ロンドンで米中貿易協議に臨む米国のハワード・ラトニック商務長官(6月10日、写真:ロイター/アフロ)
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 9月中旬、米中間の技術デカップリング(分断)を象徴する動きがあった。

 中国の国家戦略と民間企業のビジネス合理性の間で続いてきた綱引きに、中国政府が終止符を打ったのだ。

 9月17日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、中国の規制当局がアリババ集団や北京字節跳動科技(バイトダンス)といった国内巨大テック企業に対し、米エヌビディア(NVIDIA)製のAI半導体の購入を全面的に禁止したと報じた。

 今月上旬には、これらの企業が水面下でエヌビディア製品を渇望している実態が報じられたばかりだった。

 しかし、今回の禁止措置は、中国政府がもはや国内企業の「NVIDIA依存」を許容せず、「国産チップで代替可能」と判断したことを示している。

 米中対立は、後戻りできない新たな段階に突入したようだ。

「国産品はNVIDIA製に匹敵」―突然の全面禁止

 FTによると、中国のネット統制を担う国家インターネット情報弁公室(CAC)は9月第3週、国内テック企業に対し、エヌビディアが中国市場向けに特別設計した「RTX Pro 6000D」のテストと発注を停止するよう指示した。

 これは、これまでAI開発に広く使われてきたもう一つの中国向けチップ「H20」に対する購入抑制指導から、さらに踏み込んだ措置となる。

 この決断の背景には、当局の自信がある。

 CACは最近、華為技術(ファーウェイ)や中科寒武紀科技(カンブリコン)といった国内半導体メーカーを呼び出し、その性能をヒアリングした結果、「中国のAIプロセッサーは、輸出規制下で許可されているエヌビディア製品と同等か、それを上回るレベルに達した」と結論づけたという。

 ある業界関係者はFTに対し、「トップのコンセンサスは今や、エヌビディアのチップを買わなくても国内供給で需要を満たせる、というものだ」と語る。