「物言う株主」MBOへの介入相次ぐ…買い付け価格の「低さ」問題視、「対抗TOB」も
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経営の自由度を高めようと株式の非公開化を目指す上場企業に対し、海外投資ファンドをはじめとするアクティビスト(物言う株主)の介入が相次いでいる。経営陣による自社株買収(MBO)の件数が14年ぶりに過去最多を更新する中、買い付け価格の低さを問題視して株式を買い進めるアクティビストと経営陣の対立が資本市場の新たな火種となっている。(杉本要)
「著しく割安」
東証スタンダード市場に上場するカーケア製品大手ソフト99コーポレーション(大阪市)は、13日を期限として行ったMBOが不成立に終わった。株式公開買い付け(TOB)の価格が低いと主張するシンガポールの投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」が、自ら株式を買い進める「対抗TOB」を仕掛けたためだ。エフィッシモは、旧村上ファンド出身者が設立したことで知られる。

経営陣らは当初、MBO発表前の株価より5割以上高い1株2465円で買い付けたが、エフィッシモは「著しく割安で少数株主の利益が保護されていない」と反発し、4100円で買い付けを行った。保有資産などの価値を踏まえ、高値で売却を見込めると判断したとみられる。10月下旬には大株主がエフィッシモ側に賛同する方針に転じ、今月13日に対抗TOBが成立した。
エフィッシモは読売新聞の取材に対し、経営陣の交代など具体的な要求について「
プレッシャー
企業は株式上場によって幅広い投資家から資金を集めることができ、信用も高まる。一方、東証は2023年3月、プライム市場やスタンダード市場の企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請した。経営方針の策定など企業が上場を維持するための負担が増えた。短期的な業績へのプレッシャーも高まっている。
このため、MBOを目指す企業が増えてきた。M&A助言のレコフデータによると、25年1~10月に公表されたMBOは23社に上り、過去最多だった11年の21社を既に超えた。運用会社スパークス・アセット・マネジメントの川部正隆氏は「余剰資金を将来投資に回すため、MBOを考える企業は今後も増えるだろう」と分析する。
ただ、株主にとっては、経営陣らの株式買い付け価格が低いと映るため、かえってアクティビストの介入を招くケースがある。エフィッシモは岐阜県の自動車部品メーカー、太平洋工業が目指すMBOにも異議を唱え、株式を買い進める。経営陣らは買い付け期間の延長や価格の引き上げを余儀なくされている。
利益相反
MBOを巡っては、買収する経営陣側と既存の株主との間で「利益相反」が起きやすい。東証は7月、MBOなどで非公開化する企業に新たに少数株主にとって不利益でないことの説明を義務づけた。
大和総研の吉川英徳氏は「株式の高値売却を狙ったような短期目線の提案に経営者は
マンダムMBO 成立公算大きく
化粧品大手マンダムは27日、経営陣による自社株買収(MBO)に向け、連携する英投資ファンドグループが実施している株式公開買い付け(TOB)の価格を、1株あたり1960円から2520円に引き上げると発表した。物言う株主として知られ、マンダム株を大量保有する村上世彰氏の長女・野村絢氏らも、TOBへ応募する契約を結んだとしており、MBO成立の公算が大きくなった。




























