日本HPは今年10月、「オンデバイスAI」の最前線を紹介するプライベートイベント「HP Future of Work AI Conference 2025」を東京国際フォーラム(東京)で開催した。
同イベントでは、米HP Senior Director Global Business Development AI & Data Science Michael Messier(マイケル・メシエイ)氏が、「次世代AIワークステーション(Zシリーズ)~ZGX nanoとZ Boostによるイノベーション~」と題して講演を行い、Z Boostアクセラレーション技術を搭載した新たな次世代Zシリーズワークステーションを発表した。
あらゆる企業が直面している課題とは
メシエイ氏はまず、すべての企業が直面している課題として、ワークフローの複雑性やデータ爆発があり、さらに生成AIトレンドのインパクトを受けていると指摘した。加えて、これまで以上にビジネス上の成果を早く出すことや、コストを減らすという圧力を受けているという。
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講演を行う米HP Senior Director Global Business Development AI & Data Science Michael Messier r(マイケル・メシエイ)氏
「お客様はより良いツールを求めています。そうすることで、AIのワークフローに対応しようとしているのです」(メシエイ氏)
同氏はこれらの課題を解決するため、企業はエッジ領域でコンピュータの演算能力を必要としていると強調した。
「とにかくコンピュータの演算機能が必要です。世界中の企業が求めています。特にエッジで必要としています。より多くの演算能力を持ったコンピュータがすべてのビジネスに必要です。そして常に新しい脅威が日々高まる中、当然、セキュリティは重要な課題です」(メシエイ氏)
1つのPCですべての業務に対応することは不可能
一方で同氏は、1つのPCですべての業務に対応することはできないという課題も指摘した。
「みなさんは適切なアプリケーションを使って、適切に問題に対応したいと思っているでしょうが、残念ながら、1つのPCで全部のユースケースに対応することはできません。適切な技術的課題に対して適切なツールを使うことが重要です。例えば、最も軽量で最もコスト効果が高く、最もパワフルなPCは存在しません。ですから、適切なテクノロジーを選ばないといけません」(メシエイ氏)
ビジネスにコンピュータの演算能力が必要である一方、生成AIに関しては,GPUの能力が重要になる現在。メシエイ氏によると、オンプレミスでGPUを実装するには高額なコストがかかる一方、GPUに投資したとしても、GPUの30%~70%は遊休状態にあるという。
「つまり、ガレージにフェラーリがあるけれども、全然フェラーリに乗っていない状態です。必要な時に乗るしかありませんが、GPUが必要な時には、すでにみなさんの目の前には制約があります」(メシエイ氏)
HP Z Boostアクセラレーションとは
この課題に対して、メシエイ氏は2つの解決策を示した。1つはHP Z Boostアクセラレーション技術の利用だ。
HP Z Boostは、分散したGPUを仮想的に統合し、GPUへのリモートアクセスを提供し、他の端末から遠隔で利用できるようにする機能だ。これにより、組織全体でGPUを共有する仕組みを提供する。そして、GPUの稼働率を高め、最大5倍の処理性能向上を実現するという。
「コンピューティングパワーがGPUの集約体だったとしたらどうでしょうか。これがまさにZ-Boostのなせる技です。Z-Boostは、先進的なワークフローの未来を変革しています。これまでは不可能だったものが実現されます。そして、ビジネス上の成果がより早く出せます」と、メシエイ氏はZ-Boostのメリットをアピールした。
AIワークロードの高速化と効率化を実現する「HP ZGX Nano G1n AI Station」
メシエイ氏が示したもう1つの解決策は、HPが新たに発表した、Z Boostアクセラレーション技術を搭載したコンパクトなZシリーズワークステーション「HP ZGX Nano G1n AI Station」だ。
このワークステーションは、AI開発用でコンパクトサイズの筺体に「NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip」を搭載し、1000Topsの演算性能を発揮する。HP ZGX Nano G1n AI Stationには、NVIDIAのAIソフトウェアとAI開発に役立つオープンソースのツールやライブラリがあらかじめ組み込まれている「HP ZGX Toolkit」により、AIワークロードの高速化と効率化を実現するという。
「HP ZGX Nano G1n AI StationにはNVIDIAのAIソフトウェアが入っており、シームレスにNVIDIA DGX OSにつながっています。われわれの差別化要因は『HP ZGX Toolkit』です。これはソフトウェアスタックです。お客様がより効率的に結果を得ることを可能にします。これがわれわれの答えです」(メシエイ氏)
HP ZGX Nano G1n AI Stationは2025年秋にHP.comで販売開始される予定で、価格は3,000~4,000米ドルだという。
そして同氏は、「AIの将来というのはみなさんの手の中にあります。そして未来の仕事は、今始まります」と語り、講演を終えた。


