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人間の手に眠る第7の感覚を発見、触れる前に物体を感じ取る「予知触覚」

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 イギリスの研究チームは、人間の手に「予知触覚」と呼ばれる新たな感覚があることを突き止めた。

 これは、実際に触れる前に物体の存在を感じ取る能力で、人間の手に隠されていた未知の感覚だ。

 実験では、砂の中に埋められた立方体を、指で砂をなぞるだけで察知できることが確認された。

 この能力は、シギなどの鳥類が砂の下の獲物を見つける仕組みに似ており、人間の中にも眠っていた言わば「第7の感覚」である。

 この研究成果は『IEEE International Conference on Development and Learning(ICDL)』(2025年10月21日付)で発表された。

人間が持っていた第七の感覚「予知触覚」

 クイーン・メアリー・ロンドン大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームは、人間の手が実際に触れずに物体を感じ取る能力を持つことを発見した。

 科学者たちはこれまで、人間の感覚を「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・固有受容感覚」の6つに分類してきた。

 固有受容感覚とは、自分の体の位置や動きを感じ取る力のことで、目を閉じても自分の手や足がどこにあるか分かるのはこの感覚による。

 今回の研究で見つかった「予知触覚(非接触触覚:リモートタッチ)」は、これら6つのどれにも当てはまらない。

 実際に触れなくても物体を感じ取れるという点で、従来の触覚を超えた第7の感覚だと考えられている。

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Image by unsplash Matheus Farias

鳥類の持つ「予知触覚」

 研究チームは、自然界のモデルとして海岸に生息するシギやチドリに注目した。

 チドリ目に属するシギやチドリは、くちばしで砂の表面を軽く押すことで、砂の中を伝わる微細な圧力の波を感じ取る。

 その波が砂の下に潜む獲物に反射すると、くちばしの先端にある感覚器官「ビル・チップ器官(bill-tip organ)」がその信号を受け取り、見えない獲物の位置を察知できる。

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シギは、くちばしを砂に押し当てることで、砂の下にいる貝や虫などの獲物が反射する微かな圧力の波を感じ取る Image credit:Author: de Fouw. Modified from de Fouw et al. (2016) Animal Behaviour.

 研究チームは、鳥類のこの感覚が人間にも備わっているのではないかと考えた。

 そこで彼らは、人間の参加者に砂の中に指を入れ、埋められた立方体を探す実験を行った。

 すると多くの被験者が、実際に触れる前にその位置を感じ取ることができた。

 研究者らが砂の動きを物理モデルで解析したところ、人間の手は、物体に触れずにほんのギリギリの位置で、砂粒のわずかな動きや物体の表面で反射する微細な振動を感じ取っていたのだ。 

人間とロボットの比較実験

 研究チームは、人間の成績をAIを使ったロボット触覚センサーと比較した。

 ロボットには、触覚のパターンを記憶しながら学習する「LSTM(長短期記憶)」というAIの仕組みが使われた。

 人間とロボットが、どこまで小さな力の変化を感じ取れるかという物理的な限界を測定したところ、人間は検出範囲内で約70.7%の精度を記録し、非常に正確だった。

 一方、ロボットは少し離れた位置にも反応したが、実際には存在しない物体を検出することが多く、全体の精度は40%にとどまった。

人間の予知触覚がロボット技術の未来を変える

 研究を主導したクイーン・メアリー・ロンドン大学のエリザベッタ・ヴェルサーチェ氏は、「人間の予知触覚を調べたのはこれが初めてです。この発見は、人間を含む生き物が、どこまで周囲を感じ取れるのかという“知覚の境界”の考え方を変える可能性があります」と語った。

 研究チームの一員であるジェンチー・チェン氏は、人間の予知触覚のしくみを応用することで、ロボットがより繊細な操作を行えるようになると語った。

 ロボットの触覚がさらに研ぎ澄まされれば、遺物を傷つけずに見つける作業、視界が限られる砂地や海底、火星のような環境での探索に役立つ可能性がある。

 そして我々も、心を研ぎ澄ませれば、壁の後ろに潜んでいる何者かの正体に気が付くことができるかもしれない。そう、ハンドパワーだ!

References: Ieeexplore.ieee.org / Eurekalert

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この記事へのコメント 50件

コメントを書く

  1. ・昔のゲーマーはメーカー名とデータ容量(メガ数)
     だけでクソゲーかどうか判別する能力があった。
    ・アニオタは「原作の出版社×制作スタジオ×監督」で
     アニメの完成度を見る前からだいたい予測できる。
    ・自動車マニアはモーターショーのコンセプトカーが
     発売時にどこがどう残念になるか予測できる。
     「この車はそもそも出ない」という事も予知できる。

    • -4
    1. それは予知ではなく過去の経験の積み重ねからなる予測なのよ

      • +17
  2. 究極の小宇宙セブンセンシズ

    • +8
  3. この記事で一番の衝撃は第六感がテレパシーとかじゃなかったこと

    • +24
  4. (おじさん)聖闘士星矢ァ! 少年はみんな~!

