2025年8月のお盆明け、日本円と連動するステーブルコインが一気に加速した。
金融庁は8月18日付で、ステーブルコインの発行を目指すJPYC社(東京都千代田区)を資金移動業者として登録した。この登録により、同社は日本円と連動するステーブルコインを発行できるようになった。
同社は、ステーブルコインの発行について、「準備完了後速やかに」サービスを開始するとしており、17日付の日経新聞は「秋にも」ステーブルコインの発行を始める計画だと報じている。9月に発行開始とする別の記事もある。同社が発行するステーブルコインの名前は、会社と同じJPYCだ。
一方、SBIホールディングス傘下のSBI VCトレードと三井住友銀行は、ステーブルコインの流通について、共同で検討をはじめると発表した。両社の公表資料を見ると、三井住友銀行は「ステーブルコインの発行体となる」と明確に書いてある。今後、三井住友銀行が日本円建てのステーブルコインを発行し、SBI VCトレードがその流通を担うことになると考えられる。
ステーブルコインの普及は始まっている
円建てのステーブルコインは、円と連動するため、ほぼ1コイン=1円になることが前提とされている。円建てのステーブルコインを発行する事業者は、その裏付けとなる銀行預金や、その他の資産を保有することが必要になる。1兆円相当のステーブルコインを流通させるには、1兆円相当の資産を保有することが前提とされている。
仮想通貨と同様にブロックチェーンを基盤とし、海外送金のコストの低減や、送金から着金までの期間も短縮することができる。企業間の決済や、日常の買い物における支払いにも活用される可能性がある。
米ドル建てのステーブルコインでは、具体的な活用事例も出てきた。たとえば、国際的に事業を展開する米国企業が、アフリカや中南米など各地で働く現地スタッフに対して、ステーブルコインで給与を送る。既存の銀行間の送金ネットワークでは、手続きの開始から給与の振込まで数日かかるが、ステーブルコインの場合は、数分以内に給与の振込が完了する。bitwageなど、ステーブルコインでの給与の振込に対応するウェブサービスも出てきた。
ステーブルコインを使って、急激なインフレの進行と自国通貨の下落に備える人たちもいる。アルゼンチンの通貨ペソは、この5年間で対ドルの為替レートが20分の1にまで下落した。自国の通貨が安くなれば、日々の生活に必要な食料品や雑貨などの価格は上昇する。給与をペソで受け取って銀行に入れておいても、ペソの価値は下落し続ける。このため、手持ちのペソをドル建てのステーブルコインに交換する自衛の手段が広がっている。生活必需品の値上げが続く日本でも、他人事とは思えない動きだ。
三井住友はステーブルコインのコンビニ決済目指す?

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