プロダクトマネージャー(PdM)や企画職の現場では、個人のスキルや経験に依存する「属人化」が、事業の持続的な成長を妨げる大きな課題となっている。成功の再現性がなく、エース人材の異動や退職が事業停滞に直結するリスクを、多くの企業が抱えているのではないだろうか。

この課題を乗り越え、再現性のあるプロダクト意思決定プロセスをいかに構築するか。今回は、マイナビで全社横断のPdM組織を率いる堀江陽平氏と宮本相賢氏、そして開発組織支援のプロフェッショナルであるファインディの稲葉将一氏を迎え、鼎談を実施。属人化が引き起こすリアルな問題から、AIを活用した解決策、そしてその先に見えるPdMの未来像まで、プロダクト開発の変革を目指すすべてのビジネスパーソン必見の議論が交わされた。

インタビュイー

  • (写真)株式会社マイナビ堀江 陽平氏、宮本 相賢氏、ファインディ株式会社 稲葉 将一氏

    (左)株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 副統括本部長 宮本 相賢 氏
    (中央)株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 統括本部長 堀江 陽平 氏
    (右)ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室 室長 稲葉 将一 氏

なぜPdMの「属人化」は起きるのか? 事業成長を蝕む見えざる病

―まず、堀江さんと宮本さんの現在のミッションについてお聞かせください。

堀江氏:私と宮本が所属するデジタルテクノロジー戦略本部は、マイナビ全体のIT・WEBマーケティング領域を横断的に担う組織です。従来は事業部ごとに散在していたIT・WEBマーケティングのアセットや人材のサイロ化を解消し、市場のニーズに迅速かつ柔軟に対応していくことを目的に2022年10月に設立しています。

そして、同部門のなかで2024年10月、PdMが専門的に集まるプロダクトマネジメント統括本部が新設され、私と宮本でマネジメントをしています。

  • (写真)株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 統括本部長 堀江 陽平氏

    株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 統括本部長 堀江 陽平 氏

宮本氏:私は仕組みづくりや育成環境の整備を担当しつつ、HRサービスのプロダクト企画の進行にも携わっています。

―PdMや企画職が抱える課題について、組織を率いる立場からどう見ていらっしゃいますか?

堀江氏:正直に言えば、課題だらけですね(笑)。PdMはプロダクト開発の上流から下流まで関わるため、業務範囲が広く個人の成長にはつながりやすいのですが、裏を返せば個人事業主のようになりがちです。その個人の知識や経験、つまり「個の知」をいかにして「組織の知」に転換し、掛け算していくかが最大の課題です。

もっと直接的に言うと、個人にナレッジが集中するので、万が一その人が異動や退職をしたときの事業インパクトが非常に大きいというリスクがあります。定着率の高い健全な組織運営をすることは前提とはなりますが、仮に誰かが抜けても組織が停滞しない、成長し続けられる状態をどう作るか。これは職種の特性上、常に直面する課題です。

宮本氏:プレイヤー視点でも課題はあります。PdMは事業戦略からプロダクト戦略、開発戦略、マーケティングまで多くのタスクを担いますが、すべての領域を完璧に網羅できる人はいません。だからこそ誰か特定の人物に知見が偏ってしまう。

特に重要なのが、仕様書(PRD)に対する責任です。「この仕様で本当にユーザーに価値を届けられるのか?」という確信を求められますが、その根拠となるデータやヒアリング結果が個人のPCや頭の中にしかない、という状況は頻繁に起こります。

稲葉氏:よくわかります。我々のようなスタートアップでは、最初は代表が一人でプロダクトを見ていますが、組織が拡大するにつれて情報共有が不可欠になります。マイナビのような大企業では関係部門も多く、その複雑性は増すばかりですよね。PdMはそのハブとなりえますが、ハブが抜けたときの影響は、組織が大きいほどレバレッジが効いて深刻になります。

  • (写真)ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室 室長 稲葉 将一氏

    ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室 室長 稲葉 将一 氏

―そうした属人化しやすいともいえる状況によって、具体的にどのような問題が考えられますか?

堀江氏:やはり人が抜けたときに「これ、誰がわかるんだっけ?」という状態になること。そして、無意識に仕事ができる人に業務が集中し、その人が疲弊してしまうことが考えられます。属人化は個人の力量に依存した組織運営になってしまう可能性が高く、そうなってしまうと組織としてスケールしません。

稲葉氏:PdMは「ミニCEO」とも呼ばれるように、多くの情報を頭の中で構造化してアウトプットしています。特に経験豊富なシニア層はその能力に長けていますが、新しく加わったメンバーがそのレベルに達するには時間がかかります。

堀江氏:プロダクトマネジメントの現場では、いわば"職人"が育ちやすいですが、その技を「背中を見て覚えろ」というだけでは組織にスキルやナレッジが展開されない。先の人が1年かかったことを、次の人は3カ月でできるようにするのが組織の成長です。そのための仕組み化が急務だと感じています。

属人化から脱却し、「仕組み」と「文化」でアウトカムを最大化する

―属人化を解決するために、どのようなことが必要だとお考えですか?

