2012年8月17日、NVIDIAはKepler世代のハイミドルクラスGPU「GeForce GTX 660 Ti」(以下、GTX660Ti)を発表した。
フルHDゲームのためのGPUとして設計された先代のGTX560Tiはコストパフォーマンスの高さで一躍定番ビデオカードとなったが、AMDがRadeon HD 7850/7870をリリースして以来、Fermi世代ゆえのワットパフォーマンスの悪さが目立つようになってしまった。GTX660Tiの登場で、ようやく手ごろでワットパフォーマンスの高いハイミドルクラスのGeForceが利用可能になったのだ。
NVIDIAからすれば、ぽっかり大きく空いてしまったGeForce GTX 670(以下、GTX670)とGeForce GTX 560 Ti(以下、GTX560Ti)の性能ギャップを埋め、そこに根を下ろしてしまったRadeon HD 7850~7870にようやく対抗できるようになる。
発表と同時に各社からGTX660Tiを搭載したビデオカードが発売されるが、GTX560Tiの発売時と同様に、リファレンスデザイン準拠の定格クロックモデルよりも、オーバークロックモデルのほうがラインナップの大半を占めるという事態が予想される。そこで今回は、リファレンスデザインのビデオカードではなく、あえてGIGABYTE製のオーバークロック版「GV-N66TOC-2GD」を使って、GTX660Tiのパフォーマンスをチェックしてみたい。
まず手始めに、GTX660Tiの概要からチェックしていこう。まずはNVIDIAの資料によるスペックから見ていきたい。GTX670と非常によく似ているが、メモリーバス幅が狭くなり、ROPも減っていることがわかる。なお、GTX660Ti/670のTDPはPower Target最大設定時の値だ。
| GPU比較 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| GPU | GeForce GTX 670 | GeForce GTX 660 Ti | GeForce GTX 560 Ti | Radeon HD 7970 | |
| ストリーミング プロセッサー数 |
1344基 | 1344基 | 384基 | 2048基 | |
| コアクロック | 915MHz | 915MHz | 822MHz | 925MHz | |
| ブーストクロック | 980MHz | 980MHz | - | - | |
| メモリー転送レート(相当) | 6008MHz | 6008MHz | 4000MHz | 5500MHz | |
| メモリー種別 | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 | |
| メモリー容量 | 2GB | 2GB | 1GB | 3GB | |
| メモリーバス幅 | 256bit | 192bit | 128bit | 384bit | |
| PCIe電源タイプ | 6ピン×2 | 6ピン×2 | 6ピン×2 | 8ピン+6ピン | |
| 消費電力 | 170W | 165W | 170W | 250W | |
GTX660Tiを語る上での核心部分となるのが、SP数やコア/メモリークロックの仕様は完全にGTX670と同じなのに対し、メモリーバス幅が256bitから192bitへ減少、ROPも32から24へ減っている。
Keplerアーキテクチャでは、GTX680/670のメモリーコントローラーは全部で4基あり、1基あたり64bitの幅を持っている。またGPUが計算した映像をビデオメモリーへ書き込むROPは、8基が1グループでメモリーコントローラーと1対1で設置される。つまりGTX670からメモリーコントローラー1基と隣接ROP1グループ分をざっくりと削ったものがGTX660Ti、ということになる。SP数を減らすよりメモリーにボトルネックを作り、そこで性能を絞っているというわけだ。
動作クロックに関しては一応リファレンス的な数値は定められているが、実際は多様なオーバークロック設定で出荷することが前提のようだ。Keplerアーキテクチャーなので、発熱量などに余裕のある時にオーバークロックを行なう「GPU Boost」にも対応している。
今回テストした「GV-N66TOC-2GD」では、コア1033MHz、ブーストクロックの目標値は1111MHz。様々なメーカーの製品リリース情報を総合すると、オーバークロック版は1011~1033MHzの設定になっているものが多い(ちなみに最大はASUSTeKのDirectCU II搭載モデルの1072MHz)つまり、この製品のコアクロックは“ややキツめ”に設定されているようだ。
GPUスペック以外のGTX660Tiの特徴としては、ショート基板も可能になっていることや、1枚で3画面サラウンド機能に対応していること、SLIブリッジコネクターを2基備えるため、最高3-Way SLIまで構築可能な点が挙げられる。GTX670の設計をそのまま流用しているので、むしろ当然といえる。TDPも5Wしか下がっていないため、補助電源コネクターは6ピン×2の構成になっている。

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