2025-11-05

限りなく透明に近い女

昔はそれなりにモテた。飲み会では必ず誰かが隣に座って口説いてくれたし、街を歩けばナンパもされたし、「彼氏いるの?」なんて聞かれるのも日常だった。あれから十数年。気づけば40を過ぎて、誰の視界にも入らない存在になっていた。駅のホームで転びそうになっても、誰も手を伸ばさない。カフェ店員が目を合わせるのは、次の客を確認するときだけ。

別に若作りしたいわけじゃない。年齢相応に穏やかに生きたいだけ。でも、まるで「もうあなた物語の脇役です」と宣告されたみたいな空気に、心がざらつく。SNSを見れば、同年代の友人たちは家族と笑っているか、逆に「独りでも楽しい」とキラキラしている。私はどちらにもなれない。

「見た目じゃなく中身で勝負」とか、「自分を愛せば他人も愛してくれる」なんて言葉若い頃は信じていた。でも、現実もっと静かで、もっと冷たい。努力しても誰も見ていない場所で枯れていくような感覚

透明人間になったわけじゃないのに、誰の目にも映らない。ふと鏡を見るたび、「ここに、いるよ」と小さく呟いてしまう。

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