iPhoneでもっとも人気のあるブラウザといえば、やはりSafari。
最初からインストールされているうえに、AndroidのChromeと違ってモバイルでの使い勝手も非常に優れています。
拡張機能もサポートしており、動作も軽快。「Safariで十分なのに、わざわざほかのブラウザを探す必要なんてある?」と思うかもしれません。
その疑問は、実は的を射ています。というのも、iPhone上のブラウザはすべて同じブラウジングエンジンを使わなければならないというルールがあるため、根幹となる基本的な体験はどれも同じなのです。
では、なぜ乗り換える必要があるのか? それは、Safariにはない「追加機能」「インターフェース」、そして「エコシステム」にあります。
一度ほかのブラウザにも目を向けてみると、あなたの新しい標準ブラウザになる可能性を秘めた、本当に印象的で、おもしろく、カスタマイズ性の高い選択肢がたくさんあることに気づくでしょう。
💡この記事のポイント
- iPhoneのブラウザはすべて同じエンジンだが、アプリごとの「追加機能」や「UI」で使い勝手はまったく異なる。
- デスクトップ並みのタブ管理、強力なプライバシー保護、PC用拡張機能の利用など、Safariにはない魅力を持つブラウザが多数存在する。
- 用途に合わせてブラウザを使い分けることで、情報収集の効率化やストレス軽減につながり、仕事の生産性向上も期待できる。
1. まるでPC!タブ管理の達人「Vivaldi」
総合力で選ぶなら、まずこれ。
Android版と同様、iPhoneやiPadで使えるブラウザの中でも「Vivaldi」はもっとも多才なブラウザと言えます。特に画面の大きなPro Maxモデルを使っているなら、その真価を実感できるはず。
Vivaldi最大の特徴は、デスクトップ(PC)クラスのタブ管理機能にあります。
- 画面下部に表示できる、水平にスクロールするタブバー。
- よく使うタブを常にスワイプ1つで呼び出せる「ピン留め」機能。
- 複数のタブをまとめる「スタック(グループ化)」機能。タブバーから直接スタックを作成・管理でき、スタックをタップするだけで、そこに含まれるタブを一括で非表示にできる気の利いた機能も。
それ以外にも、広告やトラッカーのブロック機能が標準で組み込まれており、便利なリーディングリスト機能、PC版Vivaldiとのパスワードや履歴の同期も可能です。
トップページの「スピードダイヤル」はカスタマイズ可能で、リンクをタブごとにグループ分けすることもできます。
全体として、Vivaldiは高速で機能豊富ながらも、余計なものがなく軽快。たとえば、AIアシスタントやVPNへの有料アップグレード誘導、無効化する必要のあるニュースフィードといったものは一切ありません。
2. 自分好みに完全カスタマイズできる「Quiche」
見た目も操作も、思いのまま。
「Quiche」はこのリストの中でも新しい、一人の開発者によって運営されている独立系のブラウザです。
しかし、そのデザイン思想は、私が見てきた中でもっとも優れたものかもしれません。以前も紹介しましたが、ここでは概要を説明します。
Quicheは、モジュール式でカスタマイズ可能なブラウザです。
ギャラリー機能からツールバーのテンプレートを選ぶことも、自分好みにボタンを配置することも自由自在。ボタンがほとんどない究極のミニマルスタイルから、よく使うボタンをすべて並べた多機能スタイルまで、思いのままです。
月額2.99ドル(約430円)または年額29.99ドル(約4,315円)の「Quiche Plus」に登録すれば、すべてのツールバーボタンのスタイルが解放され、あらゆるウェブサイトを好みのスタイルで自動的にダークモード化する機能も利用できます。
しかし、有料版でなくてもQuicheは十分に堅実で、高速、そしてミニマルなブラウザです。モバイルブラウザに本当に必要なことを、あなたにとって最適な方法で実現させてくれるでしょう。
標準で広告ブロッカーは搭載されていますが、タブ管理やAIアシスタント、VPNといった追加機能はありません。
3. 跡を残さずブラウジング。プライバシーの番人「DuckDuckGo」
ワンタップで全消去「Fireボタン」。
「DuckDuckGo」は、Googleに代わるプライベートな検索エンジンとして有名です。もしあなたがSafari以外の軽量でプライバシー重視のブラウザを探しているなら、きっと満足のいく選択肢となるでしょう。
プライベートブラウザというだけあって、トラッカーや広告はデフォルトでブロック。もちろん、標準の検索エンジンはDuckDuckGoですが、単なる検索エンジンの変更(これはどのブラウザでも可能)にとどまらない、2つの興味深い機能があります。
