【おたからやフランチャイズ特集】 渡辺喜久男会長 x 加盟店オーナー対談「FC経営成功の秘訣」

買い取り専門店「おたからや」を全国1,300店舗(2025年1月時点)で展開する株式会社いーふらん。2024年6月期に年間売上840億円を達成した同社は、「1兆円企業」への成長を加速させるべく、法人を対象としたフランチャイズ(FC)加盟店募集再開に踏み切る。いーふらんの渡辺喜久男会長と、国内13店舗を展開する東洋企業株式会社の大畑典道オーナーに、FC経営の心構えと可能性を聞いた。

「投資回収の素早さ」に注目

――大畑オーナーが「おたからや」事業を展開した経緯を教えてください。

大畑典道

大畑典道オーナー

大畑オーナー:サラリーマン時代に約11年間、FC事業を展開する企業に勤務していました。店長やスーパーバイザーとして新店の立ち上げを経験して、自分でもFC事業に挑戦したいと思い独立しました。おたからやに加盟する前に、飲食店と整体のフランチャイズ(FC)の経営をしていたのですが、うまく運びませんでした。飲食と整体の2業種があれば「どちらかは大丈夫だろう」と想定しましたが、そんなに甘くなかった。おたからやの加盟契約を結んだのは2020年10月ですが、飲食店および整体の運営赤字を抱えてマイナスからのスタートでした。

――なぜ「おたからや」だったのでしょうか。

大畑オーナー:買い取り業界の経験はなく新しいチャレンジでしたが、これほど投資回収が素早くできる可能性のある業態は珍しいと感じました。「おたからやの直営店舗では、ほとんど赤字がない」という評判も耳にしていました。

渡辺喜久男

渡辺喜久男会長

渡辺会長:前提として、買い取り業界というのはビジネス構造的に初期費用も抑えやすく、伸びしろが大きい側面があります。新規参入しやすい業界であることは間違いないです。

大畑オーナー:加えて、私が希望する出店ペースの事情もありました。手元に負債があるので、早い段階で複数店舗を展開し、ビジネスの規模を大きくしたいという思惑がありました。

いーふらん以外にもいくつかの会社と面談しましたが、「まず1年目は1店舗から…」と及び腰の返事をする企業が多かった。そんな中、「複数出店にしましょう」と言ってくれたのが、いーふらんでした。「ここなら挑戦できる」というのがおたからやを選んだ決め手でしたね。

――複数出店にこだわったのですね。やはり大事な考え方なのでしょうか。

渡辺会長:大畑オーナーの事情に加えて、リスクマネジメントの意味でも大事な視点だと思います。

加盟者の中には単一の店舗だけを持ち、「ここだけで一生やっていきたい」という人もいますが、近くに同業他社が出店する可能性は排除できないわけです。何店舗かを出し、営業効率に応じて選択と集中をするのがセオリーだと思います。増店をすると、従業員のモチベーションが上がりやすいという利点もあります。

成功のカギは「自分の責任」という思考

――その後の出店の経過を教えてください。

大畑典道

大畑オーナー:1年目に2、3店舗出店しました。当初は市場の大きい名古屋をターゲットにしようと考え、立地の良い場所を探していました。ただ、名古屋は競合のお膝元でもあり、その後はなかなか好条件の場所が見つからなかった。そこで、一度は見送っていたイオンモール大垣(岐阜県)への出店を決断しました。

渡辺喜久男

渡辺会長:商業施設に店舗を構える利点はいくつかありますが「従業員が働きやすい」ということは大きいと思います。特に女性の採用に関して言えば、圧倒的な「地の利」があります。実際、雇用の間口を広げる効果はあったのではないですか?

大畑オーナー:おっしゃる通りです。店舗の多くはコロナ禍にオープンしましたが、あまりマイナス影響はなかったです。営業が制限された業界も多いなかで、むしろ追い風だったという買い取り市場特有の事情もありますが、人の採用や出店場所の確保という面では有利さを感じました。現在は13店舗まで拡大しつつ、他の業態も手掛けて多角化を進めています。

――多角化を意識した背景は何でしょうか。

大畑典道

大畑オーナー:会社員時代の経験がありますね。景気や事業が苦しくなった時、大きな会社は業態転換などで生き残れても、規模の小さいFC店舗はそうはいかない。そのような状況に直面したときに、「本部に守ってもらおう」というのは違うと思います。経営者として、守るべきものを守るために複数業態を展開しています。

渡辺会長:大畑オーナーの考えは、同じ経営者として同意できますし尊敬もします。おたからやでは、他業態の出店に関する制約などはありません。おたからやの運営で得たノウハウを活かして、他業態でも成功し加盟企業が成長していくことは、私たちにとっても喜ばしいことです。

渡辺喜久男

大畑オーナー:「多角化」と格好いい表現をしましたが、売上高ベースではおたからや事業が9割を占めています。マルチフランチャイズが理想型ではありますが、「おたからやに専念していたら、もっと伸ばしていた」という悔いも残りました。

