エルスウェア紀行&GOOD BYE APRIL、信頼する仲間と築き上げた共同2マンライブ『季節のない街』をレポート

ライブレポート | 2025.09.03 12:00

エルスウェア紀行 / GOOD BYE APRIL 共同 2マンライブ『季節のない街』
2025年8月1日(金)LIVE HOUSE FEVER(新代田)

エルスウェア紀行とGOOD BYE APRIL。エルスウェア紀行の安納想(Vo/Gt)とGOOD BYE APRILの延本文音(Ba)はプライベートでも交流があるなど、親交の深い者同士だ。そんな両者の共同企画『季節のない街』が新代田LIVE HOUSE FEVERにて実現した。

開演前には安納と延本のトークセッションが行われる。「プライベートで会うときは喫茶店や居酒屋を出たあとこんな感じで終電まで話している」と話すふたりは、普段着にリュックを背負った姿でステージに登場し、テンポのいい会話を繰り広げた。安納は延本について「こんなにたくさん話しているバンドマンはいない」と語り、ふたりはバンド同士のエピソードで会場を沸かす。延本は盟友との共同企画に「シンプルなツーマンライブをする気はない」と意気込み、期待を煽った。

開演時間になると、先攻GOOD BYE APRILがサポート・はらかなこ(Key)を交えた5人編成で登場する。メンバー全員で作り出すハーモニーがイントロを彩る「夜明けの列車に飛び乗って」で軽やかかつ涼しげに幕を開けると、間髪入れずに、つのけん(Dr)がドラムでつなぎ、バンドの導入演奏に乗せて倉品翔(Vo/Gt)がこの日に懸ける思いを言葉にして「Love Letter」へ。吉田卓史(Gt)と、つのけんが向き合ってプレイをしたり、観客もクラップをしながら5人の奏でるグルーヴに身を委ねるなど、瑞々しい情景が広がった。

『季節のない街』というライブタイトルは、山本周五郎の代表作でもある貧民街で懸命に生きる住人たちの悲喜を描いた同名小説から取られているとのことで、安納と延本が共通して好きな作品だという。そしてGOOD BYE APRILはエルスウェア紀行との共通点について「頑固」「自分たちのやりたいことは曲げないし、やりたくないことは絶対にやらずに来た」「逆境に耐える力がある」と語り、延本は「(音楽性は両者ともポップスだが)意外と心はパンクなんです」と胸を張る。倉品も「エルスウェアとは話していてもシンパシーを感じるんです。今日はそんな“心のパンク”が伝わるツーマンにしたいです」と晴れやかな表情で語った。

ライブ初披露の最新曲「リ・メイク」は、眩しいほどにまっすぐな恋心を落とし込んだ楽曲と、円熟味とフレッシュネスを同時に感じさせる演奏が、夏の熱風のような力強い高揚感を生み出す。メンバー紹介を含んだ「Interlude #1」から「CITY ROMANCE」、メンバーの良好な関係があってこそのひりついたアンサンブルが光る「ピンク・シャドウ」と、シームレスに情熱的なムードへとなだれこんだ。無邪気でイノセントな空気から、いつとはなしにドラマチックにエモーショナルな演奏へと変貌するのはGOOD BYE APRILのライブの醍醐味のひとつだ。それが実現できるのもメンバーが神経を研ぎ澄ませて楽曲に集中し、目の前の観客を自身の楽曲の世界へと巻き込んでいこうとする純粋な熱意があるからだろう。

「僕たちなりの夏の海風を存分に届けます」と告げ、「missing summer」で鮮やかに会場を包むと、「ジャンル云々よりも、とにかく皆さんの心に長く残る曲を作りたいです。エルスウェアの音楽にもそんな魅力をたくさん感じています」と語り「ぜいたく」を届ける。優しく天を仰ぎながらエルスウェア紀行にバトンを手渡すような、あたたかく壮大なエンドロールだった。

後攻のエルスウェア紀行はトヨシ(Dr)のドラムに乗せて安納想(Vo.Gt.)とサポートメンバーのqurosawa(Gt)、前田祥吾(Ba)、ノ上(Pf)が現れ、全員が音を重ねていくなかでそのまま「鬱夢くたしかな食感」へとつなげる。ロックやジャズ、ゴスペルなどがブレンドされた自由なサウンド、艶やかでいたいけなメロディと安納とトヨシのハーモニー、緩急の効いたほとばしる演奏が観客を音の渦へと引き込むと、「少し泣く」ではギターのカッティングやタイトなドラムなどリズムが効果的なアプローチで小気味よく翻弄する。安納の表情にもポジティブな空気が滲み、この日を迎えられた歓喜が華やいでいた。

