夫は、天球儀のように正確に家の中を動く。
朝は白い砂を掃き、昼にはリンゴといちじくを並べ、
夜には鳩時計が鳴る前にすべて整う。
その完璧さは、まるで黙示録の儀式のようで、
私は知らず知らず黒い砂漠に沈んでいく。
夫の優しさは、静電気のように胸を刺す。
笑顔の奥にはミカエルの剣が光り、
その正確さは機械仕掛けの心臓のように冷たい。
リビングの祭壇の上には、小瓶の枯れた花。
散らないその花を見て、ウリエルが見守っているように思う。
夜、夢で時の裂け目が開き、ケルビムの影が差し込む。
現実と幻想の境がぼやけ、私は息を詰める。
朝、月の雫の香りのコーヒーを手に取り、
「休んでていいよ」と夫が微笑む。
その声は石碑の戒律のように重く、
心の奥に沈む疲れを押し広げる。
わかってしまった。
ここは天地始之事で閉ざされた世界。
ウリエルが掃除し、ミカエルが料理し、ケルビムが見守る。
私はその秩序の中で、静かに身を縮めている。
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