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NTTファシリティーズ、「地方共生型高効率データセンターモデル」を発表

データセンターの廃熱をサウナにすれば、地域貢献になるのでは……?

2025年11月14日 17時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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地方共生型高効率データセンターのイメージ

 生成AIの普及などに伴い、データセンター需要は拡大している。一方、サーバーなどの機器は高温になるとシステムダウンや故障につながるため、冷却して熱を回収する必要がある。その際に生まれる廃熱の活用も含め、データセンターに対するエネルギーの効率活用が課題となっている。

 NTTファシリティーズは、生成AIの普及に伴って拡大するデータセンター需要を受け、立地の二極集中や電力・冷却の課題に対応するため、「地方共生型高効率データセンターモデル」を考案したと発表。

 本モデルは、東京・大阪近郊に集中している国内データセンターの立地構造を見直し、地域との循環を生み出す設備構成を特徴としている。国の方針としてデータセンターの地方分散が求められており、また、電力利用効率(PUE)1.3以下達成の義務化検討など省エネ化・高効率化への社会的期待も高まっている。

 具体的には、サーバー冷却で発生した廃熱を、住宅・オフィス・ビニールハウス・温浴施設などへ再利用する構想を盛り込んでいる。

 IT容量36MW規模のデータセンターを想定した場合、戸建住宅約2300戸、オフィスビルおよそ70000平方m、ビニールハウスおよそ27000平方mに相当する暖房・給湯等の需要を廃熱でまかなえるという試算を提示している。

廃熱活用のイメージ

 また、廃熱の一部はデータセンター内のサウナ施設に利用し、その動線にデータセンターのモデルルームを設置することで、来訪者にデータセンターの仕組みと地域貢献を体感してもらうことを想定しているという。

廃熱を活用したサウナのイメージパース。サウナスペースと外気浴スペースが同じ場所にあるという構図が気にかかるが……

 冷却システムでは、建物中央に廃熱を集める「ヴォイド空間(Hyperbolic Void)」といった自然通風を活用する設計や、直接蒸発式外気冷房(DEC:Direct Evaporative Cooling)を導入することで、従来の空調機(AHU:Air Handring Unit)と比較しておよそ70%の省エネを実現するとしている。

省エネシステムのイメージ

直接蒸発式外気冷房(DEC)と従来の空調機(AHU)の比較

 さらに、建物外装に「Multi Porous Lattice」と称する多孔質セラミックタイルを用い、雨水散水による打ち水効果で周辺環境の冷却や日射・騒音抑制に取り組むと説明している。

斜め格子状に二重構成したセラミックタイルのイメージ

 その結果、IT用電力変換ロスの低減や外気冷却壁「プレクールコイルウォール」技術の導入などをあわせ、PUE=1.14という業界トップクラスの効率を想定。冷却システムの改善により従来比50%超の省エネルギーを可能にするとしている。

 さらに、災害時のレジリエンス機能として、非常用発電機・UPSなどの設置だけではなく、再生可能エネルギー発電所や蓄電池との連携、他地域データセンターへのワークロードシフトを視野に入れ、地域防災拠点としての役割も想定している。

防災拠点機能としての活用イメージ

 また、地域企業・大学との共同研究を促進する共創施設をデータセンター内に設ける構想も明らかとしており、デジタルインフラ整備と地域産業振興を両立させるアプローチが鮮明である。

 今後、同社はこのモデルを参考例として、データセンター事業者や自治体、関係機関と意見交換を重ねながら、AI需要の拡大を見据えた地方共生型データセンターの実現に向けた協議を進めていくとしている。

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