【おたからやフランチャイズ特集】 渡辺喜久男会長 x 加盟店オーナー対談 「FC経営の心構え」

買い取り専門店「おたからや」を全国1,350店舗(2025年4月時点)で展開する株式会社いーふらん。2024年6月期に年間売上840億円を達成した同社は、「1兆円企業」への成長を加速させるべく、法人を対象としたフランチャイズ(FC)加盟店募集再開に踏み切る。いーふらんの渡辺喜久男会長と、創業5年目で年間売り上げ50億円達成を見込んでいる株式会社アンビションの塚本拓夢オーナーに、FC経営の心構えを聞いた。

「信頼を得て買い取る」に共感

――塚本オーナーは2020年からおたからやに加盟されました。経緯を教えてください。

塚本拓夢オーナー

塚本オーナー:実家が中古車販売業で、その営業マンとして約6年間勤めた後、「自分で何かをやってやろう」と創業を決意しました。当初受けられた創業融資は1,000万円程度で、限られた資金で経営を始められ、営業のスキルが生かせる業態を模索しました。そこで注目したのが、投資回収が早くできる買い取り業態のFCです。

数多くある買い取り専門店のフランチャイズの中からおたからやを選んだ理由は、店舗数全国トップというブランド力に加えて、価値観に共鳴したためです。説明してくれた担当者が「高い金額を提示するだけでなく、お客様の信頼を得て買い取るのが当社のブランドです」と話してくれて、感銘を受けました。

――本部のサポートはいかがでしたか。

渡辺喜久男会長

塚本オーナー:買い取り業については右も左もわからなかったので、当初はしつこいくらいに本部に価格相談の電話をしました。商品知識はもちろん、チラシの構成や接客方法など、一から十まで教わりました。あのサポートがなければ今はないと思っています。成功している直営店の仕組みを、素直に受け入れることに専念しました。

渡辺会長:加盟店が熱心に問い合わせてくれるのは、当社としてもうれしいです。とにかく参入しやすく、続けやすいのが買い取り業態の特徴であり、これは商売をするうえで大事なことです。金の相場が当社の創業時から跳ね上がっているように、続けていれば商いは自然と大きくなる流れにありますからね。

――最も苦労した時期はいつでしょうか。

塚本オーナー:創業当初が一番苦しかったですね。親元を離れて一人で始めたことはもちろん、コロナ禍と結婚出産も一度に重なり、公私ともに忙しかった。なかでも資金繰りには苦労しました。買い取った商品を競合に売ってお金を作ったり、友達にお金を借りたりもしました。

――その苦労を経て、業績はどのように推移しているでしょうか。

塚本オーナー:創業した2020年の売上高が2億円で、当時3店舗でした。それから2期目が5億円、3期目が8億円…と、倍、倍のペースで成長しています。5期目の現在は50億円で着地見込みであり、6期目は100億円を目指しています。

渡辺会長:すごいですね。事業規模が大きくなると、人や資金など、乗り越えなければいけない問題が必ず浮上するものですが、塚本オーナーは軽々と乗り越えているんですね。ひとえに会社を運営する能力が高いのだと思います。アンビションの株を買いたいくらいです(笑)。

撤退ゼロの理由は「上手くいくまで続ける」

――店舗の撤退はいままでゼロとのことですが、物件選びのポイントはありますか。

塚本オーナー:「半径5kmに人口15~25万人規模」が理想の商圏と考えています。それに平均年収、レジ通過数などの統計をチェックし、あとは物件を見ることです。私は全ての物件を見ていて、「ここはいける」という直感を信じてやっています。ただ正直なところ、あまりに相場がいいこともあり、「どんな商圏でも、やり方次第では戦えるのではないか」と思ってしまっている節もあります。

渡辺会長:すばらしい。「勝ち癖」がついていますね。

――撤退ゼロを実現できる秘訣はあるのでしょうか。

塚本オーナー:「上手くいくまでやり続けること」です。仮に最初の数か月がダメだったとしても、1~2km先には5~10年続いている買い取り専門店が必ずあります。そこで「なぜうちが勝てないのか」を考えて、試行錯誤していくうちに良くなっていくことが多いです。

そのように考えるのは、「負けず嫌い」な自分の性格も大きいと思います。「他の誰かがうまくいくのに、自分の店がうまくいかない」という状況に納得できないんです。それが競合から学び、吸収する原動力になっているのかもしれません。

――店舗は全国に展開していますが、人材の面で工夫はありますか?

