「お金や時間を争いごとではなく子供や自身のために使えるようにしてほしい」。自身が経験した離婚調停で不便さを感じたことをきっかけに、昨年11月に会社を立ち上げ、スマートフォン上で手軽に調停を行えるシステムを開発したDDR(東京都港区)社長、的場令紋(れいもん)さん(45)。期間短縮やコスト減などのメリットを前面に押し出す。今月26日に離婚を対象としたスマホ調停サービス「『wakai』for離婚」を開始。離婚協議で普及させ、その後、相続や賃金の未払い問題など幅広いトラブルに対応していきたいという。
心理的不安も
「調停制度だと(次の調停)期日が1~2カ月先になるのが当たり前で、裁判官の都合で期日が先になることもあった」と的場さん。不便さに不満を感じるだけでなく、調停が長引くことで不安になることも多かったことから、「心理的なものも含め、負を解決できるプラットフォームを作ろう」と取り組んだ。
「wakai」は、オンライン上で争点を整理し、裁判所に出向くことなく、調停人を務める弁護士などの専門家とのオンライン面談で話し合いを進められる。裁判所が閉まる夜間や土日祝日も、wakaiであればサービスの利用が可能なため、最短2カ月程度で調停を成立させられる見込みだという。
裁判所までの交通費や、本来の調停にかかる弁護士費用も抑えられる。さらに、相手方と直接顔を合わせる必要がなくなり、精神的なストレスも軽減され、安心して話し合いに臨めることもメリットだという。DDRは、調停などの紛争解決を裁判以外の手法で行う民間事業者を法務相が認証する「かいけつサポート」を今年4月に取得している。
離婚の9割は協議
厚生労働省が公表している「令和4年度離婚に関する統計」によると、令和2年の離婚種別は約12%が裁判離婚、残る約88%が協議離婚だ。協議離婚の場合、話し合いで取り決めた内容を公証役場を通さなければ執行力を持たない。また、同省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、3年の母子世帯で養育費を受けている母親の割合は約28%。約7割の母親が養育費を受給できていない状況にあるという。
認証紛争解決事業者が行う調停において成立した和解であれば、それに基づいた強制執行が可能であるため、的場さんはwakaiを通し、合意書をスマホ上で作ることで、「養育費の未払いなどで苦しまず、離婚後の生活を安心して送れるサポートにつなげたい」という。
法的紛争に直面した際に、情報格差や手続きの煩雑さから正当な権利を行使できない人もいる。スマホ1つで、コストや時間をかけずに調停を成立させられるようになれば、泣き寝入りする人を減らせる。「離婚を経験した人が前向きに次のスタートに立てるようにしたい。スマホ調停がそのための選択肢の一つになれば」(弓場珠希)




