斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

羅臼ヒグマ事故をクマ統計抜きで報道する国だから、少ない外国人犯罪で「日本人ファースト」が流行るのは理解できる

8月14日に羅臼岳で登山中に男性がヒグマに襲われた事件の報道がここ最近続いていました。

羅臼岳付近「友人がクマに襲われ 引っ張られていった」通報|NHK 北海道のニュース

北海道 羅臼岳 駆除されたヒグマが男性襲ったと断定 DNA一致 | NHK | クマ被害

耳目を集めやすい内容だからメディアが報道したがるのは理解できるものの、毎度のn=1の事件の報道と同じく、私は出来るだけ興味を持たないようにしていました。

というのも、一つの事件を何度も何度も見聞きすると、単純接触効果で、その事件が実態以上に頻繁に起きていると私が錯覚してしまうのを知っているからです。

クマが身近に出没したり、被害を被っている人が、過去と現在の状況に照らし合わせて警戒をするのは当然のことでしょう。でも、私のようにクマが出没する地域には住んでおらず、趣味や仕事で付近に行くこともない人間が、報道を聞くことによって、「最近、クマがたくさん増えてて危ない」なんて思うのは過剰反応です。

報道をすることで、クマに遭遇する人が減ったり、クマ対策に適切な予算が付いたりすることは良いことです。でも、多くの人にはクマ被害のリスクは大きくないはずで、「適切に怖がる」ために、統計情報を必ず報道で付け加えて欲しいんですよね。

とここまで書くと、「クマの統計なんてあるの?」と思われるかもですが、クマの出没情報・人身被害件数・捕獲数は環境省が統計を毎月公開しています。

クマに関する各種情報・取組 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]

どう統計を見るかは専門家の仕事ですが、統計が確認できる2008年以降でクマによる被害者数が過去最大だったのは2023年の198件で、死亡者数が6人です。出没件数、捕獲数も同様に2023年が最大です。2023年は過去から比べて激増したことで、対策に行政も動きました。

※令和6年度第1回クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議(資料)

2024年は2023年より全体的に減少したものの、2025年は7月末までで2023年比較で同様か上回るペースで、クマ被害・出没が起きているようです。

この、私が10分で確認できた情報を、報道でセットで流してほしいんですよね。できれば、地域(都道府県別)での統計にも触れて欲しい。統計があると、「適切に怖がる」ことができるので。今なら生成AIチャットボットを使えば簡単に統計に辿り着けます。それほどコストが掛かる作業ではない。

で、ここからが派生して言いたいことなんですが、こんな風にn=1の事件を統計抜きにセンセーショナルに流すようにしてたら、この前の参議院選挙で一気に広がった「外国人犯罪の増加」の印象と、「日本人ファースト」の流行なんて起きるのは当然だと私は考えてまして。

選挙期間中にファクトチェックをしたのは良かったんですけど、それを普段からメディアには対応して欲しいんですよね。

「外国人増加で犯罪が?」「外国人労働者が日本人の賃金を?」広がる情報を検証「不法滞在者」めぐる誤りも | NHK | フェイク対策

だって、国民の意識って選挙期間だけで醸成されるわけじゃないから。普段から数字を持って紹介してないと、急に「ファクトはこれです」なんて言われても、なかなか頭が追いつきません。

先日の神戸の事件の報道も本当に酷くて。これ、めちゃくちゃ詳細に、各種メディアが取り上げてますよね。

神戸マンション女性殺害事件 確保の35歳容疑者 殺人疑いで逮捕 | NHK | 事件

いや、もちろん、この事件、自分に起きたらと思ったら怖いですよ。でも、n=1じゃないですか。

たぶん、まったく共感されないでしょうけど、この神戸の事件って兵庫の人以外からしたら他人事で、ウクライナの直近の大規模攻撃での死亡と何が違うのかというのが、私の感覚です。

ウクライナに大規模攻撃、9人死亡 米国に本社置く企業も標的に - CNN.co.jp

殺人事件の報道をするなら、殺人事件の統計を合わせて報道して欲しいんですよね。日本ではこれまでの傾向と同じで殺人事件はずっと減少し続けています。死亡者数は年間で200人台。

図録▽他殺による死亡者数の推移

外国人犯罪についても、何かあったら常に統計を出してほしい。沖縄での在日米兵犯罪でも同じ。

たぶん、私みたいに統計にすぐに関心が行く人は少ないから、この願いは叶うことはないでしょう。ただ、私個人としては「適切に怖がる」ようにしたいので、n=1のニュースはこれまで通り脳内に極力留めないよう右から左に流し、身近な安全安心は、自治体の公開する情報で判断していくつもりです。