Fireボタン
このボタンをタップすると、閲覧データ、クッキー、保存された情報など、すべてが一瞬で消去されます。デジタルな足跡を残したくない人には最適なオプションです。
しかも、この機能はカスタマイズ可能。「Fireproof」という機能を使えば、特定のサイトのログイン情報だけは保護しつつ、それ以外のすべてを消去できます。
Duck Player
広告やコメント、おすすめ動画などを排除した、同社独自のプライベートで邪魔の入らないYouTubeプレイヤー。
設定で、すべての動画を直接Duck Playerで開くようにできます。もちろん、ここでもトラッカーやフィンガープリンティング(ユーザー識別技術)は一切ありません。
4. 広告もブロックする独立派「Brave」
YouTubeヘビーユーザーに朗報。
DuckDuckGoと同様に、「Brave」もプライバシー第一を掲げるブラウザとして知られています。その点は確かですが、人によっては少し煩わしく感じるかもしれない要素も含まれています。
Braveはデフォルトで広告とトラッカーをブロックしますが、独自の報酬プログラムや暗号資産ウォレットサービス、AIチャットボットの利用を促してきます。幸い、これらはすべて無視するか無効にすることが可能です。
標準では、Braveは独自のプライバシー重視検索エンジン「Brave Search」を使用します。これは、(Bingに依存するDuckDuckGoとは異なり)Braveが独自に開発した検索エンジンです。
良い試みではありますが、地図機能などが欠けているのが現状。とはいえ、ほかの検索エンジンへの切り替えは簡単で、キーボード上の候補バーからいつでも代替の検索エンジンに切り替えられます。
Braveには、YouTubeに関する非常に優れた機能がいくつかあります。
- YouTubeの動画広告をデフォルトでブロックする数少ないブラウザの1つ。ブラウザとYouTubeの広告ブロックを巡る「いたちごっこ」の戦いにおいて、少なくとも今のところはBraveが優勢。
- Safariではできない、動画のピクチャー・イン・ピクチャーモードでの再生が可能。
- iPhoneをロックしてもバックグラウンドで再生が続く。
さらに「プレイリスト」という機能もあり、動画や音声をグローバルなプレイリストに追加すれば、広告なしで、バックグラウンド再生やCarPlayにも対応した形で楽しめます。
5. まさかのChrome&Firefox用拡張機能が動く「Orion」
Safariの使い勝手はそのままに、パワーアップ。
「Orion」は、有料検索エンジンとして知られるKagiが開発したブラウザです。しかし、Orion自体は無料で利用でき、検索エンジンをGoogleに設定することも自由。
Orionは、Safariを少しだけ進化させたバージョンと考えるとわかりやすいかもしれません。見た目や動作はSafariに非常によく似ていますが、1つだけ巨大なサプライズがあります。
それは、ChromeとFirefoxの両方の拡張機能をサポートしていること。Safariを除けば、iPhoneで拡張機能をサポートする、このリストで唯一の主要ブラウザなのです。
本家FirefoxのiPhoneアプリでさえ拡張機能をサポートしていないのに、Orionはなぜかそれを実現してしまいました。
人気の広告ブロッカー「uBlock Origin」を動作させることはできませんでしたが(とはいえOrion自体の広告・トラッカー・ポップアップブロック機能は見事です)、すべてのウェブサイトにカスタマイズ可能なダークテーマを適用できる「Dark Reader」拡張機能は問題なくインストール、実行できました。
個性的なブラウザはほかにも
Opera
Android版のOperaは強力なブラウザですが、iPhone版はそこまでではありません。デスクトップスタイルのタブや優れたタブ管理機能に欠けるのです。
しかし、3つの地域から選択できる無料VPNが搭載されているのは大きな特徴。VPN内蔵ブラウザを探しているなら、Operaは良い選択肢です。
Firefox Focus
iPhone版のFirefoxは、PCでFirefoxを使っていてデータを同期したい人向けの、かなり基本的なブラウザです。しかし、Firefox Focusは全くの別物。
非常に厳重にロックダウンされたプライベートなシングルページブラウザで、一度に一つのウェブサイトしか開けません(Focusという名前の由来です)。
閲覧履歴をすばやく削除するボタンもあり、もちろんトラッカーもブロックします。シンプルな体験を求めるなら良いかもしれません。



