宮本氏:うまくいっているプロダクトは、良質なPRDが積み重なっている。それがチームでできているんです。その基礎となるのが、タスクの標準化やフォーマットの統一化です。

ただ、「フォーマットを作ってください」と言ってすぐにできるものでもない。日頃からチームで競合分析をしたり、アイデアを出し合ったりする場が継続的にあり、それを文化として根付かせることが重要です。仕組みと文化はセットで考えなければならないですね。

  • (写真)株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 副統括本部長 宮本 相賢氏

    株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 プロダクトマネジメント統括本部 副統括本部長 宮本 相賢 氏

堀江氏:まさに文化づくりは組織運営の軸です。特にPdMは自分の成長に興味が強い職人気質な人が多い。自分の磨いた技を、強制されるのではなく「共有した方が組織にとって良いし、自分にとってもプラスだ」と自然に思えるような文化をどう醸成するかが、難しくも大切なポイントです。

稲葉氏:そこで1つのトピックになるのが生成AIの活用です。これまでのChatGPTのようなツールは、個人とAIの対話が中心で、優秀な人がさらに優秀になる"職人の深化"を加速させる側面がありました。これを一歩進め、生成AIのパワーを使いながら、組織全体の業務標準化やアウトプットの品質向上に踏み込んでいくことが、今まさに求められています。

AIが"エースの頭脳"を再現する、「Findy Insights」という解決策

―まさにそうした課題を解決するソリューションとして「Findy Insights」があると伺いました。

稲葉氏:Findy Insightsは、プロダクト開発における上流工程、いわゆる「ディスカバリー」のプロセスを支援するツールです。戦略設計から市場調査、PRD作成、優先度設計までの一連のワークフローをカバーし、AIエージェントが各タスクを支援します。

  • (スライド)Findy Insightsは、プロダクト開発における「ディスカバリー」のプロセスを支援できる

稲葉氏:これにより、業務プロセスとアウトプットの品質を標準化できます。我々がコンセプトの核に置いているのが、AI時代のナレッジマネジメントです。野中郁次郎氏が提唱した知識創造のフレームワーク「SECIモデル」をベースに、エース人材の頭の中にある暗黙知を、データとしてAIが分析できる形にし(共同化)、そこから意味のあるインサイトを抽出し(表出化)、次の施策に繋げていく(連結化)。このサイクルを回すことで、AI自身も学習し、より良いアウトプットを出せるようになります(内面化)。

  • (スライド)Findy Insightsのコンセプト

稲葉氏:いわば、"ミニCEOの頭の中"をプラットフォーム上で再現し、データドリブンな意思決定を再現性をもって実行できるようにする。それがFindy Insightsの提供する価値です。

堀江氏:説明をお聞きして、2つの観点で有用だと感じました。1つは、個人の力量に頼っていたプロセスを、ツールによって統一されたフローで実行できる点。もう1つは、生成AIの活用です。個人がそれぞれプロンプトを工夫する個別最適では、組織全体のアウトプット品質は揃いません。Findy Insightsのように標準機能として組み込まれていれば、その課題を解決できそうですね。

宮本氏:そもそも、このディスカバリーのプロセス自体が職人技とされ、タスクとして定義されていない現場も多い。Findy Insightsが「こういうタスクがあるんだよ」と型を示してくれることは、正しい進め方が一般化される第一歩になりますね。

AIはPdMの仕事を奪うのか? "職人"から"指揮者"へ進化する未来

―こうしたツールが普及すると、PdMの役割はどう変化していくと思われますか?

堀江氏:はじめは、これまで自分の技でやってきた職人気質のPdMから「自分の仕事の価値がなくなるのでは?」という疑問や抵抗が生まれるかもしれません。しかし、これはAI時代における大きな転換点です。これまで個人技だと思っていた部分が自動化されることで、人間はより本質的な価値、たとえばより複雑な戦略的意思決定や顧客との深い対話に集中できるようになるはずです。

宮本氏:そのとおりですね。PdMの究極の目的は「全領域の職人になること」ではなく、「お客さまに早く良いものを届ける」こと。そこに対して、AIというツールをどう使いこなすか、という視点が重要です。

堀江氏:市場におけるPdMの価値基準も変わるでしょうね。AIを使いこなし、より高い次元でアウトプットを出せる人が評価される時代になります。もしかすると、AIの支援があれば、一人のPdMが複数のプロダクトを横断して見れるようになるかもしれない。そうなれば、プロダクト間のシナジーを創出したり、個人のキャリアパスも格段に柔軟になります。これまで特定のフェーズが終われば転職していた人も、社内で多様な経験を積めるようになる。これは組織にとっても個人にとっても、非常にポジティブな未来です。

稲葉氏:素晴らしい視点ですね。AIによって仕事が奪われるというネガティブな文脈ではなく、PdMが担える領域が広がり、スキルやケイパビリティが向上するチャンスが増えるというのは、まさに我々が目指す世界です。

宮本氏:企画は、"意思の力"がなければ進みません。しかし、大企業では新しい挑戦が冷たい目で見られることもあります。Findy Insightsのようなツールは、意思ある企画者が、客観的なデータをもって周囲の理解を得ながら、力強く前に進むための武器になるのではないでしょうか。

稲葉氏:まさに我々のビジョンは「つくる人をもっとかがやかせる」ことです。イノベーションの起点となる企画者の方々を、我々のツールで少しでも支援していきたい。その想いは、宮本さんが仰ったことと強く共鳴します。つくる人がもっと活躍すれば、より良い世界になると信じています。

  • (写真)座談会中の風景

関連リンク

Findy Insights
https://jp.findy-team.io/lp/findyinsights/

ファインディ株式会社
https://findy.co.jp/

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