「1時間・2杯」で避難所のタブー打ち破った「居酒屋」復活へ…店名は同じ「語ろう亭」、今度は制限なし

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 能登半島地震の避難所に毎晩1時間限定でオープンし、被災者らが励まし合った「居酒屋」が10日、石川県七尾市田鶴浜町の交流施設に復活する。店名は当時と同じ「語ろう亭」。店主の原島 敬之ひろゆき さん(64)は「料理を囲み、我が家のように過ごしてほしい」と準備を進めている。(高野珠生)

開店準備を進める原島さん(右)と滝音さん(石川県七尾市で)=桐山弘太撮影
開店準備を進める原島さん(右)と滝音さん(石川県七尾市で)=桐山弘太撮影

 「久しぶりに着たわ」

 古民家を改修した交流施設で10月下旬、地震後初めてという白衣の着用に、滝音光臣さん(57)が照れ笑いした。近くですし店を営んでいたが、地震で店舗を失い、客の前に立つことはないと思っていた。

 原島さんに誘われたものの、滝音さんは「父の介護がある」と乗り気ではなかった。だが、いつの間にか包丁を研ぐ自分がいた。何を作ろうかと考える時間も悪くなかった。「気楽にやれるなら」と滝音さんがつぶやくと、原島さんが「みんなが待っていますよ」と背中を押した。

 被災時、原島さんはバスケットボール・Bリーグ3部「金沢 武士団サムライズ 」のアドバイザーを務めていた。練習拠点としていた縁で、地震翌日から、最大約500人が身を寄せた田鶴浜体育館で炊き出しを始めた。

 10日近くたつと、ビールの空き缶が駐車場のゴミ箱に山積みになった。「晩酌が罪のようになっている。堂々と酒を飲み、いっときでも解放感を味わってほしい」。会議室の机に支援物資で作ったお好み焼き、磯辺揚げなどのつまみを並べた。「1時間限定2杯まで」のルールで語ろう亭を開店。お年寄り、赤ちゃん連れの避難者らが会話を弾ませた。避難所のタブーだった酒が、「みんなを家族のようにつないでくれた」。

 3か月ほどで避難所が閉鎖され、住民が仮設住宅や親戚宅などへ散り散りになると、店の再開を望む声も寄せられるようになった。原島さんは東京で居酒屋を営んだ経験から自身も調理するが、主役は地元の飲食店主や住民が作る料理。「ここで料理することを生きがいに、少しでも前向きに」との思いからだ。各家庭の煮物やギョーザなどのメニューを考えている。

 もう1時間限定2杯までの決まりはない。「この町や自分たちの未来のこと、先を見通せない不安な気持ちも、全部持ち寄って語らいましょう」と呼びかける。

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