働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今回の連載は、「家庭もキャリアも諦めたくない」という30代男性の葛藤について。
第二子の誕生を機に、これまで当たり前だった「残業前提、土日も企画や資料づくり」といった働き方を見直さざるを得なくなった男性からの相談です。
家庭と仕事、どちらも大切だからこそ板挟みになるこのテーマ。
限られた時間の中で評価を得るにはどうすればよいのか、一緒に考えていきます。
残業も自由研究もやめて、と言われて
はじめまして。30代、企画職の男性です。
第二子が生まれたことをきっかけに、妻から「残業前提で、土日も企画を考えたり資料を作ったりする働き方はやめてほしい」と言われています。
このままでは家庭が立ち行かなくなるのは、頭ではわかっています。
ただ、自分としてはキャリアを緩めたくないし、会社で評価されたい気持ちも強いです。
企画職は日々の試行錯誤や準備の積み重ねが成果に直結する部分があり、そこを削れば確実に差が出るとも感じています。
一方で、夜泣き対応で寝不足が続き、以前のように突っ走るのは現実的に厳しい状況です。
家庭を優先するか、仕事を優先するか──その二択ではなく、両立させる方法を探したいと思っています。
どうすれば両立しながらも評価される働き方を見つけられるのでしょうか。
正能さんならどう考えますか?また、周囲の同じような立場の方はどう工夫しているのかも知りたいです。
(30歳、企画職)
目指すは8割。いつかに繋げる。
お便りをありがとうございます。
夜泣き対応で2時間しか眠れないまま朝イチの会議に出る。そんな日が続けば、正直100%の力を出すのは難しいですよね。相談者さんの「でも評価はされたい」という気持ちも痛いほど分かります。
私自身、産後3ヶ月で復職したときは「このタイミングで復職するなら、評価されるやり方じゃなきゃ意味がない」と産前と同じ温度感で仕事に臨んでいました。
良くも悪くも、前と同じように評価されることを諦めていなかったんです。
その頃は体力も気力もまだ残っていて、何とか走り切れていました。
けれど、子どもが1歳を過ぎてから状況は一変。
ねんトレはどこへやら、夜にまったく寝なくなり、朝は4時台に起きる。
めまいで「これは倒れるかも」と思ったことも一度や二度ではありません。
その中で希少疾患にもかかり、体調を崩した時に学んだのは、完璧を目指すのではなく「今は8割で走る」と割り切ることでした。
ただし、手は抜かない。
8割を積み上げ、子が少し寝るようになった時に本気を出せるよう素地を整えておくイメージです。“いつかのチャンスに繋げる”ことが何より大切だと感じています。
評価軸を握り、“これができればOK”を決める
子育てをしながら働いていると、「あれもこれも前みたいにいかない」という感覚にさいなまれることがありますよね。
人生全体では本当によくやっているはずなのに、それぞれの項目では満点が取れず、プロセスにも納得がいかず、「結局どこで価値発揮できているんだろう」と不安になる。
私自身、復職直後は3時間ごとの授乳に追われ、1日という単位が脳内から消えた1年間がありました。
この時期は週や月の感覚もあやふやで、すべてが「3時間のブロック」にしか見えない。
結果として、仕事のマイルストーンがイマイチつかめなくなっていたんです。
そこで始めたのが、かなり細かい粒度での自分のための目標設定でした。
テキストに書き出して「この週でここまで」「その積み上げで、今月はここまで」と小さな到達点を握る。
書き出すことで「ここまでは確かに進んだ」と可視化でき、「これがこれくらい間に合っていない」と漠然とした不安を、タスクに分割できる感覚がありました。
次の週は、拾い損ねたタスクも含めて“ここだけは外さない”を決める。
そのゴールに向けて限られた力を集中させるイメージです。
相談者さんもまずは週単位、さらに細かくするなら水・金曜日ごとに“ここまでできればOK”を握ってみると、できたこと・できていないことがクリアになり、不安も少し軽くなるはずです。
思考の伴走者に、AIを置く。
目標を細かく設定したはいいけれど、それを達成するまでの時間が足りない。そもそも、どう動くかを考えるのに時間がかかる。
そんな瞬間もありますよね。寝不足で頭が働かないと、考えるプロセスそのものに時間がかかってしまう。
そこで私は「考えを言葉にする伴走者」としてAIを使っています。
とりとめのない思考を「ここまで進めたい。論点とプロセスを整理して」と投げてみる。すると「論点はこれで、達成に至るにはこういう流れですか?」と整理した形で返ってくる。
もちろん一発で答えが出ないことの方が多いけれど、その差分で自分が大事にしたいことや本当に検討したいことが見えてくることもある。
思考にかかる時間は、正直これまでの3割くらいになった。だからこそ残りの時間を、実際のアウトプットや“評価につながる対話や成果”に振り分けられる。
さらに、翌日の業務に向けた下準備もAIに伴走してもらいます。夜泣き対応して、朝子どもを送り出した直後になる勤務開始時間は、1日の中で一番疲れていると言っても過言ではない。だからこそ、前の日の夜にお風呂に入りながらスマホで「明日はここまでやりたい」と叩いておく。翌朝はゼロから考え直すのではなく、その整理済みのガイドをもとに「よーいどん」で思考や作業を始められる。
寝不足の疲れきった頭で一から構想するよりも、ずっと軽やかに仕事に乗れる実感があります。
可視化の伴走者としても、AIを置く。
もう一つAI利用で大きく業務の効率化が実現できているのは、「考えを、人に伝えられる形にする」ことです。
たとえば整理したい思考について、「この選択肢の比較にあたり、MECEで評価軸を検討して。その上で星取表を作成して」と依頼する。
すると表が出てきて、自分では言語化する時間をかけなかった構造がぱっと見える化されます。それを叩きに、AIと議論を重ねるのです。
さらに私は、伝える目的や伝える相手によって、こうしたアウトプットの作りかえもAIに依頼しています。
たとえば「これは上司に説明する用」「これはメンバーに共有する用」という具合に。すると、相手を意識した形でアウトプットが出てくるので、あとは必要に応じて手直しするだけ。
もちろんそのまま完璧ではなく精度はさまざま。でも、それで十分。ゼロから自分でつくるよりもはるかに速く、“違和感のある部分を変える・磨く”“足りない部分を埋める”だけの状態に持っていけるんです。
時間もエネルギーも節約でき、その分を「評価につながるアウトプット」に集中できるようになります。
8割で走りながら、AIで100点に近づける
子育て期の働き方では、どうしても「100%じゃない自分」と向き合うことになります。寝不足や制約がある中で、完璧を目指すのは現実的ではありません。
だからこそ“8割で走る”と割り切ることが大切です。
けれど、その8割をただの8割で終わらせない工夫もできる。
AIを“思考”や“可視化”の伴走者として置くことで、時間もエネルギーも節約し、アウトプットを100点に近づけることが可能になります。
私自身も、子どもとの時間と仕事の両立に試行錯誤しながら、このやり方に何度も助けられてきました。そして私の周囲でも、AIをうまく活用して“自分だけでは出せなかったスピード”を手にしている人が増えています。
小さな工夫が積み重なることで、家庭とキャリアの両立が現実的になってきていると感じます。
相談者さんも、“100点を諦め”つつも、“AIで100点に近づけていく”。
そんな働き方をぜひ試してみてください。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア 企画職
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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