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【絵本紹介】やなせたかし『やさしいライオン』“ほんとうのやさしさ、ほんとうの強さ”

やさしいライオン やなせたかしの名作えほん (アンパンマンの絵本)

アンパンマン」の生みの親、やなせたかし先生。彼が世に送り出した作品は、子どもたちに夢と勇気を与え続けています。しかし、その創作の原点ともいえる、非常に重要で、そして切なくも美しい一冊の絵本があることをご存知でしょうか。それが、1969年に発表された『やさしいライオン』です。

この物語は、やなせ先生が絵本作家としてデビューした記念すべき作品。アンパンマンが持つ「自己犠牲」や「愛」といったテーマの萌芽が、この作品には色濃く描かれています。今回は、大人になった今だからこそ、その深いメッセージに心が震える、不朽の名作『やさしいライオン』の魅力をご紹介します。読み終えた後、きっとあなたの心に温かい光が灯るはずです。

絵本の概要

  • タイトル: やさしいライオン
  • 作者: やなせ たかし
  • 出版社: フレーベル館
  • 対象年齢: 5歳から
  • 発行年: 1969年
  • あらすじ: みなしごで生まれたライオンの赤ちゃん「ブルブル」。お母さんを亡くし、お腹を空かせて震えていたところを、同じく我が子を失ったばかりの母犬「ムクムク」に拾われます。ムクムクのたっぷりの愛情を受けて育ったブルブルは、体は大きくとも、とても心やさしいライオンに成長しました。しかし、幸せな日々は長くは続きません。ブルブルは遠いサーカスに売られ、二人は離れ離れになってしまうのです。母を恋しく想うブルブルと、我が子を案じるムクムク。二人の運命は、果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか。

種族を超えた親子の愛の物語

この絵本の最大の魅力は、なんといってもブルブルとムクムクの間に描かれる、種族を超えた深い親子の絆です。本来であれば、犬とライオンが親子になるなどあり得ないこと。しかし、物語の世界では、お互いに「かけがえのない存在」を失った者同士が、ごく自然に惹かれ合い、本物の親子以上の強い愛で結ばれます。

ムクムクは、自分よりも何倍も大きく成長していくブルブルを、変わらぬ愛情で包み込み、優しい子守歌を歌って聞かせます。一方のブルブルも、ライオンとしての本能よりも、育ての親であるムクムクへの愛情を優先します。サーカスに売られ、スターになった後も、彼の心は常に故郷の母のもとにありました。この純粋で絶対的な二人の関係性は、私たちに「愛とは何か」「家族とは何か」という根源的な問いを投げかけます。

ネット上のレビューを見ても、「涙なしには読めない」「親子の愛の深さに胸を打たれた」といった声が数多く見られます。血の繋がりや種族といった表面的な違いを超えて、ただ純粋に相手を想う心。それこそが、この物語が長年にわたって愛され続ける理由なのでしょう。やなせ先生が描きたかった「愛の本質」が、この二人の姿に凝縮されています。

心揺さぶる、涙なしには読めないクライマックス

物語の後半、離れ離れになったブルブルとムクムクの物語は、息をのむようなクライマックスを迎えます。多くを語ることはできませんが、二人が再会を果たすシーンは、あまりにも切なく、そして美しく、多くの読者の涙を誘います。

ただ悲しいだけで終わらないのが、この物語の真骨頂です。衝撃的な出来事の後には、不思議なほどの静けさと温かさに満ちた、幻想的なラストシーンが待っています。それは、読者に深い感動と、かすかな希望の光を与えてくれるでしょう。肉体は滅んでも、その魂と愛は永遠に生き続けるという、やなせ先生からの力強いメッセージが、静かに心に響きます。

この結末をどう受け止めるか、ぜひ親子で、あるいは友人と語り合ってみてください。悲しみの中にある希望を描くこと。手塚治虫氏がアニメーション映画化した際にも高く評価されたこの感動的な物語は、きっとあなたの心に忘れられない余韻を残すはずです。読み終えた後、タイトルである『やさしいライオン』という言葉の意味を、改めて噛みしめることになるでしょう。

「やさしさ」と「強さ」の本当の意味

ブルブルは、なぜ「やさしいライオン」なのでしょうか。それは、彼がただ穏やかで、誰にも危害を加えないから、というだけではありません。彼のやさしさの本質は、その「行動」にあります。愛する母ムクムクのためならば、彼はどんな困難にも立ち向かう驚くべき強さを発揮するのです。

その姿は、決して「か弱い」ものではありません。むしろ、愛する者を守るためなら、自らの危険も顧みないという、鋼のような意志と強さに満ちています。

私たちは普段、「やさしさ」と「強さ」を反対の言葉として捉えがちです。しかし、この物語は、「ほんとうのやさしさとは、愛する誰かを守り抜くための強さのことだ」と教えてくれます。アンパンマンが、お腹を空かせた人のために自分の顔を差し出すように、ブルブルもまた、愛する母のために自らのすべてを捧げようとします。それは、究極の自己犠牲であり、そして究極の愛の形です。この物語を読むことで、子どもたちはもちろん、私たち大人もまた、「やさしさ」と「強さ」の本当の意味について、深く考えさせられるのではないでしょうか。

こんな方におすすめ

  • 親子の絆を改めて感じたい方
  • お子さんに「本当のやさしさ」について伝えたい方
  • 心に残る、感動的な物語を読みたい方
  • やなせたかし先生の作品世界の原点に触れたい方
  • 読み聞かせで、親自身も感動したいと思っている方

おわりに

『やさしいライオン』は、単なる動物の親子の物語ではありません。そこには、愛、犠牲、そして希望という、私たちが生きていく上で最も大切なテーマが、美しく、そして力強く描かれています。

この絵本は、読むたびに新しい発見と感動を与えてくれる、まさに「時代を超える名作」です。ぜひ一度、お子さんと一緒に、あるいはあなた自身のために、この物語を手に取ってみてください。ブルブルとムクムクの深い愛が、きっとあなたの心を優しく照らしてくれることでしょう。