男性が「ケアする力」を身につけると 養われる「ケアされる力」

有料記事

上地一姫
[PR]

 19日は男性の心身の健康やジェンダー平等を考える「国際男性デー」です。男性が自分や他人の心と体をケアする視点を持つことは、個人だけでなく、社会全体にとっても重要です。男性学の研究で知られる京都大名誉教授の伊藤公雄さんに、意義と課題を聞きました。

 ――男性の「ケアする力」をどうみますか。

 「育児や介護などのケア労働は女性の仕事」という固定観念を持つ人は少なくありませんが、歴史的に見れば比較的新しいジェンダー規範です。江戸時代には、父親が子育てをし、武士など一部には介護休業が認められていました。しかし、近年は工業化に伴って多くの男性は雇用労働者になり、ケアは一手に女性が担うという、男女の役割が固定化されました。

 また戦時中は徴兵制があり、兵士として命を捨てることもいとわないのが「立派」とされた。戦後の男性も、自分の感情や時には身体や命さえ顧みずに働くのが「一人前」とみなされ、自身のことに気を配ることは弱さを認めることで「男らしくない」という意識につながっています。その結果、他者への配慮も弱くなったと考えられます。

 「弱みを見せるな」「感情を表に出すな」などの呪縛に縛られ、悩んでも人に相談せず自分で解決しようとする。体調不良でも我慢し、無理を重ねることで心身の健康を損なうケースも珍しくありません。このような規範が、男性を苦しめてきたことも広く認識されるようになってきました。

ケアする男性は「弱い人」?

 ――自分の心身をケアをする男性は「弱い人」なのでしょうか。

 そんなことはありません。「ケア」という言葉は、育児や介護など他者に向けられた特定の行為に限定されがちですが、私は「自分と他者の生命や身体、思いをめぐる配慮とそれに基づいた行動全般」と広義に捉えるよう提唱しています。

 自分と他者を「ケアする力」を身につけることは、他者の助けなしに独立して生きてきたという認識を見つめ直すことにもつながります。それは他者からのケアを受け入れる際の「ケアされる力」を養うことにもつながります。高齢期に孤立することなく社会とのつながりを維持するためにも重要な要素です。

男性だけの患者会 大切なことは

 ――男性に限った患者会の有…

この記事は有料記事です。残り828文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【11月25日まで】全記事が読み放題のコースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

この記事を書いた人
上地一姫
東京社会部
専門・関心分野
沖縄・平和