2025-09-01

とある訃報について

とある方の訃報に接し、どこにも書くことができないゆえ、増田に思いを記す。

数か月前のこと、妙齢女性と思しき方から職場電話があった。

「○○の△△でございます。実は○○が亡くなりました。故人の書類を整理していたところ、お宅様とのやり取りを記したものがたくさんあったものですから、お電話いたしました。生前は大変お世話になりました」

かに○○さんからは、毎年2回ほど電話があった。内容はおおむね同じで、仕事権利関係についての相談や悩みごと。愚痴に近いことも少なくなかった。

そもそも、うちと○○さんの間には何らかの特別契約関係があるわけではなく、本来なら相談に乗る義務必要もない間柄だ。それでも、○○さんについては大昔から一方的に目にしてきた方でもあり、電話仕事邪魔と思ったことはなかった。むしろあの独特な口調と快活な声を聞けることが正直嬉しかった。だから自分役割ではないことは分かりつつも、いつも話し相手になってきた。

相談の内容によっては、上の者に繋ぐこともあった。上の者も「それは困ったもんですねえ」などと言いながら、会話を楽しんでいた。電話が終われば、「なんでいつもうちに連絡してくるんですかね?」とみんなで首をかしげものだ。うちは駆け込み寺でも慈善事業でもない。ただ、○○さんの業界に関することを扱っているので、遠からずというところではある。○○さんは、法的・専門的な相談先を他に知らなかったのかもしれない。

とにかく、もう○○さんから電話が来ることはないのだ――訃報の連絡を頂いたとき、深い寂しさが胸をついた。そして同時に思ったのは、「この訃報は誰かがどこかで公にするんだろうか?」ということだった。繰り返しになるが、うちと○○さんは契約関係があるわけでもなく、ただ電話相談を受けていただけの間柄だ。よって、勝手訃報喧伝する立場にない。しかし、あの○○さんほどの人の逝去を伝えなくていいんだろうか……と呻吟はしつつも、誰かにまれたわけでもないので、黙りつづけるしかなかった。

そんな歯痒さも時とともに忘れていたが、正式訃報が流れたことを知った。ああ、よかった。どなたかが発表してくださったのだ。そう、心の底から安堵した。改めて、ご冥福を心よりお祈り申し上げます

○○さんの話だけど落とせないという、特にオチがない話でした。おしまい

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