昔はそれなりにモテた。飲み会では必ず誰かが隣に座って口説いてくれたし、街を歩けばナンパもされたし、「彼氏いるの?」なんて聞かれるのも日常だった。あれから十数年。気づけば40を過ぎて、誰の視界にも入らない存在になっていた。駅のホームで転びそうになっても、誰も手を伸ばさない。カフェで店員が目を合わせるのは、次の客を確認するときだけ。
別に若作りしたいわけじゃない。年齢相応に穏やかに生きたいだけ。でも、まるで「もうあなたは物語の脇役です」と宣告されたみたいな空気に、心がざらつく。SNSを見れば、同年代の友人たちは家族と笑っているか、逆に「独りでも楽しい」とキラキラしている。私はどちらにもなれない。
「見た目じゃなく中身で勝負」とか、「自分を愛せば他人も愛してくれる」なんて言葉、若い頃は信じていた。でも、現実はもっと静かで、もっと冷たい。努力しても誰も見ていない場所で枯れていくような感覚。
🫵おっさん