塚本オーナー:現地採用に依存しないことです。北陸から九州に進出した時に経験しましたが、現地採用だけだと意思疎通がうまく取れず、会社の方向性に対する目線が合わないんです。きちんと出張・転勤をしてもらい人材の交流を図る必要があります。

渡辺会長:他県に出るのはなかなか大変なことですが、塚本オーナーはそれを非常に短い時間の中で成し遂げていると思います。本部ですら、神奈川や東京からなかなか出られなかったので、すごいことです。

――国内市場は競争が激化していますが、勝ち抜くために大事にしていることはありますか。

塚本オーナー:お客様目線で「どんな対応であれば『売ろう』と思えるか」を突き詰めて考えています。店舗の清潔感やスタッフの身だしなみ、対応といったところが、基本的ですが大事なのではないでしょうか。あとは費用対効果の高い宣伝と、特定地域に集中して出店するドミナント戦略で足場固めを意識しています。

渡辺会長:競合対策は、まさに相手の考え次第ですから、意に介さないと割り切った方がよいと思いますね。自分の会社のことに集中し、もっと「自分が先んじていこう」という意識を持つことが、最大の競合対策になるのではないかと思います。

――買い取り業の今後の需要は、どのように見通されていますか。

塚本オーナー:今後も高まっていくと思いますね。バブル景気の恩恵を最も受けていた世代が、老後を迎えつつあるためです。景気も低調ですし、持ち物を現金化する窓口のニーズも下がらないでしょう。そのぶん競争は激化すると思いますが、今後10年は確実に伸びるという前提で、増店などを考えています。

経営の要は「勢い」

――競争が激化するなか、FC経営が成功するかどうかの分かれ目はどこにあるのでしょうか。

塚本オーナー:そもそも買い取り業というものは、滅多にないくらいキャッシュフローがよく、リスクの少ないビジネスだと思います。ただ、他力本願になったらいけませんね。「有名店の看板をつけたら、勝手に儲かるのではないか」という考えは通用しないと思います。

僕が買い取り専門店を始めたときは、本部の言うことはすべて忠実に実行しました。試行錯誤するのは、その後からでいいんです。私の同期にも大勢の加盟店オーナーがいましたが、撤退する人は「言われたとおりにやる」ことができていないケースが多い印象を受けます。

渡辺会長:塚本オーナーのように物事を「自責」に考えることは私自身も大切にしています。壁にぶつかった時に「自分にどこか問題があるんじゃないか」という考えを持てないと、先に進むことはできません。昨今は本部からのバックアップも充実させています。自責の考えを持ち、本部のサポートを活用してもらえれば、チャンスは大きいと思っています。

塚本オーナー:せっかくなので私からもうかがいたいのですが、1兆円企業を目指すなかで渡辺会長が大切にしていることは何ですか。

渡辺会長:孫子の兵法に「善く戦うものは、これを勢に求めて人に責めず」という言葉があります。リーダーにとって「勢い」が最も大事だという趣旨ですね。勢いがあれば、人は自然と頑張ってくれる。私が経営で一番大切なことだと思っているのも、この勢いです。

いーふらんは社員数2,000人という自分でも経験のない規模になっていますが、そこでも大事なのはトップが勢いを示していくことだと考えています。

――塚本オーナーにも、今後の展望をおうかがいします。

塚本オーナー:2、3年前から、2025年度の売上高100億円を目指して動いています。それを達成できる見込みと覚悟は、社員一同持っています。「100億を作ろう」という思いで一致しているので、当面はそれが最大の目標です。

渡辺会長:「100億」って塚本オーナーが言うと簡単に聞こえますけど、私はそこに至るまでに相当な時間がかかった記憶があります。塚本オーナーはまさに「勢い」を持って会社を伸ばしていますね。塚本オーナーにもアンビションにも大きな可能性を感じているので、おたからやと一緒にもっともっと成長してもらいたいです。