    • +4
  5. うーん・・・
    ほかの研究機関でも追試してもらわないと
    にわかには信じらないよ

    • +6
  6. ちょっと待て最後の一文
    「そして我々も、心を研ぎ澄ませれば、壁の後ろに潜んでいる何者かの正体に気が付くことができるかもしれない。」
    て何々?人間椅子的な?

    • 評価
  7. >砂の表面を軽く押すことで、砂の中を伝わる微細な圧力の波を感じ取る。
    >人間の手は、物体に触れずにほんのギリギリの位置で、砂粒のわずかな動きや物体の表面で反射する微細な振動を感じ取っていたのだ。 

    よく分かってないんだけど、それって普通に触覚の一種とは違うの?
    座布団の下にビー玉が挟まっていたら違和感あるとか、盲人が白杖でつついて地面の状態を把握する、みたいなのと、程度の差こそあれ そんなに変わらないように思えるが。
    直接は触れてないけど、軽く押したことに対する微妙な反動を、間の物を通してキャッチしているなら、結局はそれって触覚の鋭敏さではないの?

    • +39
    1. もしもただそれだけのことなら機械の方が正確に判別出来るはず。つまり触覚ではあるけど「触れた感覚」とは違うということでは?
      例えばコウモリの超音波だって聴覚だけどあれを耳の能力、あるいは喉の能力だなんて言わない……よね、たぶん。

      • +4
      1. 「機械の方が正確に判別出来るはず。」と言うのは間違い
        職人ともなれば数ミクロンの差を指先で感知できるし
        素人でも0.04mm未満の細い髪の毛の段差を把握出来る謎
        これを機械で測定するとなると莫大な予算と機構が必要

        • +9
    2. 同感
      最初に例として書かれた鳥は特別な感覚器官があるから別感覚であると定義できるけど
      実験で試された人間のは説明を読む限り触覚の一種でしかない
      砂の抵抗が僅かに変わるのを触覚で判断しているだけ
      確かに通常の触覚とは桁違いの精度を発揮しているけどね

      • +10
      1. 鳥のも触覚の延長で、別に特別な感覚器官があるわけじゃ無いぞ。
        ビル・チップ器官というのはあくまでその器官そのものの名前。
        そして、皮膚などの体の一部との接触した部位のみの表面的な感覚だけじゃなく砂の抵抗などをより詳細に分析できる。
        その分析能力と感覚が人間にも備わってるのでは?そしてその感覚は第7の感覚と呼んでいいのでは?という研究だ。

        • +6
    3. 空気の微細な振動を感じ取るのが聴覚のわけで
      これも触覚の一種だよねってことになるよ
      魚の側線みたいな機能が多すぎてよくわかっていない部分が多いものと比べてしまうと単純であることは確かなんだけどね

      • +3
  8. >触れる前に物体を感じ取る「予知触覚」

    タイトルだけ見たときは、てっきり眉間を指さされた時ムズムズするやつかと思った

    • +19
    1. あれの正体なんなんだろうね
      あれこそ他にない感覚だと思うのだが

      • +11
  9. 自分はスマホゲーやると、スロットとか選べるログボとか
    「あ、これは○○が出る」と、ピンと来ることがある
    ただし回したり選んだりした後だからなんの役にも立たない

    • -5
    1. 大抵のプログラムはリアルタイムではなく映像で表示する前に結果が確定している
      その時の処理の分岐で違和感を感じる事はあり得る

      • +1
    2. 自分も似たようなのある、誰も信じてくれないけど
      メールの新着やサイトの更新が、通知がなくてもスマホやPCを使う直前に「あるな」ってわかる
      同じくなんの役にも立たないw

      • +1
  10. ほんまそれ。
    微細な振動を感じ取っていたことを、どのように確認したのか、何も言及してないもんな。立方体を緩衝材で巻いて埋めると検知率が落ちたとか?

    • 評価
  11. 誰しも自覚してないで触角と同じだと感じてることには間違いない
    でも調べてみると触れる前の砂の動きの違いで判断していたってことだね
    これは恐らく全員が砂場のウンコで鍛えてきたんだ
    触れてしまうと言うことがイコール致命的な感染リスクとなるわけで
    判定することに役割が生まれていると言える
    つまりこの第七感覚は淘汰圧の視点で我々人間に存在していなければならない

    • +1
    1. それを科学的に証明出来たらイグノーベル賞候補間違いなし。

      • +1
  12. 第6もだけど感覚に分類するのはどうなんだろう
    他の感覚を総合したり、一時的に先鋭化させて得た情報から
    脳が作り出してるものだと思うけどね

    • 評価
    1. 例えば、味覚は嗅覚と合わせて感じられるものなんだよ
      ほとんどの無果汁のジュースは味覚だけなら酸っぱい砂糖水であり香料で嗅覚をだましているよ
      それ以外の感覚も単独では存在せず
      脳が作り出しているものなんだよね

      • 評価
  13. アクティブよりもパッシブ寄りなのかな
    触覚センサーを持つロボ手よりも好成績を出せたというのがとっかかりなり突破点なりになりそうなのですね
    あたらしい感覚なのか触覚の拡張版?なんかちがうのあるぞ版?なのかはこれからなのかな
    いつか樹脂製対人地雷の検知向上とかに応用できたらいいな

    • +1
  14. いや、、砂触っとるやんけ
    触れる前にわかる感覚とちゃうんか~~~い!

