会話IQの低い人がよく使う “あの言葉” 。「結論から話す」は万能な会話テクニックではない

五百田さん

ビジネス上の会話については、「結論から話す」ことを「正しい」とする意見をよく見聞きします。しかし、「なんでもかんでも結論から話せばいいわけではない」と危惧するのは、著書『会話IQ 本当に頭がいい人の話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が話題の心理カウンセラー、五百田達成(いおた・たつなり)さん。そんな五百田さんが提唱する「会話IQ」が高い人は、「共感」に着目し、その場にふさわしい言葉や伝え方をチョイスできると言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
五百田達成(いおた・たつなり)
心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「ことばと伝え方」「SNSと人づきあい」。サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。『あさイチ』(NHK)、『ヒルナンデス!』『千鳥かまいたちアワー』(日本テレビ)、『ひるおび』(TBS)、『ノンストップ!』(フジテレビ)ほか、メディア出演も多数。著書に『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』『不機嫌な妻 無関心な夫』『自分の気持ちを上手に伝える ことばの魔法図鑑』『話し方で老害になる人 尊敬される人』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、シリーズ100万部を超えている。文章・エッセイ教室「おとなの寺子屋」も好評。

IQが高い人=「会話IQ」が高いわけではない

新刊『会話IQ 本当に頭がいい人の話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で私が提唱している「会話IQ」とは、「コミュニケーション能力が高い人の頭のよさ」です。

もう少し具体的に説明すると、相手や状況を的確に読み取り、その場にふさわしい言葉や伝え方を選べる知的能力を意味します。単にボキャブラリーが豊富だったり論理的に話せたりするだけでは不十分で、相手の立場や感情を察しながら、心地よいコミュニケーションをつくり出せるかどうかが問われます(『「頭がいい人」の正体は、論理より“会話IQ”だった。』参照)。

そして、この会話IQは、いわゆるIQ(知能指数)と必ずしも比例するものではありません。頭のIQは高そうなのに、残念ながら会話IQが低い人も少なくないのです。

頭がよく自分の考えがすぐに浮かぶからなのか、たとえば「いや、でもさ」とすぐに相手の話を遮る人もよくいます。それだけでなく、「要するに」と勝手に話を巻き取ってまとめる人、「あなたのためを思って」などと押しつけがましい言葉を使う人も珍しくありません。そんなことでは、相手は不快感を覚えるでしょう。その結果、周囲に敬遠されてしまえば、仕事をスムーズに進めることが難しくなり、本来求めるべき成果から遠ざかってしまいます。

また、「結論から話す」ことにも注意が必要です。ビジネスシーンでは、結論から話すことを推奨されるケースが多く、「ぐだぐだと過程を話すのは時間の無駄であり生産的ではない」とも言われます。

でも、本当にそうでしょうか? たとえば部下に対して「今度のプロジェクトから外れてもらうことになったから」と、結論から告げてしまったら、部下は困惑して落ち込んでしまうでしょう。このケースであれば、どのような理由があってその結論に至ったのか、その過程を丁寧に話し、部下のショックを少しでも和らげるような心遣いが必要であるはずです。なんでもかんでも結論から話せばいいわけではなく、場合によっては過程から伝えなければならないのです。

笑顔の日本人女性

テクニックとして、相手に「共感する」

その使いわけを判断するためにも、「共感」という力に着目する必要があります。先の上司が「プロジェクトから外れてもらう」という結論から話してしまったのは、部下に対する共感が欠けていたからに他なりません。相手に寄り添うことができていれば、部下にとってショッキングな事実をいきなり告げるような選択はしないでしょう。

ただし、少し矛盾するようですが、仕事上の相手に心から共感する必要はないとも思うのです。仕事ではたくさんの人にかかわりますし、なかには苦手な人、それどころか「こんな人に共感なんてしたくない」と思う嫌いな人だっているはずです。

仕事でかかわるすべての人に共感していては心がもちませんから、本当の意味での思いやりや優しさといった貴重な心のエネルギーは、本当に大切な人のために使ってほしいと思います。

ですから、仕事でかかわる人に共感することは、いわばテクニックだと割り切ってとらえてはどうでしょうか。「やらない善よりやる偽善」なんて言葉もありますが、「この場でこの人に共感できる人なら、どのような言葉や伝え方を選ぶだろう?」と考えて実行できれば、相手からすれば共感してもらえたことに変わりません。

結果として、相手と良好な関係性を構築でき、ひいては成果を挙げることにもつながるでしょう。ビジネスパーソンとしての実績を求めるのなら、それくらいドライであってもいいと思うのです。

会議中の4人

「あなたのためを思って」という言葉に注意

また、先にも例として挙げましたが、「あなたのためを思って」という言葉にも気をつけたいところです。とくに上司の立場にある人なら、部下に苦言を呈したり仕事の指示をしたりするようなときについ使ってしまいがちな言葉だと推測します。

「あなたのためを思って」ですから、それこそ相手のことを配慮した善意あふれる話し方のように思うかもしれません。ですが、この言葉の裏には「私は悪くない」という気持ちが隠されており、自らの保身のための言葉なのです。

「この仕事をやらせたいけれど、そのまま頼むだけでは聞き入れられないかもしれないし反発されるのも面倒だ」という気持ちから、「(私自身の考えではなく)あなたのため」という言葉を振りかざし、保身すると同時に、反論されないように丸め込もうとしているだけのことです。

相手からすればそうした思惑を感じ取ることもあるため、もちろんいい気持ちはしません。「あなたのためなんて、大きなお世話だ」と感じても、表向きは優しいアプローチをされているために拒絶だってしにくいでしょう。もしくは、「私がわがままなのかな?」などと相手を自己嫌悪におちいらせたり、「私のなにを知っているのだ?」と反発を招いたりしかねません。

そうではなく、「私のために」「私はこうしてほしい」という、「私」を主語としたいわゆるIメッセージを選択してください。たとえば、「申し訳ないけれど、私のためにやってくれるとありがたい」という言葉なら、相手としては押しつけがましさを感じませんから、よほどすがすがしい印象をもってくれます。

「私はこう思う」「私はそうは思わない」「なるほど、それであれば少し話し合いましょう」。会話とは本来、そのようなIメッセージのぶつかり合いなのではないでしょうか。

五百田さん

【五百田達成さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「頭がいい人」の正体は、論理より “会話IQ” だった。
「会話IQ」が高い人は、出世が早い。最低限の敬語と“伝わる言葉”が武器になる。

会話IQ 本当に頭がいい人の話し方

会話IQ 本当に頭がいい人の話し方

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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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