

「GoPro MAX2」は、8K動画撮影に対応した防水仕様の360度アクションカメラだ。使い方は簡単で、面倒な設定変更や高度な画像処理を行わなくても、鮮やかで美しい写真や動画を撮影できる。アップデートされた「Quik」アプリを使えば、写真や動画を自由に編集でき、リフレームしたコンテンツをさまざまなSNSプラットフォームに投稿可能だ。
提供:Geoffrey Morrison/CNET
MAX2の最大の魅力は、主な競合製品である「Insta360 X5」よりも素早く簡単に使える点にある。もちろん、X5の方がカメラとしての性能が高い部分は多く、特に暗所性能では勝っている。しかし、特に初心者にとって、手っ取り早く見栄えの良い写真や動画を撮れるMAX2のシンプルさは強みであり、米CNETが本機をEditors' Choice賞に選出した理由もそこにある。
MAX2のデザインは、基本的に初代MAXを踏襲している。正方形に近い形状はInsta360 X5よりも背が低いが、幅は広い。全体的にわずかに小さいが、その差を気にする人はほとんどいないだろう。ただし、本体サイズが小さいぶん画面も小さく、X5に比べるとメニュー操作や映像確認が少々煩わしく感じる。
本体の両面には、ユーザー自身で交換可能なレンズの奥に、2つの1/2.3インチイメージセンサーが搭載されている。これらの小さなセンサー(X5ははるかに大きい1/1.28インチセンサーを搭載)は、カメラの小型化には貢献しているものの、暗所での撮影においては不利に働く。これについては後ほど詳述する。
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GoProがMAX2のマーケティングで大きく打ち出しているのが、「真の8K」解像度だ。少し細かい技術的な話になるが、説明する価値はあるだろう。あらゆる一般消費者向け360度カメラは、2つのレンズと2つのイメージセンサーを使用している。それぞれのレンズとセンサーが180度より少し広い範囲を捉え、その重複部分を「スティッチ」(つなぎ合わせ)することで、継ぎ目のない(通常はほぼシームレスな)全天球写真や動画を作成する。GoProの主張によれば、X5を含む他の360度カメラは各センサーで4K動画を記録しているが、重複部分があるため、最終的な仕上がりは技術的には8Kに達しないという。スティッチに使われるピクセルは最終結果にはカウントされないため、実質的には7K強程度になるからだ。対してGoProは、センサーあたり4K以上の解像度で記録しているため、スティッチ後も実際に8K解像度になるとのことだ。
論より証拠、この場合は画質そのものが重要だ。GoProは「競合製品より最大21%高い解像度」をうたっており、それを証明するためのさまざまなテスト結果を提供している。しかし、実際に私がテストした限りでは、完全に納得できたわけではない。GoProの主張自体は正確かもしれないが、複数の360度カメラで同時に撮影した動画を見比べても、その違いは特に明白ではなかったのだ。実のところ、約20%の違いというのはそこまで大きくない。
誤解しないでほしいが、私は長年、360度カメラの高解像度化を支持してきた。10年にわたって製品を使用しレビューしてきた身として、8Kは最低限あるべき基準だと考えているが、それはまた別の議論だ。私が言いたいのは、20%の違いというのは、トリミングの余地が少し増える、あるいは狙った構図がわずかに鮮明になる程度ということだ。HDと4Kの違い(これは300%の増加だ)のような劇的な差ではない。正直なところ、カメラから出力される画像や動画がInsta360のものよりも十分に優れているため、解像度が増えているかどうかはほとんど関係ないと言っていい。
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その他のハードウェアは、折りたたみ式の「フィンガー」マウントや、最近のアクションカメラと同様の1/4インチ三脚穴など、標準的なGoProの仕様となっている。ただし、1つだけ小さな不満がある。付属のレンズカバーは一体型にしてほしかった。バッグやポケットから360度カメラを取り出した際、レンズカバーを外すのに余計な時間がかかる。MAX2のカバーは小さくて外しにくいうえに、2つもある。紛失するおそれのあるパーツが1つ増えるわけだ。これに対しInsta360はカメラの上部全体を覆うキャップを採用しており、撮影中ポケットに入れるには少々かさばるものの、全体としては煩わしさが少なく、素早く取り外せる。
