2025-07-07

日本メディアEV減速」報道を読み解く

記事紹介と概要

本稿の出発点は carview 掲載記事

https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/ec539aee5b7853ee6a7ea8df41dd8231123b0632/

記事は「減速報道的外れ」と結論づけ、上記数字根拠世界需要の拡大基調を強調している。

補足:BEVPHEV を分けて見ると何が見えるか

データを BEVPHEV に切り分けると様相が変わる。

2025 年 1–5 月の構成比は BEV 64 %、PHEV 36 % であり、中国は NEV クレジット制度の後押しで BEV 比率が 70 % を超える。一方、欧州では CO₂ 規制が BEV を押し上げつつ、法人減税が PHEV を温存し約 25 % が残存する。北米では IRA 税控除の原産地要件PHEV に相対優位を与え、BEV の伸びが鈍る。

日本は 2030 年 CAFE 25.4 km/L(WtW)を HVクリアできるため、メーカーユーザーも BEV必須と感じにくい。充電口は 4 万口あるが BEV 9 台で 1 口を奪い合う計算になり、基礎充電の不安拍車を掛ける。

このように BEVPHEV市場力学を切り分けることで、国・地域ごとに異なる「伸び」と「鈍り」の背景が明確になる。

なぜニュースは「EV減速」を強調するのか

主要メディアニュース面は速報性と話題性を重んじるため、単月の在庫調整や補助金縮小といったネガティブ要素を見出しにしやすい。クリックを稼ぐ構造が背景にあり、「減速」という言葉は読者の関心を即座に引き寄せるからだ。一方、日本経済新聞の社説(例:2024 年 9 月 16 日付「逆風下のEVは長期的な視点戦略を」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK139VU0T10C24A9000000/ ) は産業政策技術ロードマップを論じる場であり、脱炭素シフトの不可逆性を前提に「長期では EV 化が避けられない」と訴える。編集局(ニュース)と論説委員室(社説)は時間軸も読者層も異なるため、同じデータを扱っても論調が食い違うのは必然だ。

総括

carview 記事の数値は一次統計整合し信頼できる。ただし BEVPHEV峻別しないままでは「世界は堅調、日本は減速」という単純な図式に陥りかねない。ニュース短期の体温を映し、社説は長期の地殻変動を語る。

読者はこの温度差を意識し、両者を重ね合わせて立体的に状況を把握する必要がある。日本が BEV 普及で周回遅れを脱するには、政策で BEV を不可避にし、充電インフラの質と密度欧州水準へ引き上げることこそが前提条件となる。

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