ルンバで家庭から「箒」をなくした米アイロボットが、今度は「ぞうきん」を世の中から一掃しようと新商品を投入した。
同社が7月1日に新たに発表したのは、水拭き掃除機「ブラーバ」。白を基調としたB5サイズの四角いコンパクト軽量機で、黒をメインとした丸い形状を特徴としたルンバとはイメージを一新する。
すでに世界30カ国で発売されているブラーバは、元々米エボリューションロボティクスが開発販売していた「Mint(ミント)」をベースにしたものだ。2012年に同社を買収したアイロボットが、改良を加えブラーバとして市場に投入。2013年8月から販売を開始し、すでに世界30カ国で発売している。今回日本向けに投入するに当たって、ボディを白に改良。2014年7月4日、アイロボットストアで3万3000円で販売を開始した。量販店等での販売は今後直販サイトでの売れ行きを見ながら決めていくとしている。

日本でアイロボットの製品の総代理店を務めるセールス・オンデマンドの室崎肇社長は、「靴を脱ぐ文化のある日本では、床をきれいにしておきたいというニーズは世界に比して高い」と日本での販売に自信を見せる。掃除機同様の掃き掃除でロボット掃除機市場を牽引してきたアイロボットは、今度は拭き掃除機でさらに市場拡大をもくろむ。
ロボット掃除機市場はルンバの独占市場
アイロボットの国内における市場拡大はここ数年でめざましいものがある。シード・プランニングの調査によると、ロボット掃除機の2012年単年販売数38万台の内、28万台の73.6%がアイロボットの製品。この傾向は今後も続くとし、2012年比2.3倍強の90万台に達する2018年にも市場の約6割をアイロボットが握ると予測している。
国内の掃除機市場は、2005年から市場の縮小が続いていたものの2010年から微増しており、「これはロボット掃除機の伸びによるもの」(シード・プランニング)としている。
国内大手では、シャープ、東芝がロボット掃除機を販売しているが、いずれも数パーセントのシェアしか握れていない。今回、新機軸となる水拭き掃除機で完全にとどめを刺されたとも言える。
国内掃除機市場は海外勢に押されっぱなし
ロボット型に限らず、掃除機市場における海外メーカーの躍進ぶりはめざましい。例えば、サイクロン式掃除機。今では、市場の4分の1程度を担うサイクロン式掃除機もまた、英国のダイソンによって新規開拓された市場だ。現在、国内大手が追従する市場に大きく成長している。
皮肉なことに、ダイソンは日本の技術力が一役買った製品とも言われている。ダイソン創業者であるジェームズ・ダイソン氏のサイクロン掃除機を最初に販売したのは、ヨーロッパのメーカーではなく、日本のシルバー精工だった。その後、ダイソン氏は、日本での販売ライセンス料を元手に、1993年にダイソンを設立。今の飛躍へと結びついている。
ダイソンは、サイクロン式の市場を確立したとみるや、次々と新製品を市場に投入し続けている。最近では、2013年9月に発売した充電式のコードレススティック型が好調で、他社も続々と追従。さらなる新市場開拓に意欲を見せている。
韓国のレイコップが発売したハンディ型の布団クリーナーも同様だ。レイコップは、ハウスダストを始め、ふとんのダニを除去するハンディ型掃除機として、2012年2月より日本で本格的に販売開始。日本での販売台数はすでに累計150万台以上となっている。世界24カ国で発売し、累計300万台以上を販売しているレイコップだが、その半数近くの売り上げを日本が担っている計算になる。

GfK Japanの調査によると、2013年の掃除機市場は前年比9%増の877万台で4年連続のプラス成長となっているが、プラス成長を担っているのは、海外勢によって生み出された新機軸の製品群だ。それぞれ前年比でハンディ型が56%増、スティック型が22%増、ロボット型が27%増となっている。
一方で、従来のシリンダー型(車輪付きのタイプ)は、5%減で前年を下回っている。5%の微減に抑えられているのも、ダイソンによって産み落とされたサイクロン式の貢献によるところが大きいといえるだろう。
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