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『戦略的暇』“何もしない”が未来をつくる 〜出版記念マインドフル・ダイアログ〜(全4記事)

「休み方」は伝えるのに「なぜ休むのか」は伝えられない違和感 一時休止が存在しない人生に“戦略的に暇を取る”理由

【3行要約】
・休息をテーマにした本が多く出版されていますが、多くは「どう休むか」だけを伝え、目的が不明確になっています。
・日本デジタルデトックス協会理事の森下氏は、「戦略的暇」という概念を提唱。
・人生にもスポーツのハーフタイムのような休止の時間が必要であり、自ら意識的に「戦略的暇」を取りにいくべきだと語ります。

日本デジタルデトックス協会理事・編集者の森下彰大氏

中場牧子氏(以下、中場):じゃあさっそく森下さんにバトンを渡していきたいと思いますが、まず『戦略的暇―人生を変える「新しい休み方」』という本のタイトルについて、「戦略と暇がちょっと結びつかないんだけど」というような声が上がっているんですが、そのあたりのところから解きほぐしていただければと思います。

森下彰大氏(以下、森下):そうですね。最初に本の触りについてお話しできればと思うんですが、今入室されている方もちらほらいらっしゃるので、自己紹介しながら、ぼちぼちと始めていきたいんですけど。

あらためまして、日本デジタルデトックス協会というところで理事をしています、森下彰大と申します。僕は2018年ぐらいからデジタルデトックス協会という一般社団法人で運営に携わるようになって。本業というか、ふだんは編集者をしています。

デジタルデトックスという、デジタルから離れる時間を作ろうというお仕事と、編集者としてWebメディアの「クーリエ・ジャポン」というところで記事を書いたり取材したりしています。そこはデジタルで情報を届けるという、自分のキャリアを見てもけっこう相反することをやっているようなかたちなんですけど。

デジタルデトックスの普及活動とウェルビーイングがハマった

森下:今回初めて本を出させていただいたんですが、この協会の活動、デジタルデトックスというものを日本に普及していく目的で活動してきた中で気がついたことがベースになっていて。

プラス、「クーリエ・ジャポン」でもかなり早くからデジタルデトックスについての報道はあったので、自分でデジタルデトックス体験をしたり、あるいはプログラムで体験してもらったり。

そして、海外の報道でデジタルデトックスとか、最近はデジタルウェルビーイングという、スマホとかネットの中でのウェルビーイングもすごく言われるようになっているんですが、その2つがカチャっとはまってこの本になったというところですね。

余暇にこそ戦略が必要なのではないか

森下:最初に牧子さんがおっしゃったとおり、戦略と暇ってものすごく距離がある言葉だと思うんですよね。どうしてこの言葉になったのかなんですが、そもそもデジタルデトックスという活動をしていく中で、例えば企業向けの研修でしゃべったりとかもあるんですが、一番大事にしているのが体験のイベントなんですね。

どういうことをするかというと、キャンプ場とか、例えば地方の自然豊かなところにみんなに来てもらって、講義をした後にデバイスを預かるんですね。スマホをオフにして、スマートウォッチも時計も預かったりして、アタッシュケースの中に入れる。あるいは封筒の中に入れてもらう。

完全に遮断した状態で、1日ないし1泊2日。長いと最大3泊4日とかをお寺でやったりとかもあったんですけど。要は社会にある種の暇を作ってる活動なんだなと思ったんですね。

なぜ自分は暇を作っているんだろうと。これだけ効率化とか、あとは資本主義の中でどれだけ働いて成果を出して稼ぐかみたいなゲームをみんながやっている中で、なぜ自分は暇を作っているんだろうなというところで、まず考え始めたというところですね。

考えてみると、戦略というのは、オンとオフの2つに分けた時に、仕事は明確にオンですよね。何かしら目的があって、あるいは目的を課せられて、そのためにじゃあ最短距離でどう向かうのかというものが戦略なんですけれども。

この戦略が、今こそ、この余暇に必要なんじゃないかなということをすごく思ったわけです。

「なぜ休むのか」の話をしないことへの違和感

森下:ここ最近になってから、休息の本がすごく売れていますよね。今日も夕方取材していたんですが、越川慎司さんの『世界の一流は「休日」に何をしているのか 年収が上がる週末の過ごし方』とか、あとは『休養学:あなたを疲れから救う』(片野秀樹著)とか、休息の本がすっごくいっぱい出ています。