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MAX2の使い方は、他の360度カメラと大差ない。最適な結果を得るには自撮り棒の先端に取り付けるのがベストだ。カメラが映像から自撮り棒を「消去」してくれるため、まるでカメラが自分の上に浮いているかのように見える。MAX2の画面をスワイプして、動画、写真、タイムラプスを選択する。これら3つのカテゴリー内には、解像度やフレームレートなどを設定できる調整可能なプリセットが複数用意されている。また、画面の各領域によく使う設定や機能を割り当てて、素早くアクセスできるようにすることも可能だ。ここ数年のGoProを使ったことがある人なら、基本的には同じ感覚で操作できるだろう。
MAX2は他のGoProカメラと同様、側面に電源/モードボタン、天面にシャッターボタンという2ボタン配置を採用しているため、自撮り棒の先にカメラがある状態では撮影操作が少し不便だ。他の360度カメラはシャッターボタンを本体下部に配置しており、カメラを完全に手元まで下ろさなくても手が届くようになっている。シャッタータイマーに3秒と10秒の間(5秒はどこへ行った?)の設定があれば、この問題もそれほど気にならなかったかもしれない。大きな欠点ではないが、気になるところだ。音声コマンドには対応しているので声で操作したり、Quikアプリで制御したりもできる。
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GoProのカメラには、特有の、そして一目でそれと分かる美学がある。コントラストが強く、色鮮やかなルックだ。個人的にはこの画作りが好きだし、多くの人もそうだろう。MAX2の写真や動画にもこの美学が反映されており、X5と比較するとその見栄えの良さは際立っている。Insta360も画質面で大きな進歩を遂げているが、2つのカメラを比べると、GoProの画像の方が編集なしでも綺麗に見えることが多い。テスト期間中、両方のカメラで撮影した画像をInstagramのストーリーズに投稿してみたが、誰もがGoProの画像を好んだ。
GoPro MAX2で撮影した写真(左)とX5で撮影した写真大まかに言えば、MAX2の写真や動画はSNS上で非常に見栄えが良い。「GoPro HERO13 Black」など従来のGoProアクションカメラの方が動画の解像度やフレームレートは高いが、InstagramやTikTokの解像度に変換してしまうと、その差は思っているほど大きくない。同じ仕事をするための異なる道具と言えるだろう。
ただし、X5がMAX2を大きく上回る点が1つある。低照度撮影だ。MAX2は、GoProのHEROシリーズと同様、暗所での性能が絶望的だ。映像は使い物にならないレベルである。X5の動画はずっと明るく、完璧とは程遠いものの、カメラのサイズを考えれば許容範囲内だ。MAX2の小さなイメージセンサーでは、日が沈むと十分な光を取り込めないのだろう。MAX2にはダイナミックレンジの制限もあると思われるが、アクションカメラにおいてそれは通常あまり重要視されない。
Quikモバイルアプリの画面。左:カメラコントロール、中央:写真の編集とリフレーミング、右:動画の編集とリフレーミング写真や動画を撮影したら、360度コンテンツに必須の次のステップ、つまり編集作業に移る。InstagramやTikTokなどのサイトに投稿するには、すべての360度コンテンツを編集しなければならない。FacebookやYouTubeには360度動画のまま投稿できるが、ほとんどの人は映像をトリミングして編集したバージョンを投稿している。
そのため、カメラの編集アプリは極めて重要だ。GoProのQuikアプリは少々洗練されていない部分もあるが、概して使いやすい。映像をアプリに取り込むのも数回のタップで済む。写真の場合、フィルターの追加、露出、コントラスト、色などの調整ができるほか、リフレームして全天球の中で最も面白い部分だけを表示させることも可能だ。あるいは、この記事の写真にあるように、小さな惑星のような画像を作成することもできる。
動画の場合、写真と同じ編集に加え、長さのトリミングやカメラワークの追加ができる。これは360度コンテンツ特有の機能で、撮影後に映像を回転させたり向きを変えたりできるものだ。つまり、自分自身や他の誰か、あるいは見ている景色など、好きなものに視点を合わせることができ、その方法も複数用意されている。
