
黒い男が映し出す西野の姿
太一は自宅アパートのテーブルの前に座り、ノートパソコンを開く。指示された通り、子供部屋同盟内の子供テレビをクリックする。
ブラウザ内の小さな画面に、映像が流されている。八ミリフィルムのような粗い映像で、時にコマ落ちしたり、時にノイズが交じったりする。
その映像の場所を、太一は知っている。西野の指示で何度か資料を届けに赴いた、川越駅前のロータリーだ。駅構内から、何人もの背広姿の帰宅者が出てくる。
映像はその中の一人を捉え、その一人を追っていく。モスグリーンの背広を着た、体格のよい肩の筋肉の隆起した短髪の男──、西野だ。
おそらく撮影者は、身体のどこかに小型カメラを装着しているのではないだろうか。西野と一定の距離を保ったまま、西野のあとをつけている。
と、一瞬だけカメラが撮影者を映し、彼はぶつぶつと何かを呟いた。顔はよく見えなかったが、浅黒い肌の男だった。暗闇に紛れ、ほとんど黒い男に見えた。




















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