ライダーの癖や好みを学習する、充電いらずのオート変速システム「Q’AUTO(クオート)」。ついに自転車がオートマ化したとあって、今年6月に発表されて以来、サイクリストたちの注目を集めてきました。
「Q’AUTO」を開発したシマノによると、なんと50年かけて満足のいくオート変速システムにようやく辿り着いたといいます。
今回は、大阪府堺市にあるシマノ本社で開催されたメディアキャンプに潜入!「Q’AUTO」に込めたシマノの熱い想いを取材しました。
シマノ本社で「Q’AUTO」の魅力をプレゼンテーション!
自己発電&AI学習付き自動変速で、ライダーは煩わしい操作から解放される
本社でメディアキャンプが開催されるのは、シマノとしても初めての試み。このことからも「Q’AUTO」に対する自信の大きさが表れていました。ちなみに「Q’AUTO」という製品名は開発コード名に由来するそうですが、“Q”の意味するところは「クオリティ」や「究極」。「高いクオリティの究極のオート変速システムが実現した」と胸を張ります。
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まず、後輪の中心部分「ハブ」にダイナモ発電機を搭載しています。ライトが点くのと同じ仕組みで、自転車を漕げば自己発電するため、充電どころかバッテリーそのものを必要としません。 |
そして、スピード、ケイデンス(ペダルの回転数)、斜度を検知する3つのセンサーを内蔵。走行状況に応じて適切なギアに自動で変速されるので、ライダーは煩わしい操作から解放され、サイクリングに集中できるようになります。
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さらに、シフトスイッチを押して好みのギアにマニュアルで変えるとAIが学習して、次に同じような走行状況に遭遇したときには、それを踏まえたギアに変速されます。 |
枝村さんいわく、5~6kmほど走ると感覚的に合ってきたことを実感したそう。テストを兼ねて通勤時に乗っていたところ、3日から1週間でスイッチを押すことは無くなったのだとか。「1か月を過ぎた頃には、いざマニュアル車に戻ると、変速のタイミングがわからなくなっていた」と、実体験を交えてAI学習の凄さを披露してくれました。
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しかも、「Q’AUTO」のAIは、常にライダーの癖や好みを把握・予想し続けています。スイッチを通して示されるライダーの意思が予想に合っているとアルゴリズムを変えていく仕様になっていますので、仮に意図的に真逆の変速をしたところで、嘘を見抜いて判断する賢さを持っています。 |
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ただ、何も流行りに乗っかってAIを取り入れたのではありません。2017年に入社した際は開発部の配属だったのですが、「万人に合うオート変速システムを仕立てる」というのが最初に課せられたテーマでした。 |
「Q’AUTO」に辿り着くまでの歴史が物語る、シマノの姿勢
メディアキャンプでは、開発秘話も明かされました。例えば、「Q’AUTO」の「カセットスプロケット(ギアの集合体)」として採用されている「LINKGLIDE(リンクグライド)」は、オート変速システム誕生の布石となったといいます。
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「LINKGLIDE」は数年前に発売したカセットスプロケットで、すでに普及していますが、耐久性を最大3倍にも設計したのは、オート変速でのショックを極限まで小さくすることが目的だったんです。 |
「ギアの変速時には力を抜く」。自転車に詳しい人たちの中では“常識”として浸透しているそうですが、そのような“玄人ならではの気遣い”をオート変速に求めることは難しい。だからこそ、耐久性に重きを置いたカセットスプロケットが欠かせなかったのです。
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一方で「HYPERGLIDE(ハイパーグライド)」というカセットスプロケットがありますが、これは耐久性より変速の速さや軽さを重視したレース向けのものです。一般のライダーには「LINKGLIDE」、レーサーには「HYPERGLIDE」と、2つのラインナップを展開しているのは、そもそものニーズが違うという背景があるからです。 |
レーサーのみならず、一般のライダーにも寄り添うシマノの姿勢が垣間見えるエピソードですが、それはまさに「Q’AUTO」に辿り着くまでの歴史が物語っていました。
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シマノは50年以上前から、万人に合うオート変速システムの開発に着手していました。いくつか製品化しましたが、あまりうまくいかなかったのは、やはり変速のタイミングが微妙で、満足のいくクオリティに達していなかったのが理由として大きかったように思います。 |
加えて、自己発電の機能がなかったことも要因のひとつだったのではないかと推測しました。ある製品では、乾電池を交換しなければならず、オート変速への期待と現実との間にギャップが生まれていたそうです。
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その後、充電不要な電動変速を開発してリリースしましたが、今度は機能を詰め込み過ぎてしまった結果、価格が高騰し、普及しませんでした。それに、まだまだ万人に合うクオリティには至っていない状態でしたね。 |
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そこで、レーサー向けの製品に転用することを思い付き、それが2009年の革新的な電動変速システム「Di2(デジタル・インテグレイテッド・インテリジェンス))※1」の登場につながりました。シマノはレーサー向けの高機能製品の開発に熱心なイメージを持たれがちですが、実は一般のライダーを含めた万人の快適性や利便性を真っ先に追求しているんです。 |
※1 これまではワイヤーを引っ張ることで変速を行う「機械式変速」が主流だった中、モーターによる電動変速を行うことが可能となったモデル。
すべてのサイクリストにオートマ化を。「Q’AUTO」は夢の集大成!
