超訳 カーネギー 人を動かす エッセンシャル版 クラシックカバー』(デール・カーネギー 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2018年8月に刊行された『超訳 カーネギー 人を動かす』に、加筆訂正を加えて再編集したもの。

じつに7年ぶりの改編となるわけですが、そもそも1936年に刊行されたオリジナルの『人を動かす』は、数々の著作を残したカーネギーの代表作。紛うことなき自己啓発書の金字塔であり、人種や文化の違いを超えて世界中の人々に読み継がれてきただけに、その普遍性と説得力はいまなお注目に値します。

人間の本質を理解し、人とうまくやっていき、人に好かれ、人に賛同してもらう方法を紹介する実用的な本が社会で必要とされているのに、まだそれがないというのは、私の経験からも事実である。

そこで私は、自分でそういう本を書いてみることにした。この本がそうだ。きっと気に入ってもらえると思う。(中略)

この本の目的は、あなたが「ふだん使っていない多種多様な力」を発揮して、恩恵を得るのを手伝うことである。この本で得た知識を積極的に活用して大きな成果をあげることを願ってやまない。(「序文」より)

こうした記述からも、刊行当初のカーネギーがどのような思いでいたのかが推測できるのではないでしょうか。しかも「超訳」である本書には、そんな『人を動かす』のエッセンスをわかりやすく吸収できるというメリットもあります。

きょうは4「反感を抱かせずに相手を変える方法」のなかから、仕事の現場で人を育てる際に役立ってくれそうな、いくつかのことばを抜き出してみたいと思います。

相手に恥をかかせない

相手に恥をかかせてはいけない。それについては、いくら強調してもしすぎることはない。にもかかわらず、それについて考える人がいかに少ないことだろうか。(141より)

私たちはしばしば、自分の思いどおりにことを進めようとして、知らず知らずのうちに相手のプライドを傷つけているもの。平気で小言を口にし、厳しいことばで脅かし、子どもや部下を人前で叱りつけたりしてしまうわけです。

けれど、相手の立場をほんの少しでも考えていたとしたら、そんなことは決してしないはず。どんなときでも、相手の顔をつぶしてしまわないように配慮する必要があるのです。(141より)

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人前で叱らない

あまりにも多くの人が人前で部下や子供、配偶者を平気で叱っているが、これはけっして好ましい行為ではない。誰かが見ている前で叱られると、大人であれ子供であれ、体面を保てなくなるからだ。相手は恥をかかされて面目が丸つぶれになり、あなたに反感を抱いて自分を正当化しようとするだろう。(144より)

叱るとき大切なのは、一対一で行うように配慮すること。そうすれば、相手は対面を保つことができるからです。あとは伝え方にさえ気をつければ、相手はこちらのいうことを素直に聞き入れてくれるはず。

とくに相手の協力を得る必要があるときこそ、こういった人間関係の原則に忠実でなければいけないのです。(144より)

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ほめことばの驚異的な力

歴史に名を残す偉人たちは必ずと言っていいほど、無名時代に誰かに褒めてもらった経験を持っている。

褒めてくれたのは親や兄弟かもしれないし、友人や知人、上司、教師、あるいは見知らぬ人かもしれない。いずれにせよ、彼らは誰かに褒めてもらったのをきっかけにして、それまで失っていた自信を取り戻し、より一層の努力をして功績をあげたのである。(146より)

そうした経験をしたことのある方は、決してすくなくないはず。多かれ少なかれ、人はほめられることによってポテンシャルを発揮できるようになる可能性が高いからです。

だからこそ、もし近くに、なにかがうまくいかなくて落ち込んでいる人がいたとしたら、ほめて励ましてあげるべき。そうすることで、ほめられた人にはよい変化が現れるかもしれないのですから。(146より)

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人を変える魔法の力

もしも秘められた才能に気づかせることができれば、文字どおり人を変身させることができるそうです。決して大袈裟な表現ではなく、その証拠としてカーネギーはここで、ハーバード大学の教授を務めた心理学者ウィリアム・ジェームズの名言を紹介しています。

「私たちは本来あるべき状態と比べると、半分しか目覚めていない。人間はふだん使っていない多種多様な力を秘めているが、自分の限界よりもずっと狭い範囲で生きている」

まさにそのとおりだ。あなたはふだん使っていない多種多様な力を秘めている。そのひとつが、人を褒めて奮い立たせ、自分の可能性に気づかせる魔法の力だ。(152より)

反感を抱かせることなく人を変えるためには、それがどれだけわずかな進歩であったとしても、心を込めて惜しみなくほめるべきなのです。そうすれば相手は心地よい気分で、より一層の努力をしてくれるに違いないからです。(152より)

相手に期待を寄せる

人を何らかの点で向上させたいなら、相手がその特定の資質をすでに持っているかのように接すればいい。(153より)

こちらが期待している資質を本人がすでに持っていることを指摘すれば、相手は期待に応えるために精一杯努力するものだからです。(153より)


さまざまなテーマに沿って簡潔にまとめられており、邪魔にならないサイズでもあるので、バッグに入れておくには最適。時間が空いたときなどにページをめくってみれば、予想以上の気づきを得ることができるかもしれません。

著者紹介:印南敦史

作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン