米NetAppは近年、「インテリジェントデータインフラストラクチャーカンパニー」になるというビジョンを掲げている。単なるデータストレージのベンダーから脱却し、顧客のデータ活用までを支援していくという考え方だ。
10月に米国で開催した年次イベント「NetApp INSIGHT 2025」では、そうしたビジョンを具体的な形にしたものとして、AIデータパイプラインをストレージ側でカバーする新製品を発表。同社が目指すAI時代のストレージベンダー像がより明確になった感がある。
一方で、新しいコンセプトをビジネスの成長につなげるのは簡単なことではない。同社はAI時代のストレージ市場をどう展望しているのか。INSIGHT 2025の会場で取材に応じた最高経営責任者(CEO)のGeorge Kurian氏に聞いた。
NetAppの2025年4月期の業績は、売上高65億7000万ドル、営業利益はGAAPベースで13億4000万ドル、非GAAPベースで18億6000万ドルと、いずれも過去最高を記録した。Kurian氏は「顧客のビジネスニーズ、特にデータ関連のニーズに応えられていることの証しであり、ソフトウェアをさらに豊富に盛り込み、利益率の高い製品ポートフォリオを構築し、効率的な事業運営を実現している」と述べ、ソフトウェア技術の拡張が利益の創出に貢献していることを示唆した。
INSIGHT 2025では、ストレージ側でAIデータパイプラインのプロセスを処理するソフトウェアである「NetApp AI Data Engine」(AIDE)と、その稼働基盤となる新しいフラッグシップの分離型オールフラッシュストレージ「NetApp AFX」を発表した。これはまさにKurian氏の言葉どおり「ソフトウェアをさらに豊富に盛り込む」動きの典型とも言えよう。Kurian氏はAIDEとAFXについて、AIにフォーカスした「ストレージの再定義・再発明」の成果だと強調した。
NetAppとしのぎを削るHewlett Packard Enterprise(HPE)やDell Technologiesといった競合ベンダーも、ストレージ側でのAIデータ処理に重点を置いているという点で製品戦略の方向性は似ている。そうした中でNetAppは、AIデータパイプラインの処理を広く網羅するソフトウェアを、高い拡張性と柔軟性を持つ最新ストレージ製品と一体で製品化し、「AI時代に向けたエンタープライズグレードのデータプラットフォームを業界に先駆けて包括的に提供する」ことで独自の価値を示そうとしている。


