The Guardianは10月8日(英国時間)、「Bank of England warns of growing risk that AI bubble could burst|Bank of England|The Guardian」において、イングランド銀行(Bank of England)がAIバブル崩壊のリスク増大を警告したと報じた。同銀行の金融政策委員会が「急激な市場調整の可能性が高まっている」と述べたという。

  • Bank of England warns of growing risk that AI bubble could burst|Bank of England|The Guardian

    Bank of England warns of growing risk that AI bubble could burst|Bank of England|The Guardian

AIバブル崩壊を警告

AI技術は大手企業を中心に導入が加速しており、世界各国でAIデータセンターの設立が相次ぐなど、市場規模は急激な拡大を続けている(参考:「Microsoftが最新のAIデータセンター発表、世界最速性能の巨大施設の全貌 | TECH+(テックプラス)」)。例えば、ChatGPTを提供しているOpenAIの企業価値は昨年の1,570億ドルから今月で5,000億ドルに上昇、Claudeを提供しているAnthropicは3月の600億ドルから先月までに1,700億ドルへ上昇した。

しかしながら、イングランド銀行の金融政策委員会は次のように述べ、市場の評価が実態を超える状況にあると指摘した。

「複数の指標から見て、株式市場の評価は過大に見える。特にAI(Artificial Intelligence)に注力するテクノロジー企業では顕著だ。この状況はAIの影響に関する期待が後退した場合、株式市場は大きな影響を受けることになる」

さらに同委員会は投資家がこの潜在的なリスクを考慮していないと付け加え、突然のバブル崩壊を警告。金融センターを有する英国では、金融システムに波及するリスクが甚大とみられている。

投資失敗の原因はAI技術ではない

この懸念はマサチューセッツ工科大学(MIT: Massachusetts Institute of Technology)の調査報告の影響を受けている可能性がある(参考:「AIバブルが弾ける? 計画の95%が失敗したとの報告 - MIT | TECH+(テックプラス)」)。

調査報告ではAIへの投資プログラムのうち95%が失敗に終わったと伝えているが、その原因はAIモデルの品質ではなく、AIを適切に扱えなかったプログラムにあると分析している。適切な評価に基づくプロジェクト設計を実施したプログラムは成功したことが報告されており、AI技術そのものは否定していない。

しかしながら、投資家視点から見ると95%の投資が失敗したことに変わりはなく、失望につながっている可能性がある。金融政策委員会は「現在高い水準にある将来の収益見通しの再評価を促す可能性がある」と述べ、失望が株式市場の急落につながるとの懸念を示している。

この流れに追い打ちをかける米国の動きについても次のようにリスクを伝えている。

「米国では連邦準備制度の独立性に関する議論が続いている。連邦準備制度の信頼性に対する認識が急激に、あるいは大幅に変化すれば、米国債市場を含む米ドル資産の急激な価格変動を招き、ボラティリティやリスクプレミアムの上昇、そして世界的な波及効果をもたらす可能性がある」

イングランド銀行の警告は、単なる市場分析にとどまらず、政策当局と投資家双方に対する行動指針を示したものといえる。AIの発展を社会全体の利益に結び付けるには、短期的な利益追求ではなく、長期的な安定を重視する姿勢が必要となる。金融関係者にはAIに対する冷静な評価と、成功に導く持続的な戦略立案が求められている。