よく使われてきた方法はキーフレームの追加だ。注目したいポイントに手動で焦点を合わせ、書き出し時にエディターがフォーカスすべきマーカーを追加していく。あるいは、スマートフォンをビューファインダーとして使い、まるで自分が映像の中にいるかのようにスマホを動かして、動画内の動きを追跡することもできる。この動きはアプリによって記録され、最終的に書き出される動画に反映される。また、アプリに被写体(例えばスノーボーダーなど)を自動追尾させたり、自分の視点(POV)にフォーカスさせたりすることも可能だ。多少の慣れは必要だが、分かりやすく表示されており、初心者でもかなり使いやすい。また、デスクトップアプリ「Player」もあり、Quikでできる個別の写真や動画の編集の一部を行える。より高度な編集をしたい場合は、主要なデスクトップ編集ソフト用の無料プラグインも用意されている。
デスクトップアプリ「Player」GoProのQuikアプリは大多数のユーザーのニーズを満たすだろうが、Insta360のアプリはさらにその先を行っており、複数のクリップを使った動画作成、トランジションの追加、カメラアングルの変更などが一度にできる。Quikは現在、複数の360度動画をまとめて扱うことができないため、まず360度コンテンツをトリミング・クロップし、好みの縦横比で通常の動画として書き出してから、Quikのエディターを使ってマルチクリップ動画を作成する必要がある。この余計な手間のせいで、使い勝手が悪いと感じてしまう。
この360度への対応の不十分さはクラウドにも及んでいる。GoProのサブスクリプションサービスは、通常のコンテンツと同様に360度の映像や画像も自動的にバックアップしてくれるが、通常の映像のように短いハイライト動画に自動編集してはくれない。GoProのメディアライブラリのウェブサイトでは、360度の画像や動画を360度のまま閲覧できるが、動画の解像度は非常に低く表示される。ただし、オリジナルファイルのダウンロードは可能だ。
提供:Geoffrey Morrison/CNET
つまり、Insta360のモバイルアプリはQuikのできることはすべてこなせる上に、追加の画像編集ツールやマルチクリップ編集ツールも備えている。しかし、その分複雑で、習得には時間がかかる。デスクトップアプリもInsta360の方が使いやすく、特に編集する映像が大量にある場合は選択肢も多い。残念なことに、GoProは2024年にデスクトップ版のQuikを終了してしまった。
GoPro MAX2とInsta360 X5スペック上では、Insta360 X5の方が明らかに優れた選択肢だ。より大きなイメージセンサーは暗所性能に優れ、高い静止画解像度はより鮮明な写真をもたらし、多機能なアプリはより多くの編集オプションを提供する。しかし、現実は少々異なる。MAX2の強みは、スペックとは別のところにあるのだ。
MAX2の2大長所は、何も設定を調整しない状態での画質と、使いやすさだ。Insta360は画質で大きな進歩を遂げたものの、依然としてGoProには及ばない。GoProのカラーサイエンス、つまり後処理なしでの色やコントラストの見え方は、長年にわたり同社のカメラで一貫している。彩度が高く、コントラストの効いたその美学は、私や多くの人にとって非常に好ましいものだ。Insta360もかなり良くなったとはいえ、撮影した映像はまだGoProほど良くは見えない。もちろん、露出設定を変えたり(X5は特に露出オーバーになりがちだ)、「後処理で修正」したりすれば解決できる。多くの人にとっては、特に暗所におけるX5の柔軟性の高さが、この多少の手間を補って余りあるだろう。
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そして、使いやすさだ。技術的に言えば、QuikアプリはInsta360のアプリよりも機能が少ないが、その分、新規ユーザーにとって覚えることが少なくて済む。「動画を撮る」から「動画を投稿する」までのワークフローは、Insta360に比べて(大部分において)シンプルだ。ただし、より凝った動画を作りたい場合は、Quikでは余計な手順が必要になるのに対し、Insta360なら同じ場所ですべて完結する。
結局のところ、こういうことだ。撮影したものをほとんど編集せずにできるだけ早く投稿したいなら、通常のアクションカメラが最速だ。しかし、360度カメラ同士で比べるなら、MAX2の方が速い。X5ならもっと多くのことができるが、もし「もっと多くのこと」を望まないのであれば、手間をかけずに見栄え良く撮れるMAX2だ。特に初心者にはこちらがおすすめだ。
提供:Geoffrey Morrison/CNET
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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