宮城県知事、イスラム教徒ら念頭の「土葬」墓地整備を白紙撤回…市町村から同意得られず断念
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宮城県の村井知事は18日、イスラム教徒らの埋葬を念頭に県が検討していた土葬墓地の整備について、白紙撤回すると表明した。整備の権限を持つ市町村から「住民の理解が得られない」として同意を得られず、実現困難と判断した。検討表面化から1年、賛否渦巻く中でも知事は整備に強い意欲を示していたが、断念に追い込まれた。
設置権限移譲
「最終的な許可権限を持つ市町村長の意見をふまえると、実現をすることは極めて厳しい。熟慮した上で土葬墓地の検討自体を撤回する」。9月定例会の本会議で、村井知事は険しい表情でこう述べ、今後も検討しないと強調した。菊地恵一県議(自由民主党・県民会議)の一般質問に答えた。

墓地埋葬法では、墓地の設置権限を市は首長が、町村は知事が保有する。ただ、県は1987年までに町村に権限を移しており、整備のためには市町村長の許可が必要となる。
村井知事によると、13~17日に県内の市町村長に土葬墓地を整備する可能性があるかを電話で確認したところ、「受け入れはできない」と拒否されたという。
ニーズ見据え
土葬墓地の検討が表面化したのは昨年10月だった。宗教上の理由で土葬を望むイスラム教徒らの埋葬を念頭に、村井知事が県議会9月定例会で土葬墓地の整備に向けた調査や検討を行うと表明。さらに昨年12月の記者会見で「批判があってもやらなければならない」と並々ならぬ意欲をみせた。

県によると、土葬ができる墓地は全国に約10か所あるが、東北地方にはない。労働力不足などを補うため、県は外国人材の受け入れを進めており、今後土葬へのニーズが増えることを見据えた対応だった。
だが、県民などから環境への影響や県産品への風評被害を不安視する声も多く上がった。昨年12月から今年8月末までに寄せられた苦情や問い合わせは計1918件に上った。
争点化回避か
知事選(10月9日告示、同26日投開票)に6選を目指して立候補を表明している村井知事にとって、選挙戦で争点になることを避ける思惑があるとの見方もある。別の候補予定者が土葬墓地に反対し、村井知事は公約に掲げない考えを示していた。
報道陣の取材に、村井知事は「この問題は選挙で県民に信を問う段階にまだ来ていない。たまたま選挙が近くなったというだけだ」と説明するが、県議の間では「撤回がこの時期だから、知事選の争点化を避ける狙いがあるのではないか」という声も出ている。
土葬墓地の整備を求めてきた「宮城イスラム国際共同霊園をつくる会」のソヨド・アブドゥル・ファッタ共同代表(54)は「土葬墓地が必要だとの思いは変わらないので、ムスリムへの理解を深めてもらえるように交流していきたい」と話した。
在日ムスリムに詳しい店田広文・早大名誉教授(社会学)は「日本は、外国人を受け入れないと社会が立ち行かなくなっている。土葬可能な霊園の整備など、国が対応を考えるべき時期になっている」と指摘している。




























