名古屋医療センターは、働き方改革および医療の質向上に向け、富士通Japanの医療文章作成支援サービスを導入した。全診療科で退院サマリーの作成に活用する。11月19日に富士通Japanが発表した。
退院サマリーは、入院患者が退院する際に医師が作成する患者の退院後にケアを担当する他の医療機関やケア施設と共有する文書。患者の退院後2週間以内に、患者の病状や入院時の治療経過、治療内容などを詳細に記述する必要がある。名古屋医療センターでは、これまで年間約1万6000件の退院サマリーを、電子カルテデータから必要な診療情報を選定し転記するなどして作成しており、医師の業務負担が大きかった。
今回導入した医療文章作成支援サービスは、電子カルテに入力された膨大な診療情報をもとに、生成AIが目的や要件に即した医療文章のドラフト作成を支援する。クラウド型でありながら、専用回線を介した閉域ネットワークを活用し、診療データを生成AIの学習に利用することなくクラウド上に保存もしない。そのため、個人情報に配慮しながら院内から安全に利用できるという。
同センターでは、2024年12月に整形外科などの複数診療科において同サービスを試験導入し、一患者あたり平均28分かかっていた退院サマリーの作成時間を8分に短縮し、7割以上の効率化を実現。これにより、医師の情報収集・整理にかかる負担を軽減し、年間約5000万円以上のコスト削減効果が見込めることがわかった。加えて、生成AIに適用する診療情報の範囲を個別に選択することで、患者が他の診療科で治療した経過を把握でき、医療安全における有用性も確認できたという。
富士通Japanでは、生成AIが間違いをもっともらしい形で出力してしまうリスクの低減に向け、医療業界のノウハウと医療現場での実証実験を重ね、生成AIの精緻なチューニングを実施することで、医療文書として求められる正確性や信頼性の向上に取り組んでいる。また、医療情報を共有するための標準規格である「HL7 FHIR」に対応している。
富士通Japanは今後、生成AIの適用範囲を医療文章作成から診療業務の効率化、診療情報の利活用などに拡大し、それらのソリューションを包括的に提供していくとしている。