そこで「2024年度はおたからやの年」と位置づけて、再びおたからやの出店強化に舵を切りました。

――大畑オーナーのように成功する加盟店がある一方で、苦戦している加盟店もあると聞きますが、大畑オーナーにはどのように映っていますか。

大畑オーナー:地理的な条件などもあるので単純な比較はできませんが、やはりFCはどこまでいっても自己責任だと思います。だから、赤字も自分の責任として引き受けるしかない。成功しているところもあるわけですから、私だったら自分たちの運営に問題がないかを見直すところから改善していきます。

渡辺会長:おたからやでは加盟店向けのマニュアル整備と研修体制に力を入れており、その質には自信があります。ただ、さまざまなオーナーがいるので、合わないところがあれば日々改善しながら時代に合わせてアップデートしています。加盟店の皆さまには、まずこうしたマニュアルや研修制度を活用していただきたいです。

きめ細やかなサポートに、「100%忠実に」

――実際のところいーふらん本部の支援はいかがでしたか。

大畑典道

大畑オーナー:驚くほど手厚かったです。マニュアルも細かく整備され、研修も1週間以上ありました。私の場合は、本部がフルサポートしてくれるプランにも入りました。有償オプションですが、すごく良かったです。

例えば、本部に疑問点を聞くと、そのレスポンスがとても早くリアルタイムで回答がもらえます。買い取り価格などの数字を細かくチェックしてくれることはもちろん、店舗にカメラを設置し、接客手法まで見てくれました。接客中にバックヤードで電話をして、指導を仰いだこともあります。扱う品物によってトークを変えるだけで、成約率は上がるんです。当初は、とにかく「本部の指導は100%忠実にやろう」と決めて実践していました。私も従業員も未経験でしたので、成熟度も低いなかでやってこられたのは、ひとえに本部のサポートのおかげでした。

――FCの知見もあると、独自色を出したくなりそうですが。

大畑オーナー:なまじ営業が得意な人だったりすると、その傾向はありますね。しかし基本ができない状態で応用をはじめると、ブランドを毀損する結果になりかねません。買い取り業は新規参入しやすいとはいえ、競争が激しい業界でもあります。まずは本部の指導や、成功している直営店に学ぶのが最善だと思います。独自の手法やルール作りは、事業が軌道に乗って、規模が大きくなってからでよいのです。もしかすると、成功しない加盟店はこの意識が薄いのかもしれません。

海外進出のチャンスはFCオーナーにも

――おたからやと買い取り市場の将来性を、どのように考えているでしょうか。

渡辺喜久男

渡辺会長:競争は激化していますが、今後4、5年は国内市場も伸び続けるでしょう。最近の傾向としては、以前よりも若いお客様が増えました。ロレックスなどの時計が顕著ですが、「不要になったから売る」のではなく、買い換えや投資目的で売却する考えが若い人の間で定着してきた。業界としては追い風だと思います。

大畑オーナー:「だいぶ市民権を得てきたな」という手ごたえはあります。愛知県内を対象に、インターネットでのブランド意識調査をしたところ、おたからやは多くの競合店よりも認知度が高いことが分かりました。このブランド力にも、助けられていますね。チラシ1枚を配る時にも、認知されているのといないのとでは効果が違うわけです。

渡辺会長:知名度の向上は、まさにオーナーの皆さまのおかげでもあります。最近はブランド力を活かして、特定の地域に店舗を集中させる「ドミナント戦略」をお勧めしています。これまでは人口や距離の兼ね合いで「出店しない」と判断することもありましたが、最近は商圏を店舗で固めたほうが、同業他社対策としては良いのではないかと考えていますね。

渡辺喜久男

――一方、おたからやは海外進出の動きも加速していますね。

渡辺会長:海外にも質屋やリサイクルショップはありますが、「買い取り専門」の業態は日本独自のビジネスです。海外にはいくらでも市場があるとにらんでいます。世界には国内の50倍以上もの人口があるわけですから、伸びしろは計り知れないところです。

いま海外の5か国に出店準備をしていますが、それらをモデルケースとして、今後は海外進出を図るFCのオーナーも出てくると期待していますね。

大畑典道

大畑オーナー:将来的に100店舗クラスへの業容拡大を目指すなかで、会長のおっしゃるように、「海外でやった方が良いのではないか」という思いはありますね。

国内は競合が次々出てきているので、ドミナント戦略も念頭に置いて、「商圏を守りながら、少しずつ攻める」という方針を取らざるを得ない。本部が海外進出に舵を切るのであれば、FCも海外市場に目を向けるのは、現実的な戦略でもあると思います。

渡辺会長:世界を見据える姿勢は素晴らしいですね。おたからやとしても、国内と同様に加盟店の皆さまと、海外市場でも1番を目指していきたいと思います。