Gaming On Linuxによると、「Steam」での「Linux」の市場シェアは2025年に3%という高水準に達した。この数字は一見すると小さく感じられるかもしれないが、Linuxコミュニティーにとっては、ゲーム業界におけるLinuxの存在感が着実に高まっていることを示す重要な節目である。
このような低い数字を祝うことに違和感を覚える人もいるだろう。しかし、長年Linuxを取材してきた筆者にとって、かつて1%未満だった市場シェアが3%にまで伸びたことは、長く険しい道のりを経て得られた成果であり、感慨深いものがある。
筆者がLinuxを使い始めた当初、Linuxでプレーできるゲームといえば、「ソリティア」のようなごく限られたものしかなかった。その後、「Frozen Bubble」のようなゲームが登場し、Linux上でのゲーム体験が少しずつ広がっていった。さらに、「Wine」の登場によって、「Windows」向けゲームをLinuxで動かすという新たな可能性が開かれた。ただし、Wineによるゲームの動作は不安定で、完全に動作するものは少なく、多くは部分的な動作か、まったく起動しないものだった。
しかし現在では、Tom's Hardwareによると、Windows向けゲームの約90%がLinux上で動作するという。これは驚くべき進展であり、かつては想像もできなかったことである。
2003年に時計の針を戻すと、ValveがSteamというゲームプラットフォームをリリースした。年を追うごとに、ValveがLinuxでのゲーミングに真剣に取り組んでいることが明らかになっていった。Steamは、Linux上でWindowsゲームを容易に動作させる環境を整え、Linuxゲーミングの可能性を大きく広げた。
ただし、PC上のSteamには1つの課題がある。全ての人がPCでゲームをしたいわけではないという点だ。2024年時点では、PCでのゲームを好むユーザーは半数強に過ぎず、残りの多くは家庭用ゲーム機、いわゆるコンソールを好んでいる。筆者自身もPCではゲームをしない。仕事で使用するPCと娯楽の世界を分けておきたいという思いがあるからだ。
加えて、コンソールでのゲームの方が単純に扱いやすいという理由もある。これが、約半数のゲーマーがコンソールを選ぶ理由の1つでもある。
このような状況の中で、Linuxにとって朗報となるのが、Valveが2026年に発売を予定している新しいゲームコンソール「Steam Machine」の存在である。Steam MachineはLinuxと「KDE Plasma」デスクトップ環境をベースに動作し、あらゆる種類のゲームを簡単にプレーできるだけでなく、通常のPCとしても利用可能だ。これは、Linuxにとってゲーム業界における大きな転機となる可能性がある。
Steam Machineの登場により、2026年はLinuxにとって飛躍の年になると筆者は予測している。現在の3%という市場シェアは急速に拡大し、Linuxがゲーム分野で2桁のシェアを獲得する可能性も十分にある。それは同時に、Linuxの利用者数の増加にもつながるだろう。
仮にValveがSteam Machineを10万台販売した場合、それは10万人の新規Linuxユーザーが誕生することを意味する。人気が高まればその数はさらに増え、Linuxにとってかつてない好機となる。筆者は、Steam Machineの登場によって2026年がLinuxにとって歴史的な1年になると断言してもいいだろう。
この人気の高まりはSteam Machineにとどまらず、多くのユーザーがこの新しいデバイスを通じてLinuxのデスクトップ環境に触れることで、Linuxの強力さと使いやすさを実感することになるだろう。人々はLinuxの魅力に気づき、使えば使うほどその利便性に引かれていくはずだ。
つまり、Steam MachineはLinuxにとって奇跡のような存在である。筆者はこの新しいゲームコンソールを、オープンソースOSへの入り口と捕らえており、非常に肯定的な影響をもたらすと確信している。長年「Linuxの年」が来ると主張してきたが、ついに2026年こそが「Linuxの年」と言えるときが来たのかもしれない。
筆者自身、Steam Machineを購入する予定であり、テレビ画面でKDE Plasmaを目にする日を心待ちにしている。この次世代コンソールが即座に完売し、Linuxがあらゆるものを動かせることをValveに証明してくれることを願っている。
現時点では、Steam Machineの価格に関する情報は未確定であり、500~1000ドルの間になるとの見方もある。筆者は600~800ドルの範囲に落ち着くと予想しており、Valveは現行のゲームコンソールと競合できる価格設定を採用するだろう。
最後に、Linuxの力と柔軟性を理解し、それを生かしてくれたValveに深い感謝の意を表したい。
提供:Elyse Betters Picaro / ZDNET
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。


