日本の議論

「病院は金のためなら平気で子宮を奪う」異端医師・近藤誠氏の週刊誌記事に「産科婦人科学会」怒り心頭

数々のベストセラー本を執筆した近藤誠医師。週刊誌記事での発言に、反論が相次いでいる
数々のベストセラー本を執筆した近藤誠医師。週刊誌記事での発言に、反論が相次いでいる

「医者に殺されない47の心得」(アスコム)など多数のベストセラー本を持つ元慶応病院放射線科の近藤誠医師が子宮頸がんについて語った週刊誌記事に、産婦人科医から反論が相次いでいる。これまでも「がんは治療しないでいい」などの驚きの主張で世間をにぎわしてきた近藤氏だが、今回ばかりは産婦人科医も「あまりにひどすぎる」と怒り心頭の様子なのだ。

ブログやHPで反論

近藤氏の記事は、10月中旬に発行された「FLASH」11月4日号(光文社)に掲載された。近藤氏は同誌に「まだ言い足りないガン治療」という連載をしており、前立腺がんやCT検査などについて持論を展開してきた。

近藤氏は20~40代の若い世代に多い子宮頸がんについて、「若い人で見つかっているのはほとんどがたいしたことのない上皮内がん」として、国が進める子宮がん健診や子宮頸がんワクチンは不要だと主張。記事には「簡単な検査を受けたら子宮全摘で一生副作用が-病院は、金儲けのためなら、平気で患者の子宮を奪いとる!」というタイトルが付けられている。

詳しい内容は同誌で確認していただくとして、この記事の内容に抗議の声を上げたのが産婦人科医だ。

「週刊誌がひどい」とのタイトルのブログでこの記事に反論したのは、女性産婦人科医の立場から、女性の性についてテレビや雑誌で啓発をしている宋美玄氏。普段は温厚な宋氏だが「『医者というものは本当は患者のためにならないことを行って金儲けをしている』という記事を書いてれば『ペンで巨悪と戦う』みたいになってるようですが、私たち、そんなお金だけで動きませんよ。なんでも金儲けにこじつけるあなたこそ、お金で動くんですねと言いたい」と強い口調で反論した。

また、日本産科婦人科学会常務理事で大阪大医学部産婦人科の木村正教授は、同科のホームページに「子宮頸がんに関心をお持ちのすべての皆さまへ」とのタイトルでメッセージを出した。「医療が進歩した今日でも、子宮頸がんは放置すれば死に至る悪性疾患であることに変わりありません」として、子宮頸がんは細胞診による健診で罹患率、死亡率が減少すると紹介。「すべての女性の皆さまへ『君、子宮頸がんで死にたまふことなかれ!』とお伝えしたく緊急にメッセージをお送りいたします」と結んでいる。

木村氏は取材に対し「記事に対する反論というより、正しい情報を伝えようと思った」とメッセージを出した目的を説明。健診が生存率を上げることを証明するには、健診をしない対照群を作って比較しないといけないが、異常があるかもしれないのに健診をしないというのは非人道的な調査になってしまい、難しい。それでも、海外では健診をしない対照群を作った研究が行われたことがあり、死亡率を下げることが分かったという。

会員限定記事

会員サービス詳細