2025-08-11

転売お気持ち表明する前にまずは学問事実をおさえておこう

ネット上では転売ヤーに対する感情的な反発がよく見られます

しかし、経済学視点で見ると、転売は必ずしも「ただの悪」ではなく、状況によっては市場効率化することもあります

ここでは簡単数理モデルを使って整理してみます

■ 1. モデルの前提

消費者は n 人。1人1個まで欲しい。
・ 個々の「払ってもいい最大額(評価値)」は 0~1 の一様分布ランダム
供給は m 個(m < n)。
メーカーは定価 p0 を設定。日本的に低めとする。
転売には1個あたり τ(手数料・探す手間など)の取引コストがある。

■ 2. 競争的な最終価格

需要曲線は D(p) = n × (1 - p) になる。

供給 m に対応する均衡価格 p* は

p* = 1 - m / n

この価格で買えるのは「評価値が高い順」に上位 m 人となる。これが効率的な配分。

■ 3. 転売なし(定価販売のみ)の厚生

定価が低いままランダム抽選や先着だと、当選者の平均評価値は 0.5。

総厚生(社会全体の得られる価値)は

W_no-resale = m × 0.5

となる。低い評価の人にも当たり、高い評価の人が外れるためミスマッチが発生。

■ 4. 転売あり(取引コスト τ あり)の厚生

転売可能だと、最終的には上位 m 人に行き渡る(効率的な配分)。

ただし1個あたり τ のコストを引く必要がある。

上位 m 人の平均評価値を V_top とすると、

W_resale = m × V_top - m × τ

転売が厚生改善になる条件は

V_top - 0.5 > τ

まり

「上位 m 人の平均評価値 − 0.5」が取引コストを上回れば、社会全体としては転売プラスになる。

逆に τ が大きいと便益は消える。

■ 5. 数値例

n = 100、m = 20場合

p* = 1 - 20/100 = 0.8

上位20人の平均評価値は約 0.896

ランダム配分の平均 0.5 との差は約 0.396

よって、取引コスト τ < 0.396 なら転売効率改善

逆に τ をそれ以上にできれば転売の便益は消える(抑止できる)。

■ 6. 利ざやとメーカー対応

転売業者の利ざや(1個あたり)は

利ざや = p* - p0 - τ

これが正なら参入が起きる。

メーカーが p0 を p* に近づければ利ざやは消え、転売インセンティブがなくなる。

ダイナミックプライシングオークション形式など)

■ 7. 行列BOTの影響

先着や争奪戦では、消費者は待ち時間クリック競争コスト q を払う。

これは価格差の代わりに浪費される「社会的損失」。

BOTがあると低コスト当選確率を独占でき、一般消費者負担さらに増える。

■ 8. 政策的含意

・ τ を高める(本人確認、名義連動、出品上限、高い手数料) → 転売動機を弱める
・ p0 を p* に近づける(動的価格設定、公式オークション) → 転売利ざやを消す
抽選後の公式リセールを整備 → 安全ミスマッチ解消
公平性重視ならランダム配分+転売封じ

■ まとめ

定価が均衡より低いと、転売は「高い評価の人への再配分」を通じて効率化する。

しかし、取引コスト行列コストがその便益を食い潰すことも多い。

メーカー価格販売設計を工夫すれば、転売インセンティブは大きく減らせる。

これをさら一般的分布ゲーム理論拡張すると、チケット市場限定グッズ市場での「感情的反発が起きやす理由」も説明できる。

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