悪質なクレームにはどのような対応をすればいいのか。前明石市長の泉房穂さんは「私が明石市の市長になったころは一般の職員がクレーム対応をしていたが、手に負えないようなクレーマーに、精神を病む職員もいた。ただ、とある職業の職員を採用し始めてから現場の空気は一変した」という――。(第1回)
※本稿は、泉房穂『公務員のすすめ 世の中を変える地方自治体の仕事』(小学館新書)の一部を再編集したものです。
世間から批判された“弁護士職員”
市役所の仕事は実に多岐にわたります。そして、職員が見るべきは市民の顔と書きましたが、その市民の中にも実にさまざまな人たちがいます。中には、残念ながらクレーマーのような人たちがいるのも事実です。
何をクレーマーとすべきかの線引きは非常に難しいところがあるので、十把一絡には言えませんが、時として対応にエネルギーと時間を費やしてしまうことは少なくありません。明石市では、こうした対応に大きな役割を果たしたのが、専門職採用された弁護士たちでした。
明石市長に就任した1年目、私はまず弁護士を5人採用しました。当時、基礎自治体としては最多の採用人数でしたから、地元メディアなどには“弁護士出身の市長が、弁護士業界に媚を売っている”、“忖度している”、というような叩かれ方をしたものです。
4年後の市長選挙において対立候補者が、「現市長の泉房穂が採用した弁護士をクビにする!」と公約に掲げていたほどです。しかし、そもそもなぜ弁護士の採用が必要だと私が判断したのか、もっとそこを冷静に考えて欲しかったと思います。
多様化、複雑化、高度化する市民のニーズに対応するためには、弁護士に限らず、数々の専門職を市役所に適切に配置すべきだというのが私の持論です。ですから学校現場では、スクールカウンセラー(心理職)、ソーシャルワーカー(福祉職)を、スクールロイヤー(弁護士)とともに配置しました。