ぬくもりや切なさ、強い意志、瑞々しさを感じさせる歌声と演奏で「無添加」を彩ると、MCで安納はエルスウェア紀行にツーマンライブが増えていることに触れ「ツーマンをやりたいと思える仲間と出会えたことに、5年活動してきたことを実感しています」と微笑む。フルバンド編成のライブも増えているとのことで、普段は“足ドラム&ギターコーラス”スタイルでステージに立つトヨシも、ドラムを叩ける機会が増えたことに喜びを示した。

そしてエルスウェア紀行の発信する楽曲の振れ幅の広さについて「だからこそ“どこでもない音楽”になっていると思う」と話し「素直」を披露した。安心感とときめきがない交ぜになった音が観客の心をやわらかくほぐし、続いての「ロマンチックサーモス」はアウトロの演奏のダイナミズムも胸をくすぐった。「あなたを踊らせたい」はイントロからフロアにクラップが華やぎ、音の隅々までが希望に満ちる。「こうして音楽のもとに集まれる、ご褒美みたいな瞬間があれば生きていける」という安納の言葉を体現するような、健やかな生命力にあふれた一幕だった。

最後に「また皆さんと再会できたらうれしい」「GOOD BYE APRILとも何度でも競演したい」と告げ、安納がシンガーソングライター時代の初期から演奏している「ベッドサイドトリップ」と、「別れやなくしものをあたたかく感じられる、別れから出会いに遡っていく曲が作りたい」「過去と現在と未来は離散的にただ浮いている状態であるという考え方があると知り救われた」という思いから生まれた最新曲「とわの祭り」で締めくくる。時代を経ても変わらずに存在する強い思いが、音を通してダイレクトに届く。そのスケールの大きさから、同曲がエルスウェア紀行がひとつの到達点を迎えたことを象徴する1曲であることを噛み締めた。

アンコールではトヨシがqurosawaのギターを構え、倉品がノ上のキーボードに、つのけんがトヨシのドラムに就き、安納と吉田と延本がそれぞれのパートを担って“夢で逢えたらバンド”として登場。エルスウェア紀行のルーツであり、GOOD BYE APRILのメンバーも10代の頃にそれぞれが組んでいたバンドでコピーしたことがある銀杏BOYZの「BABY BABY」のカバーを披露する。安納と倉品のツインボーカルとハーモニー、熱いギターソロ、地に足のついたリズム隊と、“心のパンク”を証明する、きらびやかでタフネスに富んだポップな音色が響き渡った。

「もし第2弾があったら遊びに来てください」と言い残し、2組はすがすがしい表情でステージを後にした。それは信頼する仲間とひとつの空間や時間を築き上げたという達成感はもちろん、それぞれがしっかりと自分たちの音楽を堂々と自然に鳴らせたという幸福感からであろう。苦楽に揉まれながらも自分たちの成し遂げたい音楽を諦めずに続けてきたからこそ、一歩一歩前に進み、同じ志を持った仲間と心を通わせ、この2組ならではのきらめきに満ちた1日を作ることができた。GOOD BYE APRIL、エルスウェア紀行ともにそれぞれ新しいツアーも決定している。こんな輝かしい夜を越えた彼らは、さらに美しく羽ばたくはずだ。

SET LIST

welcome act:安納想×延本文音
想と文音の終電間際

GOOD BYE APRIL
01. 夜明けの列車に飛び乗って
02. Love Letter
03. リ・メイク
04. Interlude #1
05. CITY ROMANCE
06. ピンク・シャドウ
07. missing summer

08. ぜいたく

エルスウェア紀行
01. 鬱夢くたしかな食感
02. 少し泣く
03. 無添加
04. 素直
05. ロマンチックサーモス
06. あなたを踊らせたい
07. ベッドサイドリップ
08. とわの祭り

ending act:夢で逢えたらバンド
01. BABY BABY(銀杏BOYZカバー)

SHARE

関連記事

最新記事

もっと見る