2025/3/6 に開催された IPA主催 Open Source Meetup「オープンソース戦略をオープンに議論する会」の参加レポートです。

最近話題のデジタル公共財(DPGs / Digital Public Goods)、デジタル公共インフラ(DPI / Digital Public Infrastructure)、OSSのトレンドを踏まえ、デジタル庁やIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の考えなどを垣間見みつつ、課題やこれから取り組むことが見えてきた非常に興味深いイベントでした。
イベント概要
資料はこちらです。
https://www.ipa.go.jp/event/2024/oe70p10000001qbk-att/open-source-meetup-agenda-slide001.pdf
サマリー / ハイライト
まずサマリー/ハイライトを記載します。セッションメモは下部にあります(雑文ですので興味ある方はご覧ください)
「これからはOSSに力をいれていくぞ」というIPAの意気込みが感じられたイベントでした。今後に期待です。
② OSSはソフトウェアに欠かせないもの ⇒ 企業や行政はフリーライドせず貢献すべき
- 全世界のソフトウェアのソースコードの中で60%以上がOSSであるという統計がある
- 「Software Is Eating the World」という言葉がある通り、ソフトウェア・OSSは世界になくてはならないものとなっている
その重要なOSSに対して企業や行政は何もしなくてもよいのか?
⇒ 当然、OSSに貢献する活動をすべき(ただし職員が行うOSS活動に対する評価をどうするのかという課題がある)
⇒ 行政が一番のフリーライダーではないか?
⇒ IPAも支援していく
ただし地方自治法238条の問題を解決しなくてはいけない(解釈次第ではあるが、現状ではOSSは行政財産となってしまい、無償で貸し付けたりすることが難しい) note.com
③ デジタル公共財(PDGs)、公共デジタルインフラ(PDI)は社会のインフラである
- 国連が定めた「グローバル・デジタル・コンパクト(GDC:Global Digital Compact)」には「5つの目的」があり、その中にデジタルインフラ相互運用性などの記載がある
- 日本の高度成長期がそうだったように、国の発展にはインフラの整備は欠かせない。PDGs、PDIはまさにこれからのインフラであり、整備をしていくことが重要
- 東京都、GovTech東京の動きには非常に期待している
GovTech東京とデジタル公共財についてはこちらをご覧ください。
所感
デジタル公共財(DPGs)、デジタル公共インフラ(DPI)、OSSへの重要性が高まり、IPA・デジタル庁も今後は力を入れていくという話がありつつ、企業や行政の貢献不足、OSS活動への評価・インセンティブの難しさ、地方自治法238条の問題をはじめとする制度上の課題などが話題にあがりました。
OSSや公共財を巡るエコシステムをどう形成していくのかが今後の課題となりそうです。私個人としても貢献できるよう模索していきます。
以下はセッションのメモです。乱筆乱文ご容赦ください。
パネルディスカッション第1部
インプットトーク・テーマ1:開発の加速のためのオープンソース
遠藤 雅人 氏(トヨタ自動車株式会社)
インプットトーク・テーマ2:組織の戦略的な意思決定
渡邊 歩 氏(株式会社日立ソリューションズ)
パネルディスカッション
古川 泰人 氏(株式会社MIERUNE)
遠藤 雅人 氏(トヨタ自動車株式会社)
渡邊 歩 氏(株式会社日立ソリューションズ)
平本 健二(独立行政法人情報処理推進機構)
モデレーター:今村 かずき(独立行政法人情報処理推進機構)

