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週替わりギークス 第334回

お仕事悩み、一緒に考えます。#58

心の病気になりかけている。でも、休むことが怖い…

2025年11月01日 07時00分更新

文● 正能茉優

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働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!

 「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
 誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。

 何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。


 ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。

 この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。

 今回のお悩みは、「上司の言動で心の病気になりながらも、休むことが怖い」というお悩みです。

心の病気になりかけている。でも、休むことが怖い。

 はじめまして。私は今、20代で会社員をしています。

 最近、上司からのハラスメントのような言動が続き、心身ともに限界を感じています。

 自分の望む役割に、昨年やっとつけたこともあり、ここから頑張りたいと本当に思っているのですが、このままでは続けられないというのもまた本気で感じていて、休職も視野に入れて考えています。

 日々「頑張りたい」と「休みたい」の間で揺れており、まだ病院には行けていないのですが、行ったらきっと何らかの診断がおりるであろうという自覚はあります。

 けれど、これまで頑張ってきたことが全部崩れてしまうようで、診断がつくのも、休むのもとても怖いです。一方で、このまま無理をして働き続けることも怖いです。

 上司や会社と戦うべきなのか、それともとりあえず距離を取るべきなのか、自分でもどうすればいいかわかりません。ただ、今は「とりあえず休もうかな」という気持ちに傾いています。

前回までのこの連載で、正能さんも休職を経験されたと聞きました。

休んでよかったこと、逆に大変だったことがあれば、率直に教えていただけませんか?

休まざるを得なかった方にこんなことを伺うのは失礼かもしれませんが……自分も心の病気で休まざるを得なくなってしまう気がしていて、その時に適切に逃げることができるよう、今から知っておきたいなと思っています。

(28歳、IT業界、営業職)

「病は気から」ではなく、「気は病から」

 まずは、勇気を出して連絡をくださって、ありがとうございます。

 よく「病は気から」と言いますが、病気になってみて私が思ったのは、むしろ「気は病から」ということ。

 心や体が壊れると、自然と気持ちも落ち込み、不安は強まります。

 つまり、あなたが今「怖い」「崩れてしまう」と感じているのは、気の持ちようではなく、病の影響によるところも大きいのではないでしょうか。

 だからこそ、まずは休んで心身を整えることが、最も大切だと思います。

「心身の健康を取り戻すこと」に集中できるありがたさ

 私の場合、4ヵ月寝たきりの入院生活の後に、半年間の自宅療養での経過観察があったため、10ヵ月仕事を休むことになりました。

 今改めてあの時間を振り返ると、最もよかったなと思うのは、「自分の心身の健康を取り戻すことが、今やるべきことのすべてだ」と腹をくくれたことです。

 退院当初はリハビリも兼ねて家の中を歩いたり、庭を散歩したり、体力を取り戻すことに時間をかけました。

 起き上がっていられる時間が増えてからは、本を読んだり、ChatGPTと会話したりして、自分の経験を言葉に落とし込んで、あらためて解釈したり噛み砕いたりする時間を持てたのも大きなことでした。

 また、当時の私の症状は、異常を来している細胞がガン化するリスクもあったため、その病気の症状や予後について調べて納得する時間があったのも、非常にありがたかったです。

 もちろん、休んだがゆえに大変なこともありました。

 一番気持ちが滅入ったのは、「失う」「奪われる」という感覚です。

 例えば金銭面では、会社員としての収入は途絶えているのに、税金の支払いは毎月やってくる。これは心理的にとてもきつかったです。

 病気になって、子供を失って、運がいいと思い込んでいた自分も失って。

 失うものづくしだった当時の私にとっては、この病気はまだ奪うのか、お金まで奪うのかと、苦しくなりました。

 (お金に関しては、会社員である私の場合、「傷病手当金」という制度のもと、健康保険から給与の3分の2程度が最長1年半支給されました。

 とてもありがたい制度ですが、実際に支給されるまでには数ヵ月のタイムラグがあったので、ある程度の生活費を準備しておくと安心です)

今の状態を「骨格」ととらえてみる

 ここでひとつ、私が休職中、悩みに悩み、思いついた腹落ちの仕方をお伝えしたいと思います。

 心身の病気や不調を含めた今の自分の状態は、「自分の努力不足」ではなく、もはや“骨格”のようなものだと割り切ってしまうという考え方です。

 どんなに努力しても、骨格そのものを変えることはできません。

 けれど、その骨格に似合う「洋服(仕事や環境)」を選ぶことはできますし、「筋肉(自分を支える習慣や小さな自信)」をつけていくこともできます。

 病気を抱えてしまった自分を、責める必要はありません。だって骨格なのですから。

 でも、他の骨格の人のことを羨ましく思うのも自由です。だって骨格なのですから。

 良くも悪くもできることは、今ある骨格を前提に、似合う服をまとい、必要な筋肉を育てていくことのみ。

 そうこうしているうちに体つきが変わり、似合う服が変わることもある。

 そうして、病気やお休みを経た新たな自分として、生きやすさは手に入れられるのだと思います。

しんどい経験もまた、自分をつくる

 とはいえ現実問題、10ヵ月間の休職を経て復職することになった私は、復職直前はやはり不安でした。

 「体力的に仕事が続けられるのか」という不安。

 「これから仕事では何をすべきなのか」というキャリア面での不安。

 いずれも大きかったように思います。

 そんな中で復職前から、斜め上の先輩方と1on1を10回以上重ね、さらにAIと対話しては自分の考えを言語化する時間を持ちました。

 そうして少しずつ、「会社に戻って、やりたいこと」「日常生活の中でやれるイメージ」が形になっていったのです。

 現在は、復職から2ヵ月。

 休職前とは違う部署に所属し、違うミッションをモっていますが、納得感を持って楽しく働けています。

 復職後、一番嬉しかったことは、お給料日、子どもに桃を買ったこと。

 仕事を始めてもう10年以上が経ちますが、「自分で働いたお金で、大切な存在に好きなものを買ってあげられる」ことが、こんなにもうれしいとは思いませんでした。

 休んだからこそ知ることができた、小さな、でも深い幸せ。

 その実感を経て、私は以前よりももっと、働くことが好きになりました。

休むことは未来を守る選択

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