
ゴールデンウィーク目前の4月下旬、「星野リゾート撤退」のニュースで騒然とした北海道・弟子屈(てしかが)町の川湯温泉地区再整備計画は、撤退を避けるための協議を継続していくことでひとまず落ち着いた。
5月1日に開かれた星野リゾートと弟子屈町、環境省との話し合いの結果、3者は協議を継続していくことで合意した。
「(撤退の)判断に至った経緯をご説明する中で、あらためて『世界水準のナショナルパーク』の実現に向けて3者が協力し、具体的な推進方法を協議していくことで合意しました」(星野リゾート広報)
それにしても、突然降って湧いたようなこの撤退騒動はなぜ起こったのか。星野リゾートら関係者への取材から、「撤退メール」に至った経緯と理由が見えてきた。
「唐突にメール通告」ではなかった

4月下旬、地元メディアが相次いで報じた中には、星野リゾートが突然、弟子屈町に一方的にメールを送り付けてきたという印象を与えるようなものもあった。
しかし、実際には、そこに至る前に両者の間で数カ月にわたる話し合いが行われてきたという。
「2024年秋ごろから、川湯広場の管理運営をどうするのかという話が(再整備計画に関する)協議会で話題に上っていました。その中で、川湯広場だけでなく再生まちづくり(再整備計画)全体の進め方について、星野リゾートから町に対して改善の提案があったんです」
そう話すのは、環境省・釧路自然環境事務所が所管する阿寒摩周国立公園管理事務所の田中準所長だ。
田中所長は環境省の代表として、町の関連協議会で星野リゾート、地元関係者らとともに再整備計画やそれに伴うまちづくりについて検討してきた当事者でもある。
川湯温泉地区の再整備はそもそも、インバウンドや富裕層などの観光客誘致を狙って国立公園のブランディングを推進する環境省の「国立公園満喫プロジェクト」の一環として進んでいる。
環境省と町は2019年から川湯温泉地区にある廃ホテル・旅館の解体撤去工事を実施。跡地を再整備するため、環境省は2022年に新たな宿泊施設の建設・運営者を公募し、星野リゾートが落札した。
その後、2023年2月に環境省と弟子屈町と星野リゾートの3者が協定を締結し、協議会の場で議論を重ねてきた。
一方、星野リゾートが町に提案した改善内容をめぐっては、同社と町が水面下で協議を続けていたという。
「星野リゾートと弟子屈町は昨年末ごろから何度も協議を重ねていた。それでも意見の食い違いが埋められなかったようで、星野リゾートが撤退の方針をメールで送ったということだったんです」(田中所長)