ビジネス書として出ていて、それがかなり読まれているという。これも1つおもしろい傾向だなぁということで、どうやらみんな休息が大事だと。オンの中でずっと効率化とか目指して馬車馬のように働いているだけではどうやらまずいぞということが、この数年日本に漂い始めた空気感だと思うんです。

ただ、そこで僕の本の一番大きな問題意識として、じゃあ休むことだけ伝えればいいのかと。もっと言うと、休み方を伝えればOKなのかというところですね。

他の本に関しては、Howは非常に多いんですが、じゃあそもそもなぜ休むのかというと、自分の人生のために休むわけですよね。その結果として、例えば生産性が上がって仕事でパフォーマンスが上がるとか、もっと言えば年収が上がるとかは、僕はあくまで副産物だと思っていて。

大事なのは、自分の人生に必要なことにエネルギーを注ぐために休むということ。なぜ休むのかをすっ飛ばしてHowの議論をしているというのが、僕の違和感としてずっとありました。

戦略的に休み、蓄えたエネルギーの向かい先を考える

森下:じゃあそうすると、なぜ自分は休むのか、そして蓄えたエネルギーをどこに向けるのか。同じように会社で働くことに向けるのか、あるいは自分の違うキャリアを模索するために休むのかとなると、それは目標の設定なので、やはりこれは戦略の話になってくるんですよね。

なので、今こそ戦略的に休む、そして蓄えたエネルギーをどこに向けるのかを考えるというような意味で、「戦略的に暇を取っていきましょう」という。そんな経緯があります。

どうでしょう。伝わっていますでしょうか、牧子さん。

中場:そうですね。私は本を読んでいるので大丈夫なんですが、まだ本を読んでいない方はどうでしょうね。リアクションいただけると。

森下:わけわかんないぞということだったら、コメントいただければと思います。

中場:チャット欄のほう、自由に使ってかまいませんので。何か聞きたいことや感想などあったら、どしどしチャット欄のほうにお書きください。

森下:どしどしお願いします。

人生における“ハーフタイム”

森下:そこがこの本を書き始めることになった最初のきっかけ。どう休むかじゃなくて、なぜ休むのかを考えるということですね。「ロウソク問題」という心理学の実験がありますが、同じようにがんばるとか、がむしゃらにがんばれば成果が出る時代はもうとっくに終わったと思っていて。

社会問題もどんどん変わっていくし、自分たちの身を取り巻く状況がどんどん変わっていく中で、求められるのはやはり1回立ち止まって考えること。これはマインドフルネスにも共通するテーマだと思うんですけど。

講演でよく最初にお話しするのが、サッカーの写真とか将棋の写真、野球の写真とか、いろいろな写真を見せるんですね。

「これの共通点、なんだと思いますか」とみなさんに聞くと、例えば「勝ち負けが決まる」とか、いろいろな意見があるんですが、僕の中では一時休止が絶対にあることが共通点なんですね。

サッカー、スポーツもそうですし、将棋とかそういった世界でもそうですが、サッカーだったら例えば必ずハーフタイムがある。人生においては、そのハーフタイムというのがないと思うんですね。

例えば長期休暇とかもあるんですが、それもただぼんやりと過ごしてしまう、ダラダラと過ごしてしまうとかね。ゴロゴロしてスマホ見ているうちに終わっちゃったとかあるんですが。

本来、スポーツのハーフタイムみたいに、1回体を休める、あるいは頭を休めて、「じゃあ後半戦どう戦っていこうか」とか「どう軌道修正するか」みたいなことを考える時間が必要だと思うんですけれども、社会にはそれがなかなかないというのが1つ大きな問題だと思っていて。

ない以上、自分たちで取りにいくしかないよねと。それは国がくれるものでもないし、あるいは企業が与えてくれるものでもない。稀に企業でもありますけどね。ある企業は、ある程度勤続してるとお休みがもらえて、それを好きなことに使って良いという制度があって。すごくすばらしいなと思うんですけれども。

日本で、特に中小企業とか、あと僕みたいなフリーランスもそうですが、なかなかそういったものはない。なので、それを意識的に取りにいきましょうよというお話ですね。

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