製品の原料調達や製造、流通などに伴う温室効果ガス排出量を徹底的に減らす低炭素製品の開発が活発化している。削減できない分を「カーボンクレジット」でオフセット(相殺)し、排出量を実質ゼロにしたカーボンニュートラル製品も現れた。こうした製品が、企業の競争力になりつつある。
その一因となっているのが規制だ。先行する欧州では、2023年8月に施行された「欧州電池規則」により、蓄電池のライフサイクル全体でのCO2排出量(カーボンフットプリント)の申告が義務付けられた。「デジタル製品パスポート」と呼ぶ制度が導入されれば、30年頃には幅広い製品でカーボンフットプリントの開示が必要になる。
対応を進めるためには、排出量の把握や削減が欠かせない。こうした動きは、部品や原料のサプライヤーなどにも伝播(でんぱ)し、品質・コスト・納期に並ぶ取引条件となる。結果として、これまで「企業単位」で脱炭素を進めてきた経営者が、今度は「製品単位」で脱炭素を実現する必要性を感じ取るようになっている。製品ごとに具体的な削減を進めるには、開発、調達、製造といった社内の各部門やサプライヤーの協力が欠かせない。従来、排出量の管理などはESG担当など限られた部署が携わる場合が多かったが、今後はコストなどと同様、各部門が深く理解し、製品の開発や製造に脱炭素の視点を取り入れていく必要があるだろう。サプライヤーにとっては、低炭素製品を作れることが大きな強みとなり得る。
一方で、「ウオッシュ(見せかけの環境対応)」に向けた批判にも注意しなければならない。削減しきれない排出量をオフセットすることについて、環境配慮製品との主張が過剰だとの意見も出ており、欧州を中心に厳しい視線が向けられている。クレジットを活用する場合は、排出量をできるだけ高い精度で算定したり、クレジットの種類や信頼性、自社事業との関係性などを明らかにしたりといった、より丁寧な説明が必要になる。

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1月8日発行の『日経ESG』の最新号(2024年2月号)では、注目を集める脱炭素・低炭素製品の事例からその「作り方」をひも解く特集記事「開発の壁を乗り越える5つの条件 脱炭素製品で競争力を磨け」を掲載しています。
米アップル初のカーボンニュートラル製品である「アップルウオッチ」やアシックスの低炭素スニーカー、住友商事が開発するグリーン鋼材採用のオフィスビルといった製品での取り組みを徹底解説。さらに、こうした製品の実現に欠かせないサプライヤーの対応、ウオッシュを避けるために必要なオフセットでの注意点などを、脱炭素製品を作るための5カ条としてまとめています。