    真下に埋まってる場合と、埋まって無い場合じゃ違うの当たり前やんけ

    • 評価
  15. 物体が埋まってたら圧力のムラが出来て感じるのは当然では?
    なんなら足でも肘でも分かる

    • +3
  16. 砂を介して圧力を感じる訓練をすればそりゃできると思うが・・実質的に触れてるわけでしょう。背後からの気配を察して避けるとかそういうのを期待したのだが。空気の圧力でも同様のことができるのかな

    • +1
  17. 昔 怪我や病気を治すために手をあてる治療法があった これが 手当て の語源

    • 評価
    1. 通俗的によく言われる民間語源ではあるが、
      まぁ実際には、「手入れ」なんかと似た感じで
      「手を当てる = 作業を施しておく、処置を充てがう、フォローを入れる」のニュアンスと思われ。

      • 評価
  18. 目をつぶって眉間に指を近づけると触ってもないのに何か感じる的な

    • 評価
  19. 😎ハンドパワーです。

    • 評価
    1. きてます きてます

      • +2
  20. 以前鍼灸治療院通いしてたけど、優秀な鍼灸師はカンがいいといわれる。
    この記事でいう「予知触覚」もありそうな。
    知識だけでは東洋医学は十分でない気がする。

    • 評価
  21. それでか!
    ボクがスマホに触れる前に反応するのはっ。

    • +1
  22. 気配とか、「皮膚かぁ..」ってやつね。
    そりゃあるでしょうよ。

    私人間の髪って本当に怒った人は整髪剤モノともしないくらい逆立つの見たことあるので。

    • 評価
  23. 福引抽選に応用できんかなぁ

    • 評価
  24. むかしトレーディングカードの袋を爪先でなぞるだけでレアカード判定出来る子がいて、みんなその子に頼んで買うカードを選んでもらってた
    おそらく金箔印刷の微妙な凸凹の違いを袋越しに読み取れてたのだと思う

    • +5
  25. 磁力?磁場?の関係なのかな?知らんけど。

    • 評価
  26. 楽しいなぁとてもワクワクする。人間の身体的な能力はいろんな特化の仕方があるけれど、エコーロケーションが本来すべての人間が使える感覚だとしたら、うまくその感覚を研ぎ澄ませられたら超能力者だなんて言われてしまうのかもしれない。透視能力のある人とかは、もしかしたら生まれつきそういう感覚が鋭いのかもしれない。何にしてもヒト科も進化できそうで嬉しい。

    • +1
  27. いつか視線を感じるとかも解明するのかな
    または同じ能力なのかも

    • +1
    1. 好きな子の後ろから視線を送っているが
      一向に反応しなくて目が充血した、あるある。

      • 評価
  28. >人間の手に眠る第7の感覚を発見、触れる前に物体を感じ取る「予知触覚」

    違うな
    これは既視感に近いもので予知とは違う
    つまり目で見て触れる事を想像したらその感触を脳が思い出してるだけ
    例えば自分が毎週聴いてるラジオなんかで次にかかるジングルがわかる事があるが全然予知ではなくそういう流れを記憶してるから予想出来てるだけ

    • -5
    1. いや、本文を読んでるか?
      実際に、砂の中の物体を検出する精度を、ロボットと比較する実験やっとるやん。

      • +1
  29. ♪箱の中身はなんじゃろな?

    • 評価
  30. それより他人の視線に気づく原理を誰か解明してくれ。数十メートル以内ならしょっちゅう気づく。それを意識するようになって自分が他人の背後に視線を送ると相手(赤の他人)も振り返る
    何らかの物理法則絶対ある

    • +3
  31. 砂の層の下に硬い異物があったとして
    手のひらで砂の表面を「圧(お)したら」ある程度その異物感は判ると思うけどな 
    砂だけの層とは砂の反発が違うはず
    足の裏と手のひらではどっちが敏感かな

    • +2
  32. 足の裏でわかるとしたら、木の枝みたいなの持って歩き回って水脈探すダウジングの根拠にもなるのかもしれない。

    • 評価
  33. 地面を棒で叩いて歩いても、ある程度の大きさのものが埋まっていればわかるじゃん
    これと同じことなら皮膚感覚ではないと思う(身体感覚だよ)

    一方、下町でロケットの部品作ってる親父さんが「割れそうなコップを見分ける」じゃん
    あれが皮膚感覚の極みだよ

    このどちらとも区別(差別化)できないなら、記事の予知触覚はないと言える

    • 評価
  34. みんなあるってわかってたよね??
    それが初めて科学的に解明されたんだね。

    • 評価

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