精神状態が著しく改善したという研究結果が報告されています。


大麻使用障害による人生の停滞や社会的な孤立、モチベーションの低下といった問題は、たとえ若くてもすでに生じています。


大麻使用障害から抜け出すのは決して簡単ではありませんが、早く始めるほど人生がより良くなります。Kurzgesagtは、「あなたは大麻をやめるべきです」と呼びかけました。

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in 動画,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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