女性にとって、時計とはジュエリー――。今さら私が言うまでもなく、多くの女性にとって腕時計は手元を彩る装飾であり、ファッションの一つでしょう。一方で、いわゆるラグジュアリーメゾンの機械式時計の中には、ジュエリー以上の価値や物語を宿す名品も確かに存在しています。
今回は私が、「ジュエリー以上の価値や物語を宿す名品しか製造していない」と断言できる数少ないウオッチメゾンの一つ、A.ランゲ&ゾーネにフォーカスを当てたいと思います。
「タダモノではない」たたずまい
時計を愛する、あるいは興味がある「ゼンマイ女子」の皆さんなら、A.ランゲ&ゾーネというウオッチメゾンをご存じでしょう。ちなみに私は時計の仕事を手がけるようになった1990年代後半、初めてその名前と存在を知りました。
当時は時計の知識が全くなく、ゆえにその価値も分からない小娘の分際ながら、他の名門ウオッチメゾンとは全く異なるたたずまいと存在感に、「とにかくタダモノではない」という気配を察知しました。

メゾンを象徴するアイコン「ランゲ1」ファミリーの中で最も小ぶりの「リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ」
以来その魅力に引き込まれ、長年恋い焦がれ続けているわけですが、その理由を自問した結果、A.ランゲ&ゾーネこそが「究極のクワイエット ラグジュアリー(主張しないぜいたく)ウオッチだから」という答えにたどり着きました。
人間でも、知性や人柄といった、内面から輝くものを放っている人がたまにいますよね。それを「オーラ」と呼ぶのでしょうけれど、まさしくそんな感じ! 語弊を恐れずにもっと踏み込んだ表現をするならば、今でいう「港区女子」と類されるタイプとは真逆の世界線。
それは、ブランドの出自によるところが大きいに違いありません。

ドイツの高級時計産業の聖地、グラスヒュッテに立ち並ぶウオッチメゾンの本社の中でも、群を抜く規模と最新の設備を誇るA.ランゲ&ゾーネの本社工房
日本では私たちの祖父母、曽祖父母の時代から、高級時計=舶来時計=スイス製、というのが一般的な見識でしたが、A.ランゲ&ゾーネはドイツ・ザクセン州のグラスヒュッテという山あいの町に本社工房を構えています。1845年に最初の工房を開いたこの地に根付いているのです。




















