こうして長きにわたって試行錯誤を重ねてきただけに、オート変速システムのクオリティについては、不安が尽きなかったと吐露。何度もプレイテストの機会を設け、一般ライダーからの生の声を聞いてみると、自信を深めながらも発見の連続だったそうです。
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参加者の方から「これは電動アシスト自転車ですか?」と聞かれたときには驚いたのですが、深掘りしてみると、ギアを変えずに自転車に乗っている人が多かったんです。高負荷をかけたままギアを変えてしまい、坂道で止まってしまったり、ペダルから足を踏み外しそうになったりといった失敗経験が原因で、ギア変速を面倒に感じている実態が浮き彫りになりました。 乗っている人が電動アシストと勘違いしてしまうほどの価値を提供できるというのは、意外な気づきでしたね。 |
「自分の力で坂道を登り切ったことを伝えると、すごく感動していただけました」と、嬉しそうな表情を浮かべた枝村さんは、トライ&エラーを繰り返した先に到達した発送の転換が成功に導いたと振り返りました。
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なかなか万人が納得するオート変速を作れませんでしたが、それは結局のところ、変速のタイミングは人それぞれだからです。どれだけアルゴリズムを詰めたとしても、ある人が納得すれば、別の人が納得しない。「究極のセンサーは人」と理解し、「学習機能がないと、自転車におけるオートマ化はなしえない」と結論付けました。 「Q’AUTO」はすべてのサイクリストにオートマ化を提供する夢の集大成といっても過言ではありませんが、ライダーにフィットする“究極のオートマ化”は、その人の手によって完成します。 |
E-バイクでの技術革新が目覚ましい今、いわゆる一般的な自転車が置き去りにされている側面は否めないと指摘。島津さんは「健康増進のためにも自転車を漕ぐ楽しさを知ってもらいたい」と力を込めました。
ミドルコンポーネンツ「CUES(キューズ)」の紹介も
次いで、幅広い自転車スタイルに対応するミドルコンポーネンツ「CUES(キューズ)」に関する紹介もありました。「Q’AUTO」にも採用されている最大3倍長持ちする耐久性の高い設計や、手の大きさに関わらずしっかりと握れるレバー構造により、乗る人を選ばず、初めてのスポーツバイクにもおすすめしたいとのことでした。
新たに「ポリッシュシルバーエディション」を追加。自転車の印象をガラリと変えてくれるため、見た目にもこだわりたい人は要チェックです。
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「ポリッシュシルバーエディション」はクラシカルなストリート系の自転車にもマッチします。 |
試乗コースで「Q’AUTO」のオート変速を体感!
メディアキャンプの後半は、シマノ本社から移動し、郊外の試乗コースへ。「Q’AUTO」の肝となるオート変速を体感してみました。 前のプレゼンテーション紹介された「Q’AUTO」搭載の自転車が3台に試乗できました。
①「AUTOMATE」(ホダカ株式会社)
②「GA-30」(株式会社フカヤ)
③「CARACLE-COZ」(株式会社テック・ワン)
試乗したのは「AUTOMATE」。坂道を登り始めると自動でギアが軽くなり、いつもの自転車では味わえない感覚に思わず頬が緩みました。
勾配に合わせてシフトスイッチを押し、ギアを軽くしたり重くしたりして、自分好みに調整しながら数十分にわたって走行。
すると……
ギアを変えようとするタイミングで切り替わってくれるようになり、感動を覚えました。同じ坂道を走ってみると、明らかに疲労感が違う。途中から全くスイッチを押さなくなり、自転車が後押ししてくれているような感覚に包まれました(プレイテストで電動アシストと勘違いしてしまった人がいたのも頷けます)。
漕げば漕ぐほど愛着が湧き、じんわりとかく汗が心地良い。漕ぎ続けていると疲れるはずなのに、身体を使う喜びに浸りながら、どんどん楽しくなっていきました。1時間ほど走っただけで、すっかり虜に。自分色に染めた試乗車を、このまま我が家にお迎えしたくなりました(笑)
自転車を漕ぐのは楽しい。「Q’AUTO」が思い出させてくれたアナログな原点
子どもの頃、自転車に乗れるようになって長い距離を走ったり、急な坂道を登ったりしたとき、そこには確かな喜びがありました。「自転車を漕ぐのは楽しい」。「Q’AUTO」のオート変速システムは、最新の技術でありながら、アナログな原点を思い出させてくれました。また、自転車を漕ぐのが好きになりそう。今回のメディアキャンプに潜入し、そんな気持ちになりました。
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シマノは、世界中の自転車を愛する人の感動に寄り添いたいと願い、品質にこだわった本当に信頼されるものづくりをめざしています。 今までもこれからも「こころ躍る製品」を皆様にお届けしてまいります。
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