――まず、自社サービスの概要・特徴についてご説明ください。
長竹氏ユーソナーは企業のDBマーケティングを支援する会社で、2022年に社名をランドスケイプから現社名に変更しました。サービスの中核となっているのが「LBC(Linkage Business Code)」という企業DBです。LBCはエンタープライズから零細までの企業、そこに紐づいている工場や店舗・営業所までを網羅し、官公庁・自治体、病院や学校などの非民間系組織のデータも備えています。登録拠点数は1250万件、非常に高い拠点網羅率を誇ります。データを収集する際に技術に頼るだけでなく、常に数百人規模の人手も駆使して情報の拡充と精度向上に努めているところが特徴です。
さらにその豊富なデータをビジネスで利活用するための基盤として各種SaaSサービスを提供しています。まず社内顧客情報のクレンジングや名寄せ、営業ホワイトスペース発掘を支援する顧客データ統合ソリューションの「ユーソナー(uSonar)」。お客様がすでにお持ちのCRMやSFA、MAと連携し、営業やマーケティング活動の高度化を支援します。さらに顧客の行動に基づいたABM(Account Based Marketing)を支援する「プランソナー」、営業担当者などがモバイルでリアルタイムに相手の情報を把握できる名刺管理アプリ「mソナー」などです。これらのソリューションを導入することで、ターゲット市場や見込み客の選定からアプローチ、契約・受注、その後のアフターフォローまで一連の活動を効率的に行えるようになります。

――企業DBの網羅性にこだわっている理由は?
長竹氏セールスやマーケティングで成果を上げるためには、全体の母数を捉えたDBを使う必要があるからです。一部の地域や業種に絞ったDBを使うと恣意的な情報がベースになってしまう。ターゲットも限定されます。結果として、事業や営業を優位に展開できるホワイトスペースを見つけることは難しくなる。見つけたとしても小さなものになります。当社のDBであるLBCは登録法人数の多さはもちろん、最大で2000を超える属性項目(ストーリー)を網羅しています。ターゲットのペルソナや細かい属性を踏まえた確度の高いリストの構築が可能です。
また現在はビジネスにおいてAI活用が命題となっています。しかし、元になるデータ自体が揺らいでいたら、いくら素晴らしい生成AIモデルやAIエージェントを活用したところで、アウトプットも揺らいだものしか出ません。企業がAIを使いこなし、本来のパフォーマンスを発揮させるためにも、母数が大きく、精緻で正規化されたマスターDBの活用は必須なのです。
――一方で、多くの企業がデータの整備と活用に苦慮しているのが実情です。CRMやSFA、MAといったツールを入れても、期待通りの成果を得られていないケースが多くあります。というのも、元となる企業データの管理や入力といったデータマネジメントに課題があるからとも言われています。企業が陥りがちな「データ活用の落とし穴」について、考えをお聞かせください。
長竹氏データ活用がうまくいっていない企業では、経営陣やマネジメント層の『データ活用の前処理』に関する理解が薄いと言えます。データの整備やクレンジングをする際にも、「手作業で十分」という認識があるのです。すると現場の方々が苦労をし、結果的にデータ活用が遅れていきます。この数年のDX活動でCRMを整備し、SFAやMAを入れ、分析環境を整えたとしても、データ精度が低いと機能しません。DXとは本来、データの手当てまでを含めた取り組みが必要です。ここへの理解が乏しいのです。「これまでも多数のツールを導入しコストを使った。その効果が出ていないのにデータ整備にも投資しないといけないのか?」と考えるマネジメント層が多いように思います。本来は逆です。データ整備がまずは重要で、そこにメスを入れていく必要があると考えます。

――データやその活用環境が整備されると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
長竹氏セールス・マーケティング領域で説明します。データが不十分だと、まず押し売り的な行為や重複営業が発生しがちです。これでは相手の時間も奪ってしまうので、売る側もお客様もどちらも嫌な思いをしてしまいます。それに対して、網羅性と鮮度、深さを備えた当社の企業DBでツールを活用すると、相手の状況を把握して必要なタイミングで欲しい商品・サービスを案内することができます。売る側もお客様も、お互い嬉しい体験を得られるのです。
具体例を挙げます。多くの企業が自社のWebサイト閲覧状況を可視化する仕組みを導入しているかと思います。ただ、ページビューが多いことが分かっても、問い合わせに繋がらなければ意味はありません。当社の「プランソナー」は、自社のサイトにアクセスした様子がわかる「ライブアクセス」をはじめ、各種のインテントデータを活用する機能が備わっています。ライブアクセスではIPアドレスと企業情報が紐づいており、リアルタイムでサイトにアクセスしている社名がわかります。SFAとも連動でき、その企業が既存顧客なのか新規なのかがわかるので、担当の営業にフォローの指示を出せます。例えばヘルプページを見ている場合はカスタマーサクセスチームがすぐフォロー。競合の製品・サービスを見ているお客様には、解約やリプレースを防ぐための策を早めに打てるようになります。
興味を持っている人に対して興味を持ったタイミングでご案内ができれば、お客様にとっても良い体験になります。営業する側は営業先を見つける時間やリードタイムも短くなります。チャーンレート(一定期間のサービス解約率)も低くなります。その結果、目標を達成しやすくなり、労働時間も削減できます。当社でもユーソナーを使って営業をしています。6月から全社員の所定労働時間を1時間減らし7時間勤務に変えました。所定時間を減らしたにも関わらず売上は向上しています。時間当たりの労働生産性という社会課題に対しても、データを整備し有効活用できる当社のツールは貢献できる、と考えます。
――AI時代への対応もそうですが、今後はどのような企業DB活用の方向性をお考えですか。また、ユーザーはユーソナーを使って今後どのような事業展開が考えられるでしょうか。最後に示唆をお願いします。
長竹氏私達は、AIによってデータ分析力が桁違いに伸びる時代を迎えています。これまで述べたとおり、分析対象となる企業データの正規化は、成長の必須条件となっていると考えます。この正規化を、より高度により簡単に行うため、企業属性情報の拡充に一層取り組みます。そのうえで、お客様の顧客情報と重ね合わせた結果をわかりやすく可視化する。そんな仕組みを作っていきたい、と考えています。
例えば、気候変動によって災害が多発する昨今、被災の影響の予測や発災時の初動がとても重要になってきています。拠点情報とハザードマップを重ね合わせることで見えてくる企業リスクをスコア化するなど、リスク管理分野への応用も進めていきます。
またお客様は、さらに事業展開のスピードを求められる時代になっています。説得力のある事業展開計画を作る際の材料提供、という面でもユーソナーの役割があると考えています。ビッグデータというキーワードが出てきて以降、人流データやWEBアクセスデータなど様々なデータが生み出されてきました。こうした情報をベースにした事業計画に対し、実在する企業、拠点情報に紐づけられた様々な属性情報を付加するお手伝いができるかもしれません。そうすれば、極端に言えば営業担当者一人ひとりの行動量まで想定した計画案をたてられる可能性すら、出てくると思います。マーケティング活用に加えて、事業企画段階においても欠かせない情報を提供していければと考えています。
データの整備はすぐに始めるべきです。まずはしっかりと手当てをして使える状態にしておかないと、今後のAI活用面を含めた競争環境を勝ち抜いていくことはできないでしょう。我々はそこを支援いたします。
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