投降したウクライナ兵を射殺したロシア兵に終身刑、捕虜殺害めぐり初の宣告

黒く短い髪に黒いジャンパーを着た被告が、腕を組んでうつむきながらガラス張りの告人席に立っている。ウクライナの警備員がそばにいる
画像説明, 終身刑が言い渡されたドミトリー・クラショフ被告

ウクライナの裁判所は6日、ウクライナ兵の捕虜を殺害した罪に問われたロシア兵の被告に終身刑を言い渡した。ウクライナの捕虜殺害で刑が宣告されたのは初めてとされる。

ドミトリー・クラショフ被告(27)は、2024年に、投降したウクライナのベテラン兵ヴィタリイ・ホドニウク氏(41)を射殺した罪で有罪とされた。

ウクライナの国家警察は、「専門家の報告書、目撃者の証言、現場の映像から、このロシア兵が、ウクライナ兵を捕虜にするなという指揮官の命令を受け、戦争捕虜を故意に殺害したことが確認された」とした。

数カ月にわたった裁判では、2024年1月6日の朝にクラショフ被告の部隊が、ウクライナ南部ザポリッジャ州の同国軍陣地を襲撃した経緯が明らかにされた。

検察は被告について、ホドニウク氏が武器を持たずに塹壕(ざんごう)からはい出て投降したにもかかわらず、至近距離から自動小銃AK-47で数発撃ち、戦争法に違反したと主張した。

被告がいたロシア部隊はのちに、ウクライナ軍に制圧され、被告らは捕虜とされた。

被告は当初、有罪を認めたが、その後に撤回。ホドニウク氏を射殺したのはロシアの衛生兵(のちに死亡)だと主張した。

しかし、被告と同じ部隊にいて後に捕らえられたロシア兵3人が、これを否定する証言をした。3人は全員、射殺の瞬間は爆発があったため目撃しなかったが、銃声がしたとき被告以外には誰もいなかったと述べた。うち1人は、被告が告発した衛生兵について、射殺現場にはいなかったとした。

被告自身は裁判で証言しなかった。裁判を取材した記者らによると、被告の弁護士アンナ・カルペンコ氏は、被告が「心から悔いて」おり、上官の命令に従っただけだと信じていると述べた。

刑務所から戦場に行ったと被告

検察は裁判で、最も厳しい量刑を求めた。ニキータ・マネフスキー検事は被告について、「少しも反省していない」、「まったく無関心だ」としていた。

被告は今年、BBCの取材に応じていた。その時には、ロシアの辺境の刑務所で窃盗の罪で服役していたが、早期釈放と引き換えに、ロシア軍の突撃部隊ストームVに参加したと話していた。ロシア軍関係者は囚人らに対し、軍に入隊してウクライナに行けば刑期は免除されると言っていたという。

ウクライナ国防省情報総局(HUR)は5月、ロシアが2022年にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、戦場でのロシア兵による捕虜の処刑を150件以上記録していると発表した。

ウクライナ検事総局の戦争部門の責任者は昨年のBBCの取材で、ロシア軍による捕虜の処刑は広い地域で行われているとし、「方針となっていることは明らかだ」とBBCに話した。

ウクライナ軍もロシア兵捕虜を処刑したと非難されているが、その件数ははるかに少ない。