インプットトーク-1
- 「Opensource for ALL」の紹介
- OSSは非保障であり有象無象のリスクがある
- 企業として投資する必要があり、企業内のOSPOとして取り組んでいる
- 最近のトレンドとして、SBOM、OSPOの紹介
インプットトーク-2
- Global Spot インサイトレポートの紹介
パネルディスカッション
- OSSのフリーライド問題
- 企業がOSSを使う際に、事業化するまでの貢献を会社としてどう評価する?
- OSS活動、コミュニティ活動に関する評価は、論文や特許に関する活動に似ているのでは?
- 活動している時点で価値はわかりずらい
- 「やっていいんだよ」と思える風土を作ることが重要
- やったことある人とそうでない人で価値観の違いが出てしまうのが悩ましい
- コミュニティ活動でも同じことが言える
- 企業の外で活動することがその企業に価値還元されることを理解すること
- OSS活動をしている時間について、経営としてはどのように稼働管理している?
- 仕事としても個人としてもできるよう自由度を持っている
- 白黒ハッキリさせてしまうと休日に活動する場合に悩ましい
- 選べるようにしているのがよいのでは
- 休日の活動は個人活動として会社に報告する必要はないが、出張費などが必要であれば申請できるようにしておくのがよい
- 白黒ハッキリさせてしまうと休日に活動する場合に悩ましい
- そういう会社ばかりではないのが問題
- 仕事としても個人としてもできるよう自由度を持っている
- メンバーのインセンティブをどうしているか?
- 社内でアピールすることが1つ
- 内外へのアピールをすることは重要だが、どう関心を持ってもらうのかがOSPOの課題である
- OSS活動、コミュニティ活動に関する評価は、論文や特許に関する活動に似ているのでは?
- OSSへの貢献を会社のトレーニングとしてやると面白いのでは
- エンジニアだけではく、法務は経理などOSSを支える人を出すことは企業の貢献となるのではないか
- 「OSS推進企業」みたいな認定制度があると良い
パネルディスカッション第2部
インプットトーク・テーマ3:社会基盤としてのデジタル公共財
吉田 泰己 氏(デジタル庁)
土肥 真梨子 氏(株式会社日建設計総合研究所)
パネルディスカッション
関 治之 氏(一般社団法人コード・フォー・ジャパン)
吉田 泰己 氏(デジタル庁)
土肥 真梨子 氏(株式会社日建設計総合研究所)
平本 健二(独立行政法人情報処理推進機構)
モデレーター:今村 かずき(独立行政法人情報処理推進機構)

インプットトーク-3
- OSSを利用する、行政が作ったものをOSSにするという2パターンある
- 行政にはOSPOがない
- デジタル公共財(DPGs)、デジタル公共インフラ(DPI)
- エストニア:X-ROAD、インド:MOSIP(フィリピンなどで活用されている)、韓国:e-goverment framework、シンガポール
- 海外でどのようなOSSが展開されているのか注目する必要がある
- データ標準などが使われないという課題
- Project LINKS(国交省)の紹介
パネルディスカッション
- 地方自治法238条の問題
- https://note.com/hal_sk/n/nd992ea322c78
- 解釈次第ではあるが、現状ではOSSは行政財産となってしまい、無償で貸し付けたりすることが難しい
- ルールのオープン化
- WEBサイト、API、データ、制度の記述などを標準化していく
- ルールが揃うともっとアクティブになるのではという期待がある
- 政府内でOSSの話をすると。。。
- セキュリティ、保守性などの懸念がでる
- どう理解してもらうかが難しい
- デジタル庁ができたことで内製ができるようになってきたが、OSSをどう扱うのかを真面目に考える時期にきていると感じる
- 日本ではDPGsがない?
- 国連が定めた「グローバル・デジタル・コンパクト(GDC:Global Digital Compact)」には「5つの目的」があり、その中にデジタルインフラ相互運用性などの記載がある。
- 国の発展のためにはインフラとしてのDPI、DPGsを整備しなくてはいけない
- エストニアなどはデジタルインフラがしっかりあるから発展しているのでは
- 日本の高度成長期も同じ
- 道路や鉄道などを整備が発展を支えた
- OSSの利用は計測可能なはず、利用数に応じて資金配分するような仕組みがあるとよいのでは
- 資金還元や正当な評価につながるのであれば自治体ものってくるかもしれない