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ワインも脱炭素でZ世代つかめ!カリフォルニアの試み

なぞときワイン

2024.7.29

世界の主要ワイン産地が競うようにサステナビリティー(持続可能性)への取り組みに力を入れている。背景にあるのは若者のアルコール離れや他のアルコール飲料との競争激化。環境問題への貢献をアピールすることで消費者の関心を引こうとの狙いだ。サステナビリティーへの取り組みで世界の最先端を行く米カリフォルニア州を訪ね、現状と課題を取材した。




高級産地ソノマバレー、ブドウの木の間に鶏の姿

ナパバレーと並ぶカリフォルニアの高級ワイン産地ソノマバレー。代表的な醸造用ブドウ品種「ピノ・ノワール」や「シャルドネ」から造るエレガントなスタイルが売りだ。2024年5月上旬、ソノマバレーにあるワイナリー「ラ・クレマ」を訪ねた。

ロッジ風のテイスティングルームから見渡す青々としたブドウ畑は広大で、野鳥のさえずりや鶏の鳴き声が聞こえてくる。スタッフの案内で畑の中に入ると、ある区画では、何羽もの鶏がブドウの木の間を動き回っていた。「鶏は虫を食べてくれるし、糞(ふん)は天然の肥料にもなる」とサステナビリティー担当のショーン・キャロルさんは説明する。姿は見えなかったが羊も飼っている。

再生型農業の実証実験を続けるラ・クレマの畑

別の区画では「Till(耕起)」や「No Till(不耕起)」と書いた看板が立っていた。耕起は雑草の繁茂を防ぐなどの目的で土を耕す作業だが、最近は土を耕さない不耕起が農業界で注目を浴びている。土壌中の小動物、微生物を保護したり、二酸化炭素(CO2)の大気中への排出を抑制したりする効果があるとされているためだ。

ジャクソン・ファミリー、30年までにCO2排出量半減

これらはすべてラ・クレマの親会社で世界各地に40のワイナリーを持つジャクソン・ファミリー・ワインズが推進するサステナビリティーの実証実験の一つ。2021年、ジャクソン・ファミリーは2030年までにグループ内のCO2排出量を半減し、ブドウ栽培をすべて再生型農業に切り替えるなどの目標を掲げた。

再生型農業は生態系を利用して土壌本来の活力を取り戻し、それによって持続可能な農業を確立する手法。具体的には、農薬・化学肥料の代わりに、カバークロップ(被覆作物)や家畜、益虫、土壌中の微生物などを活用する。近年、脚光を浴びている農法で、米アウトドア用品大手のパタゴニアなどが中心となり、2017年に認証制度も立ち上がった。