イスラエル、兵士1人の遺体を受け取る 2014年にハマスが待ち伏せ攻撃で殺害

白いシャツを着た男性が笑顔でカメラを見ている

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画像説明, イスラエル国防軍の兵士ハダル・ゴルディン氏は2014年にガザで殺害された

イスラエルは9日、2014年にイスラム組織ハマスの待ち伏せ攻撃で殺害されたイスラエル国防軍(IDF)のハダル・ゴルディン中尉の遺体を受け取ったと明らかにした。遺体はパレスチナ・ガザ地区に残されたままだった。

イスラエル軍によると、返還された遺体の身元が、死亡時23歳だったゴルディン中尉だと正式に確認された。遺体は今後、埋葬されるという。ゴルディン氏は両親、姉、2人の兄弟、そして婚約者を残して亡くなった。

ハマスの軍事部門は9日、先月10日に始まったイスラエルとのガザ停戦合意の一環としてゴルディン中尉の遺体を引き渡すとしていた。

ハマスはこれまでに、停戦合意の第1段階のもと、人質の生存者20人と、死者28人のうち24人の遺体を返還している。

ゴルディン氏の父シムハ・ゴルディン氏は9日に声明で、「勝利とは、人質を祖国に連れ戻し、兵士をイスラエルに連れ戻すことだ」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とイツハク・ヘルツォグ大統領はこの11年間、それぞれの執務室にゴルディン中尉の写真を飾り続けてきたという。

ネタニヤフ氏は、ゴルディン氏を連れ戻すことを「諦めなかった」と述べた。

「私は彼の家族が経験してきた苦しみを知っている。彼の帰還を望む気持ちがイスラエル国民を一つにしたことも分かっている。そして今日我々は、彼を両親のもとへ、家族のもとへ、そしてイスラエルの墓へ連れ戻すことで団結している」

IDFは、ゴルディン氏を取り戻す取り組みについて、2年におよぶハマスとの戦争を含むこの10年間、「現地での作戦活動と並行して広範な情報活動を行ってきた」と説明した。

そして、「遺族に深い哀悼の意を表する。死亡したすべての人質の帰還に向けてあらゆる努力を継続するとともに、合意の継続的履行に備えている」とした。

ヘルツォグ大統領は、政府はすべての人質を国に連れ戻すために「絶え間なく行動し続ける」と述べた。

ガザに残る死亡した人質4 人のうち3人はイスラエル人で、1人はタイ人。

赤十字のロゴがついた白い車2台が、破壊された建物やがれきが残るガザを移動している

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画像説明, 人質の遺体を運ぶ赤十字の車両(9日、ガザ)

2014年の攻撃

ゴルディン氏はイスラエル中部クファル・サバ出身。停戦合意後、死亡した人質の返還が進められているが、2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部攻撃以前に殺害され、遺体がガザに残されたままだった人質は、ゴルディン氏だけだった。

ゴルディン氏は2014年8月1日、当時交戦状態にあったイスラエルとハマスの停戦が発効して間もなく攻撃され死亡した。ゴルディン氏を含むイスラエル兵の一団は、ガザ南部ラファ近郊の農業地帯を巡回していたところをハマス戦闘員に襲撃された。

IDFは、ゴルディン氏とほかに2人の兵士が銃撃戦で死亡し、ゴルディン氏の遺体がハマス戦闘員によってガザの地下トンネルに運び込まれたと判断した。

IDFはハマスがゴルディン氏を人質にするのを阻止しようと、大規模な火力を投入した。ラファへの爆撃は4日間続いた。ゴルディン氏の死亡が宣告された後も継続され、パレスチナ人の民間人が多数犠牲となった。

停戦合意の履行は

9年後、IDFは2023年10月7日のハマスによる攻撃への報復として、ガザで作戦を開始した。ハマス主導の武装集団はイスラエル南部を攻撃した際、約1200人を殺害し、251人を人質に取った。

以来、ガザでは少なくとも6万9176人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健省は報告している。この数字を、国連は信用できるものとみなしている。

アメリカが仲介した、現在の停戦合意の第1段階では、イスラエルは国内の刑務所で収監していたパレスチナ人の囚人250人と、ガザ地区で拘束した1718人を釈放した。

ゴルディン氏の遺体の返還に先だち、イスラエルはハマスが引き渡したイスラエル人の人質20人の遺体と外国人の人質3人(タイ人1人、ネパール人1人、タンザニア人1人)の遺体との交換で、パレスチナ人300 人の遺体を引き渡した。

イスラエルとハマスはこのほか、ガザ地区への支援拡大、イスラエル軍の部分的撤退、戦闘停止にも合意したものの、双方が相手の合意違反を非難し合う中で暴力が再燃している。

ガザでは8日、IDFの銃撃でパレスチナ人2人が殺害された。2人がイスラエルの支配地域を示す境界線「イエローライン」を越え、「差し迫った脅威」をもたらしたと、IDFは説明した。

この日はガザの別の場所でも、IDFの銃撃でパレスチナ人1人が殺害され、1人が負傷した。現地の医療関係者とIDFが発表した。

ガザの医療関係者によると、銃撃はガザ中部のブレイジ難民キャンプの東側で起きた。ハマスが運営する民間防衛隊は、南部ハンユニスでIDFに銃撃されたパレスチナ人1人が負傷したと述べた。

ハマス運営のガザ保健省は、停戦発効後に少なくとも241人がIDFの軍事行動で殺害されているとしている。